空に憧れて

未来の小説家

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空に憧れて

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 僕は空を見ていた。
 真っ暗で何も見えないこの街に見える光は満点の星空だけだった。
 あの日からの僕の記憶は極めて断片的なものだ。
 空から爆弾が降ってきたあの日からもう1ヶ月経った。

「なんで誰も助けに来てくれないのだろう。」

 この街には誰もいない。僕とこの人以外…

「なぁこうすけ。何見てんだよ。おっUFOでも見えたか⁉︎見えたのか?どこだよ。」

「何も見てないよ。」

「本当にか?嘘ついてんだろ!」

「絡んでくんな。」

「ふーん。つまんねぇの。」

 僕はこの人がどうも嫌いだ。いつどうなるか分からないのに能天気で、みんないなくなったのに笑ってられるような奴さ。人の心がないんだ。

「おいこうすけ飯いるか?」

「何?何か見つけたのか⁉︎」

「じゃじゃーん!パンとチョコレートジャム!」

「やっと飯が食える。」

「無料ではやれねぇなぁ。」

「なんだよ。ケチ。」

「俺の話を聞け。そしたらくれてやる。」

「分かったよ。聞くよ。」

「じゃあ。今日は俺の話させてもらおうか。」

 彼は僕にパンを渡して、自分について喋りはじめた。

「俺の名前は剣之介ってんだ。18歳。」

「嘘だ。18歳の男がここにいるわけない。」

「嘘じゃねぇよ!本当さ。」

「本当な訳あるか!もしそんな奴がいたとしたらとんだ臆病者さ。」

「その臆病者が俺だ!」

「最低…」

「すまねぇな。人は殺せないさ。」

「あっそ。」

 何で俺はこんなやつと一緒にいるんだろう。しばらく沈黙が続いた。重い空気は何も晴れることのないまま、朝日は登った。

 目を開けるとあいつは何か身支度をしていた。

「お、起きたかこうすけ!隣町に行こう!」

「え、マジで行ってんの?」

「マジだよ、大真面目さ。」

「無理だよ。この時期に山登るなんて馬鹿だ。」

「確かに馬鹿げてるよ。ただこのままこの街にいてどうなる?俺たちは何を頼れば良いんだ?何を待てば良いんだ?いつまで待つんだ?何も進まないじゃねぇか!ほら行くぞ。」

「行くならてめえだけで行けよ。」

「駄目だ。ついて来い。」

 引っ張られながらも僕は山に向かって歩きだした。

「冬の山行って帰ったやつなんて聞いた事ないぜ剣之介さん。」

「うるせぇな。行くしかないだろう。」


 凍てつくような吹雪は腹減ってガリガリの体には応える。

「なぁ今どれくらいかな?」

「山も超えてないし、まだ半分も行ってねぇな。」

「まだ半分も行ってないの?もう4時間くらい歩いたよ。」

「ここまで来たら行くしかねぇだろ。」

 あぁもう僕無理だ…
 意識が遠くなってきた…
 やっとみんなと同じ所にいける…
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