蒼き狼の時代

天智天皇の即位

　狼藉が物部守屋との戦いで勝利した直後、安閑天皇が崩御したという知らせが伝えられた。
　天智天皇が即位することになり、朝廷は動揺に陥った。　
　狼藉もこの知らせに驚き、大混乱の中、天智天皇のもとへ向かった。

　天智天皇との最初の出会いは、宮中での儀式の席であった。狼藉は、壮大な様式美に包まれた宮中に圧倒されながらも、懸命に自分の役割を果たすように努めていた。

「おっと、あなたが新しい官吏の狼藉か？ようこそ、わが朝廷へ。綾織の袴を纏い、清らかな気風を漂わせる、気に入る者だ。」

　天智天皇の声が、狼藉の耳に届く。狼藉は恐縮しながら、天智天皇に敬意を表し、頭を下げた。

「ああ、ありがとうございます。私は、天智天皇陛下に仕えることができ、大変光栄に思います。」

「そうか、良い答えだ。今後とも、よく頑張ってくれ。」

　狼藉は、天智天皇の威厳ある姿勢に圧倒されたが、彼の目には、温かい光が宿っていた。狼藉は、自分自身に自信を持って、天智天皇に仕える決意を新たにした。

　天智天皇との信頼関係が深まるにつれ、狼藉は、彼に対する敬意と信頼をますます強めていった。ある日、天智天皇は、狼藉に対して、彼が持つ知識と経験を利用した新しい政策に対する考えを求めた。

「狼藉よ、わが朝廷には、改革が必要なことが多い。しかしどのような改革を行うか、私自身では思いつかない。あなたが持つ知識と経験を、私たちに貸して欲しいのだ。」

「まずは、現状を変えることが必要です。今のままでは、国を統治するための制度は十分ではありません。人々は貧しく、困窮している者が多いのです。私は、新しい制度を導入することで、貧しい人々を助け、国の経済を活性化することが必要だと思っております」

「なるほど、確かにそれは重要な課題である。だが、そのためにはどのような方法をとるべきか？」

「まずは、国内の資源を活用して産業を発展させることが必要です。また、新しい税制度を導入し、不平等な富の配分を改める必要があります」

「君は意欲的だな。そんな提案をする者は、君が初めてだ。私は、君の言葉に共感する。私も変化を望んでいるのだ。だが、君の提案を実現するためには、まず国内の力を結集することが必要だろう。私は君に期待している。私たちと共に、新たな時代を切り開いていこうではないか」

「狼藉よ、貴様の言葉には力がある。私も同じ考えを持っていたが、実現することができなかった。だが、貴様が私に協力してくれるなら、夢を現実にすることができるだろう。」

　天智天皇は、狼藉に対して強い信頼を寄せていた。狼藉が持つ考えは、天智天皇が長年に渡って掲げていた理念とも一致していた。狼藉が天智天皇に仕えることで、政治の場での改革が加速されることが期待された。

狼藉は、天智天皇からの言葉に心を打たれ、改めて彼に忠誠を誓った。

「天智天皇陛下、私は貴様に全力で協力することを誓います。貴様の理念を実現するために、私の力を使ってください。」

天智天皇は、狼藉の誓いに満足そうな笑みを浮かべた。

「よろしい。私たちは手を取り合って、日本を変えていくのだ。狼藉よ、私は貴様を重用する。これからは私の側近として、政治に参画してくれ。」

　狼藉は天智天皇に対して、自分が朝廷で働くことを誓った。その熱意溢れる様子に天智天皇は感銘を受け、狼藉に対して敬意を抱いていた。

「あなたの言葉には誠実さと情熱が感じられる。朕は、あなたが我が朝廷に仕えることを望んでいる。」と天智天皇は狼藉に語りかけた。

　そんな中、望月が狼藉に近づいてきた。望月は狼藉が朝廷で働くことを決めたことに対して、感傷的な表情を浮かべた。

「狼藉様が朝廷に仕えることになったのですね。私たちもあなたを支えるために、何ができるか考えています。」と望月はそっと囁いた。

　狼藉は望月の言葉に感謝の気持ちを込めて微笑んだ。二人は互いに気持ちを確かめあっていたが、結納することができていないことに少しもどかしさを感じていた。

「望月。あなたが支えてくれることは、本当にありがたい。今後も、あなたの力が必要な時があるかもしれないが、その時は頼りにしているよ。」狼藉は望月に対して優しい言葉をかけた。

　望月は、狼藉の言葉に心が震えた。二人は、それ以上の言葉を交わさず、ただ互いの手を握り合っていた。