星の輝き、切なさの絆

未来の小説家

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星の輝き

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 葉月が葦の穂先に触れながら、ため息をついた。その儚げな姿が、星空の下でより一層切なさを引き立てていた。

「星、ねぇ、星はいつも綺麗だけど、こんな夜になると、なんだか胸が苦しくなるの。」葉月は小さな声で囁いた。

 おれは彼女の手をそっと握りしめた。星たちが輝く夜空の中で、彼女の手は温かく感じられた。それはおれたちの想いが交わる証だった。

「君と一緒にいると、心がいつも躍るんだ。だから、君と出会えて本当に幸せだよ。」おれは心からの感謝を込めて語った。

 彼女の瞳には、淡い涙が溢れていた。星たちの光が、それをやさしく照らしていた。

「帰ろうか。」おれはやわらかな声で言った。

「あぁ、そうだね。帰りましょう。」葉月は微笑んで応えたが、その微笑みには深い哀しみが漂っていた。

 道端の田んぼが穏やかな風に揺れ、その音が静寂を包む中、おれたちはゆっくりと歩き出した。

「この道、いつも一緒に歩いていたね。思い出がいっぱい詰まってる。」おれは懐かしそうに言った。

 葉月は小さく頷いた。彼女の眼差しには、遠い日の思い出が蘇っているように見えた。

「あの頃は、何もかもが新鮮で、楽しかったよね。君との時間は特別な宝物だった。」おれは優しく葉月の頭を撫でた。

「でも、そろそろお別れかな…」彼女の声が震える。

 おれは彼女を引き寄せ、固く抱きしめた。彼女の身体がおれの温もりに頼りなく寄り添ってくる。

「夜も遅いし、1人で帰るのは危ないから、絶対に送るよ。」おれの声が、彼女に届くように囁いた。

 葉月は弱々しく微笑んだ。彼女の涙は星の光に照らされ、輝きを増していた。

「ありがとう、星よ。君たちがいてくれて、少し心強く感じるわ。」彼女は静かに呟いた。

 おれは彼女の手を握り締めながら、夜道を歩き続けた。心の中にはさまざまな感情が渦巻いていた。

 葉月の涙は星の光に誘われるように、一つ一つ光り輝いていた。それは喜びや悲しみ、そして過去と未来への切なる想いの表れでもあった。

「君と過ごした時間は、ずっと宝物だよ。だから、どんなに辛いことがあっても、おれは君を守り続ける。」おれは強く誓った。

 葉月はその言葉に胸を打たれ、再び涙を流した。彼女の心の内側には、複雑な感情が交錯していた。

「でも、おれたちはいつまで続けられるのかな…」葉月の声は小さく震えていた。

 おれは彼女の肩を優しく抱き寄せ、星々の輝きを見上げながら語りかけた。

「星は遠くて綺麗だけど、いつかは光を失ってしまうんだよ。それでも輝き続けることができる時間があるから、大切なんだ。おれたちも同じさ。この切なさを胸に刻みながら、一瞬一瞬を精一杯生きよう。」

 葉月はしばらく黙ったままで、その後に微笑みながらおれを見つめた。

「そうだね、一瞬一瞬を大切にしよう。だって、いつか星のようにきらめかなくなっても、この想いが私たちの絆を繋いでくれるはずだもんね。」

 おれたちはそれからも手を繋ぎながら、田んぼ道をゆっくりと歩き続けた。星の光が私たちを照らし、葉月の涙は静かに輝き続けていた。この切なさが私たちの物語の一部となり、永遠に心に刻まれるのだと感じた。
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