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一章 わたし柴犬

逆ハーレムっ!?

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 未来では柴犬は希少種だったりする?

 なんてことは無いよね。日本の生きる天然記念物だよ?
 私の生きた時代では世界中で愛された柴犬なのよ?まさか絶滅したとか、そんな、まさかね。

「おい、セティアス。何処から攫ってきた」

 左奥にいた筋肉隆々の30すぎくらいのお兄さんが脅すように唸った。肌は浅黒く、巨漢な男はただならぬオーラを発している。
 顔が整い、ええ声なだけに凄い迫力だ。

「……拾った」
 あ、ご主人様の名前セティアス様でしたか!どことなく推しと名前も似通ってて嬉しくなる。
 周りの人も真剣な面持ちでこちらを見るに、捨て犬持ち込み禁止なのかもしれない。普通、職場の会議にペット同伴はないよね。
 しくじったわ。大人しく隠れてればよかたったかな。

 「んなわけねぇだろ!」と声を荒げるお兄さんに、ビクリと身を強張らせる。
 犬は耳がいいのであまり怒鳴らないでくださいいい!
 まだ吼えそうなお兄さんを、正面に堂々と座る金髪美形な青年が手で制した。金髪さん、アニメに出てくる王子様みたいな見た目です。キラッキラのエフェクトやら薔薇やら背負ってないのが不自然なほど。もしかしたら天使かも。

「子供を怖がらせてどうする。……セティ、それは多少姿形が違えどティアマトー種の幼体なのではないか? 野生はとっくの昔に絶滅していたはずだ。
しかしその人慣れした様は……拾ってきた詳しい状況を説明してくれるか」

 え、未来では柴犬はティアマトー種って言うんですか。かっこよくしすぎじゃありません?もっと親しみやすさを込めてシバイヌとかでいいと思います。

「ゴブリンの餌場で拾った。言葉は理解してるが他の国名に反応しない。アテンタの巫女すら知らん」

 「そんなに喋っているの初めて見た……」と騒がしい少年がこれまたビックリしている。いやいや、なんか喋り方がぶっきらぼうだよセティアス様!二人の時はもっと滑らかに喋っていたよね。

 やっぱり恥ずかしがりやなのかなー。
 「可哀想になぁ」なんて白ひげのお爺さんに憐れまれた。おじいさん、いい人ですね。撫でてもいいですよ。
 やっぱ柴犬は希少なんですかね?もっと説明を求めたい!

「念のため各国の宿舎に問い合わせた。拉致されたティアマトー種はここ百年居ないそうだ。不法に監禁されていたと考えるのが妥当だろう。つまり……」

 ぐう。

 あ、何やら考え込んでいたらお腹が減ってまいりました。
 流石子犬。本能に忠実です。
 ごめんねセティアス様!でもおなかへったの!

「きゅうぅん。(ご主人様、ハラヘタ)」

 上目遣いでご主人様のお腹をたしたしと叩く。そのまま前脚を握られて肉球を揉まれた。
 めしくれーめしーときゅんきゅん鳴く。
 なんか、不自然なほどおなかが減って辛い。うう、気持ち悪い。

 うるさくしていると身体をかかえられ、机の上に降ろされる。
 メシメシメシ……ってイケメンのみなさん、どうして眉間にしわを寄せているのかしら?すいません、ちょっと静かにしますから。調子にのってごめんなさい。
 睨まないでくださいいい。

「……それ、本当にティアマトーですか?」
 絞り出すかのようなメガネ兄さんに続いて「そんな鳴き声きいたことねぇよ」と浅黒なお兄さん。「凄まじい破壊力だねぇ」と、穏やかな感じの黒髪のおじ様がぷるぷるしてる。

 王子ルックの青年が机の上で手を組む。
「セティ、それ寄越しなさい」
「あっクロード様ズリィよ! 俺だって欲しいっ!」
「君たちは面倒をみれないだろ、ここは俺が……」「いやいや俺様が」
「私がエリートに育てます」
「似合わねぇからやめろメガネ!」

 と、卓上はわたくし争奪白熱ヒートバトルに陥った。
 あれ?もしかしなくとも私モテモテじゃない?これが逆ハーレムってやつか。
 モテる柴犬は辛いね。ふふっ

「俺が育てる」

 ズバッとご主人様が言いきってくれた。男前すぎて萌えが止まりません。
 ご主人様大好きぃー!と大きな手に擦り寄る。
 もうご主人様認定したから今更ポイはなしですよー!

「君はそれでいいのか?」
 と残念そうに王子様に問われたが、うんうんと激しく首を縦にふった。
「本当は何処かの宿舎にやるべきなんだがな。しかたない、暫くうちで面倒をみよう。ただし、セティにだけ構うのではなくたまには他の人間もなでさせるように」

 どんな命令だ!?と思ったけど楽しかったのでウンウン聞いとく。
 はげない程度なら、いくらでも撫でてください。
 イケメン大歓迎です。でも一番はご主人様ですからね。

「ようこそ我が騎士団へ。君の入団を歓迎しよう。私が騎士団長のクロードだ。よろしく、おチビさん」

 王子ルックの金髪の碧眼の美形兄さんがばちんとウインクする。さ、様になってるな~。
 王子様が騎士団長のクロードさん。騎士団をまとめる人だね。

 赤い髪、浅黒い肌の筋肉むちむち美声さんが第一部隊のタレットさん。
 戦闘専用、なんて言われるぐらい前線で戦う部隊の人なんだって。

 さらさらの水色髪のメガネクール!なお兄さんが第二部隊のシリウスさん。
 魔術特化のインテリ集団。未来は凄いな、魔術まで使えるのかー。

 穏やかな目をした白髪のおじいさん(でも筋肉むきむき)が第三部隊のシドレイさん。騎士団専用の調理部隊!なんだって。食材をとるのも命がけってことかー。

 大型わんこのような癒し系黒髪おじ様が第四部隊のミッドさん。普通体型だけどとっても身長が高い!
 後方支援専門。治療や配給が主なお仕事。

 先ほどから一言も発してない緑頭のお兄さんが第五部隊のヴァンさん。すごく切れ長の目で、目付きが鋭い。
 諜報活動専門らしい。美形なのに隠密行動とかできるのかな?

 一番うるさく騒いでいた青髪の若い少年が第六部隊のエファさん。一番熱烈視線かも。王都の警邏専門なんだって。いつか遊ぼうねー。

 うん、多分覚えた!
 多分ね!

 ところで騎士団って何するところ?
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