フリーダム!!!~チャラ男の俺が王道学園の生徒会会計になっちゃった話~

いちき

文字の大きさ
上 下
3 / 72
第1章 ミーツ!!!

2 「流、聞いてくれ」

しおりを挟む








「流、聞いてくれ」



風呂に入り終わり、明日の支度を終えてさあ寝ようかとしたときに、同室の雨乃雫が、真面目な顔をして俺を引き止めた。うわあ嫌な予感。雫は幼なじみで、親友とも呼べる存在だ。中学から一緒で、何を隠そう、俺がこの学校を受験することになった諸悪の根源……いやいや、きっかけも、この男だった。



「何ー、俺おねむなんすけどお」

「いよいよ、待ちに待った転入生がやってくる!」

「人の話聞いてー」

「王道学園に王道生徒会、そしてさらに王道転入生!? くー、たぎるぜ!」



そしてこの雨乃雫という人は、モデル体型のイケメンながら、非常に変態であった。残念すぎるぜ、友よ…。



「うわあほんとに気持ち悪い」

「輝いてると言ってくれ」

「無理無理ィ。……ていうか、この時期に転入生とか、おかしくない?」



ちなみに今は五月。どうせなら入学式に来いよって時期である。濡れた髪をタオルでごしごしと拭いながら尋ねると、「そこなんだよ!」と、がしっと肩を掴まれる。こんなに興奮している雫を見るのは、俺の生徒会入りが決まったとき以来だ(ちなみにそのときは、「チャラ男幼なじみが生徒会会計とかうますぎる」とか何とか言っていた。チャラ男呼ばわりに腹が立って殴った)。



「時期はずれとか絶対ェワケありに決まってる! トレジャーハンターとか祓魔師とか……くう、熱いぜ!」



あかん、妄想が爆発してる。瞳を輝かせる幼なじみを見て、俺はそっと頬を撫でた。



「マジで、イケメンなのにもったいねー」

「萌えに顔は関係ない」



あ、格好付けた。ふっと笑って髪を掻き上げ、満足したのか雫は俺から離れて行った。



「まあ、どんなワケあり転入生でも、俺には関係ないけどねぇ」

「甘い、甘いぞ流」

「へ?」



ぼそっと洩らしたら、再び雫が瞳を光らせた。



「王道学園に王道生徒会、そして王道転入生とくれば! 転入生はいずれ生徒会に関わってくる、さしずめ会長辺りと恋に落ちるんじゃね?」



うわあ真顔で何言ってんのこの子……。



「あのね、男子校だようち。転入生も男の子でしょ。会長も男の子だよ」

「男の子って容姿じゃねーけどな。つか今更それを言うか、このホモの巣窟で」

「う……」



そう。周りに男しかいないこの学園は、可哀相に六割の生徒が男に走る。思い返せば、去年何度か哀れなバンビちゃんに告白されて、必死で逃げたような……(だってあの子たち、「俺は女の子が好きなのー」という断り文句が通用しない。「女より良いから確かめて」とか言ってくる。こわい)。ちなみに残り二割が雫を代表とする二次元・妄想専門で、残り一割が生徒会長を代表とする恋愛なんて興味ねえぜ・夏、最後の一割が俺を代表とする女の子大好き派である。うわ、やばい。少子化の責任の一端、絶対この学園が担っちゃってるよ……。



「それに、生徒会役員はもう満杯だよー。入る余地ないって」

「それはこう……偶然という名の必然というか、運命のイタズラで、生徒会入りしちゃうんだよ。俺とお前が同室のようにな」



確かに、まさか雫と同室になるなんて思わなかった。完全なランダムで部屋分けはされているはずだから、全然期待もしていなかったのに。気を遣わなくていいっていうのは、すごく楽で、正直助かっているけれど。



「うーん……本当に雫の妄想通りになったら、会長とイチャイチャしてあげるよ」

「むしろそっちのが妄想できねえわ」

「うん、俺も無理」



あの唐変木で無愛想で他人に興味の欠片もない生徒会長とイチャイチャするなんて、想像すらできない。雫的に喜ぶかと思ったけど、食い付きはイマイチだった。つまんない。



「まあどんなのが来ても、今まで通り適度にサボッて適度に楽しんで仕事ができれば良いかなー」

「本当に興味ねーのな」

「だって男でしょ?」

「どうする、女子と見間違う超絶美少年だったら」

「でも男でしょ?」



ついてるのに興味はありませーん。言うと雫は肩を竦め、「お前のファンが可哀相になってきた」と呟いた。知らんし、そんなのー。俺のせいじゃありません。それに。



「いーんだよ、あの子たちはそーゆーところも含めてきゃーきゃー言いたいんだから」

「振り向いてくれないところが良い、ってか」

「そうそう」

「でも彼女もいないんだろ? ……罪な男だなお前」

「二次元にしか興味ないからファンとかそういうのいらないですって公言してる誰かさんよりはマシですう」

「いやマジ……三次元怖ェよ」

遠くを見る雫に、イケメンも大変だなと肩を叩く。そう、この学園には、学園公認のファンクラブがある。親衛隊みたいなものだ。生徒会役員になると漏れなくついてくる特典で、他にもイケメンだったり可愛かったりすれば、有志が集まってファンクラブを結成する。……みんな暇なんだよ。俺にもファンクラブはあって、にこっと笑いかけるときゃーきゃー言って顔を赤く染めたりするから、素直にかわいいとは思う。男でさえなきゃ。雫は一年のときからその爽やかイケメンな見た目と面倒見のよさからファンクラブが創られていたんだけど、ちょっとしたトラブルがあって解体した。それ以来、何度も持ち上がる創設の話を、雫は断っている。(多分、本人非公式の形で存在している気がする)



「うわ、もーこんな時間じゃん。俺は寝る」

「明日は普通に6時半?」

「ん、よろしく」

「はいはい。じゃ、おやすみ」

「おやすみなさーい」



雫が電気を消して、二段ベッドの上に上がる。セレブリティな学園なのに、寮の部屋はわりと狭い。二人部屋で、二段ベッドというのが何ともケチくさい。その代わり、風呂・トイレとキッチンはそれぞれの部屋についている。

布団を被って、目を瞑る。その日は、謎の転入生がやってきて、何故か街に溢れた魑魅魍魎と、俺たち生徒会が戦うという妙な夢のせいで、あんまりぐっすり眠れなかった。







しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

気まぐれ先生の学園生活

海下
BL
これは主人公 成瀬 澪が愛おしまれ可愛がられる。 そんな、物語である。 澪の帝紀生時代もいつか書きたいと思ってます、なんて。

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

王道学園なのに、王道じゃない!!

主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。 レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ‪‪.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

この僕が、いろんな人に詰め寄られまくって困ってます!〜まだ無自覚編〜

小屋瀬 千風
BL
〜まだ無自覚編〜のあらすじ アニメ・漫画ヲタクの主人公、薄井 凌(うすい りょう)と、幼なじみの金持ち息子の悠斗(ゆうと)、ストーカー気質の天才少年の遊佐(ゆさ)。そしていつもだるーんとしてる担任の幸崎(さいざき)teacher。 主にこれらのメンバーで構成される相関図激ヤバ案件のBL物語。 他にも天才遊佐の事が好きな科学者だったり、悠斗Loveの悠斗の実の兄だったりと個性豊かな人達が出てくるよ☆ 〜自覚編〜 のあらすじ(書く予定) アニメ・漫画をこよなく愛し、スポーツ万能、頭も良い、ヲタク男子&陽キャな主人公、薄井 凌(うすい りょう)には、とある悩みがある。 それは、何人かの同性の人たちに好意を寄せられていることに気づいてしまったからである。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 【超重要】 ☆まず、主人公が各キャラからの好意を自覚するまでの間、結構な文字数がかかると思います。(まぁ、「自覚する前」ということを踏まえて呼んでくだせぇ) また、自覚した後、今まで通りの頻度で物語を書くかどうかは気分次第です。(だって書くの疲れるんだもん) ですので、それでもいいよって方や、気長に待つよって方、どうぞどうぞ、読んでってくだせぇな! (まぁ「長編」設定してますもん。) ・女性キャラが出てくることがありますが、主人公との恋愛には発展しません。 ・突然そういうシーンが出てくることがあります。ご了承ください。 ・気分にもよりますが、3日に1回は新しい話を更新します(3日以内に投稿されない場合もあります。まぁ、そこは善処します。(その時はまた近況ボード等でお知らせすると思います。))。

処理中です...