フリーダム!!!~チャラ男の俺が王道学園の生徒会会計になっちゃった話~

いちき

文字の大きさ
上 下
1 / 72
第1章 ミーツ!!!

0 身に染みた日常なんて、呆気なく幻にかわる。

しおりを挟む


身に染みた日常なんて、呆気なく幻にかわる。

――そんなこと、わかりきっていたはずだったのに。







私立桃華学園は、その可愛らしい名前とは裏腹に、全寮制の男子校だ。本州から離れた孤島に位置する、敷地の広いおぼっちゃま学校。そんなところに縁も縁もないと思っていたのは中学時代の俺であって、今はどっぷりとその、おぼっちゃま、の中の一員だ。――第一志望の公立の共学校に落ち、友達の付き合いで受けたここに入学することになるなんて、本当にアンラッキー極まりない。余裕で受かると思ってて、滑り止めを他に受けていなかったあの頃の自分を殴りたいガチで。

設備に不服はないし、友人にだって恵まれている。じゃあ何が不満かというと、――女の子がゼロなんだよおぉ。



――鈴宮流は、学園でも有名な、女好きだった。













「ていうか、意味がわかりませーん」



入学してから一年が経とうとしている頃、俺は生徒会室に呼び出された。生徒会室なんて、一般生徒にはほとんど縁がない場所だ。事実、今日呼び出されるまでは、一度も足を運んだことがない。革張りのソファー、大きなデスク、役員の数だけ用意されたパソコンは、とてもじゃないが高校の一室とは思えない。ここって会社だったっけー?

更に、奥の机の向こう、椅子に座った現生徒会長が発した言葉もよくわからなくて、俺は上記の間の抜けた声を出した。この部屋には、会長と俺しかいない。



「いやわかるやろ、次期会計を流クンにやってもらいたいっちゅー簡単なハナシ」

「あは、やだもー会長ったら冗談ばっかりぃ……」



会長は胡散臭い関西弁で、少しウェーブのかかった傷んだ金髪を真ん中にして分け、鋭い目許をサングラスで隠していた。容姿も胡散臭い。敢えて軽い調子で返事をすると、会長はニッコリと笑った。つられて俺も、ちょっと笑う。



「アホ、冗談でんなこと言うわけあるか」

「だから、意味わかんないってばー。俺、全然、生徒会に関係ない一般生徒っすよー?」

「俺には関係あるやろ」

「それは……」



否定できない。この一年で、会長にはお世話になってる、けどお。何故俺が、不真面目代表の俺が、生徒会なんちゅー堅苦しいものに入らなきゃいけないのか。



「流クンなら、容姿人望能力申し分ない。ちゅーか、他に適任がおらへんねん」

「俺、勉強できねっすー」



容姿端麗頭脳明晰、そんな人しか入れないでしょ、そんな期待を込めて言うと、また会長が笑った。



「安心しい、俺もできひんわ」

「そんな生徒会長やだ」

「え、ガチで引かんといて」

「あとあれ、俺、女の子好きだし! 風紀的によくなくない?」

「生徒会は生徒会であって、風紀委員はまた別やからなあ。それに、ウチの生徒に手ェ出すわけやないなら、ええんちゃうん」

「えーとえーと……」



 他に俺のダメなところは……そこまで考えて、何だか虚しくなった。なんで俺が役員拒否するために、自己否定せにゃならんのだー。



「とにかく、ヤですー」

「とにかく、決定やから」

「は?」



今、なんて。



「会長の命令は、絶対ー。拒否権は、ありませーん」



そんな王様ゲームのノリで、俺の生徒会役員入り――ひいては、灰色の学園生活が始まった。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

気まぐれ先生の学園生活

海下
BL
これは主人公 成瀬 澪が愛おしまれ可愛がられる。 そんな、物語である。 澪の帝紀生時代もいつか書きたいと思ってます、なんて。

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

王道学園なのに、王道じゃない!!

主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。 レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ‪‪.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

この僕が、いろんな人に詰め寄られまくって困ってます!〜まだ無自覚編〜

小屋瀬 千風
BL
〜まだ無自覚編〜のあらすじ アニメ・漫画ヲタクの主人公、薄井 凌(うすい りょう)と、幼なじみの金持ち息子の悠斗(ゆうと)、ストーカー気質の天才少年の遊佐(ゆさ)。そしていつもだるーんとしてる担任の幸崎(さいざき)teacher。 主にこれらのメンバーで構成される相関図激ヤバ案件のBL物語。 他にも天才遊佐の事が好きな科学者だったり、悠斗Loveの悠斗の実の兄だったりと個性豊かな人達が出てくるよ☆ 〜自覚編〜 のあらすじ(書く予定) アニメ・漫画をこよなく愛し、スポーツ万能、頭も良い、ヲタク男子&陽キャな主人公、薄井 凌(うすい りょう)には、とある悩みがある。 それは、何人かの同性の人たちに好意を寄せられていることに気づいてしまったからである。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 【超重要】 ☆まず、主人公が各キャラからの好意を自覚するまでの間、結構な文字数がかかると思います。(まぁ、「自覚する前」ということを踏まえて呼んでくだせぇ) また、自覚した後、今まで通りの頻度で物語を書くかどうかは気分次第です。(だって書くの疲れるんだもん) ですので、それでもいいよって方や、気長に待つよって方、どうぞどうぞ、読んでってくだせぇな! (まぁ「長編」設定してますもん。) ・女性キャラが出てくることがありますが、主人公との恋愛には発展しません。 ・突然そういうシーンが出てくることがあります。ご了承ください。 ・気分にもよりますが、3日に1回は新しい話を更新します(3日以内に投稿されない場合もあります。まぁ、そこは善処します。(その時はまた近況ボード等でお知らせすると思います。))。

処理中です...