4 / 20
プロローグ
運命っ!?
しおりを挟む
鮮やかな炎がモーゼの十戒のように割れ、美しいシルエットが浮かび上がる。炎の中だというのに、漆黒のロングコートが軽やかに翻えった。
美しく長い銀の髪が炎の間をキラキラと舞う。
まるで、映画のように。
それは、幻想的な美しさ。
視線だけで相手を殺せるような紫紺の鋭い眼光に、整った鼻筋、美しい唇。コートの上からでもわかる引き締まった筋肉質な身体に、巨大な片刃剣。
美形、という言葉が裸足で逃げ出すような荘厳で神がかった超美形が現れた。
語彙が少ない私では形容するのが難しいほどの彼に、私は見覚えがあった。
(セ、セブリオス様!!!)
セブリオス様。それは人間であった時に唯一遊んでいた、RPGゲームの敵役登場人物。彼はそのキャラクターに瓜二つだった。
服装などは違うものの、二次元を無理やり三次元にしたらこうなるぞー!をリアルに再現していたのだ。
(どうしよう、よだれ垂れそう!)
「……お前が?」
(お声まで素晴らしい!!!)
ええ、なに、こんな美形のお兄さんに天国に連れて行ってもらえるなら、今ぽっくり逝ってしまってもいいきがする……。
死にかけの状況そっちのけで鼻息荒くガン見する。網膜に焼き付けよう、これから強く生きていけるように。いや死にそうなんですけどね。
男は目に見えぬほどの早さで剣を一閃させると、散り散りになった網の間から私を救い出してくださった。
地面できょとんとしている私を彼はつまみ上げる。
流石に美形といえど大きすぎて怖い。やっぱり私ってば小動物?
ああ、体もですが手まで大きいですね。私片手ですっぽりですね。
黒いレザーの手袋で、なにやら血みたいなものが少し飛び散ってますが気にしません。
次第に慣れてきたのか、意図せず震えていた体が止まる。無意識にすんすんと彼の匂いを嗅いでしまう。
美しい紫の瞳から至近距離で凝視され、固まる。凄い。水色と、紫と、紺のグラデーション。昔欲しいなって憧れた極上のタンザナイトみたい。私はうっとりと彼を見つめてしまう。
ああ、イケメンに抱かれてうっとりしちゃうとかしょうがないと思うのよね!
私、乙女だし!
「きゅん!( ありがとうございます!)」
彼は何やら思案すると、剣を鞘に収めて辺りを見回した。他にも動物はいるがみんな死んでるか、死にかけだ。彼はその動物たちに興味を示さず、小屋を後にした。
(成仏してね...なむなむ)
小脇に抱えられて外にでると、かつて小鬼だったであろう黒い塊が炎に飲まれてぼろぼろと崩れてゆく最中であった。
血みどろの死体だらけよりも幾分かはマシな状況だが、平凡な世界で生きてきた私にはちと辛いです。オエー!
集落全体を炎が包み込み、全てを灰に還すと自然と炎は消失した。
ふと思う。彼はどこからこんな炎を出したのだろう。火炎放射器なんて持ってない。爆弾?のような物も見当たらないし、何より不思議なのは煌々と燃え広がっていた炎が、木々に広がらなかったこと。
1歩間違えれば山火事じゃん?
イリュージョンみたいにふっと消えたけどさ。でも消し炭となった鬼の死体が、あれは本物の炎だって物語ってた。
私が首を傾げていると、完全な消滅を確認してから男は暗い森の中へと歩を進めた。
月明かりが優しく辺りを照らしだす。
まるで殺戮などなかったかのように、夜の散歩だと言わんばかりの足取りで男は暗闇の中進む。
歩きながら私は目の前まで持ち上げられ、月下でなお美しすぎる顔を至近距離で見てしまった。
──美形すぎて、眩しい。
(ぬあああ!乙女な精神に100のダメージ!)
萌えに萌えて悶えているだけなのだが、目をぎゅっと閉じ、鼻息が荒く、プルプル震えるさまは小動物が怯えているようにしか見えない。
少し焦げて丸まったひげ。
背中の擦られたあと。と、器用に体を手の上で回転させられ、観察される。そして後ろの足先を指で掴まれる。
「きゅきゅうぅぅん!(そ、そこは勘弁してつかぁさいぃぃ!)」
口には言えないようなところまでがっつり凝視され、羞恥でむせび泣いた。
美形に下半身を凝視されるなんてダメージ無限大すぎる。酷い。お嫁さんにいけないわ。動物だけど。
最後に丸まった尻尾までゆっくりと伸ばされ、事細かに観察されてからやっと身体検査は終わったようだ。
身じろぎすると、伸ばされた尻尾がくるん!と反動をつけて戻った。
(お、おわった?尻尾って触られると妙にぞわぞわするんだなあ)
と、何かやら凛々しいお顔に見つめられ視線をそらすと尾を握られた。
また尻尾を伸ばされ、離される。
また、伸ばされ、戻り……。
くい、くるん!(ぞくぞく)
くい、くるん!(ぞくぞく)
どうやらそれがお気に召したようで、私のキュンキュンした鳴き声に本気の泣きが入るまでしばらく続いたのだった。
美しく長い銀の髪が炎の間をキラキラと舞う。
まるで、映画のように。
それは、幻想的な美しさ。
視線だけで相手を殺せるような紫紺の鋭い眼光に、整った鼻筋、美しい唇。コートの上からでもわかる引き締まった筋肉質な身体に、巨大な片刃剣。
美形、という言葉が裸足で逃げ出すような荘厳で神がかった超美形が現れた。
語彙が少ない私では形容するのが難しいほどの彼に、私は見覚えがあった。
(セ、セブリオス様!!!)
セブリオス様。それは人間であった時に唯一遊んでいた、RPGゲームの敵役登場人物。彼はそのキャラクターに瓜二つだった。
服装などは違うものの、二次元を無理やり三次元にしたらこうなるぞー!をリアルに再現していたのだ。
(どうしよう、よだれ垂れそう!)
「……お前が?」
(お声まで素晴らしい!!!)
ええ、なに、こんな美形のお兄さんに天国に連れて行ってもらえるなら、今ぽっくり逝ってしまってもいいきがする……。
死にかけの状況そっちのけで鼻息荒くガン見する。網膜に焼き付けよう、これから強く生きていけるように。いや死にそうなんですけどね。
男は目に見えぬほどの早さで剣を一閃させると、散り散りになった網の間から私を救い出してくださった。
地面できょとんとしている私を彼はつまみ上げる。
流石に美形といえど大きすぎて怖い。やっぱり私ってば小動物?
ああ、体もですが手まで大きいですね。私片手ですっぽりですね。
黒いレザーの手袋で、なにやら血みたいなものが少し飛び散ってますが気にしません。
次第に慣れてきたのか、意図せず震えていた体が止まる。無意識にすんすんと彼の匂いを嗅いでしまう。
美しい紫の瞳から至近距離で凝視され、固まる。凄い。水色と、紫と、紺のグラデーション。昔欲しいなって憧れた極上のタンザナイトみたい。私はうっとりと彼を見つめてしまう。
ああ、イケメンに抱かれてうっとりしちゃうとかしょうがないと思うのよね!
私、乙女だし!
「きゅん!( ありがとうございます!)」
彼は何やら思案すると、剣を鞘に収めて辺りを見回した。他にも動物はいるがみんな死んでるか、死にかけだ。彼はその動物たちに興味を示さず、小屋を後にした。
(成仏してね...なむなむ)
小脇に抱えられて外にでると、かつて小鬼だったであろう黒い塊が炎に飲まれてぼろぼろと崩れてゆく最中であった。
血みどろの死体だらけよりも幾分かはマシな状況だが、平凡な世界で生きてきた私にはちと辛いです。オエー!
集落全体を炎が包み込み、全てを灰に還すと自然と炎は消失した。
ふと思う。彼はどこからこんな炎を出したのだろう。火炎放射器なんて持ってない。爆弾?のような物も見当たらないし、何より不思議なのは煌々と燃え広がっていた炎が、木々に広がらなかったこと。
1歩間違えれば山火事じゃん?
イリュージョンみたいにふっと消えたけどさ。でも消し炭となった鬼の死体が、あれは本物の炎だって物語ってた。
私が首を傾げていると、完全な消滅を確認してから男は暗い森の中へと歩を進めた。
月明かりが優しく辺りを照らしだす。
まるで殺戮などなかったかのように、夜の散歩だと言わんばかりの足取りで男は暗闇の中進む。
歩きながら私は目の前まで持ち上げられ、月下でなお美しすぎる顔を至近距離で見てしまった。
──美形すぎて、眩しい。
(ぬあああ!乙女な精神に100のダメージ!)
萌えに萌えて悶えているだけなのだが、目をぎゅっと閉じ、鼻息が荒く、プルプル震えるさまは小動物が怯えているようにしか見えない。
少し焦げて丸まったひげ。
背中の擦られたあと。と、器用に体を手の上で回転させられ、観察される。そして後ろの足先を指で掴まれる。
「きゅきゅうぅぅん!(そ、そこは勘弁してつかぁさいぃぃ!)」
口には言えないようなところまでがっつり凝視され、羞恥でむせび泣いた。
美形に下半身を凝視されるなんてダメージ無限大すぎる。酷い。お嫁さんにいけないわ。動物だけど。
最後に丸まった尻尾までゆっくりと伸ばされ、事細かに観察されてからやっと身体検査は終わったようだ。
身じろぎすると、伸ばされた尻尾がくるん!と反動をつけて戻った。
(お、おわった?尻尾って触られると妙にぞわぞわするんだなあ)
と、何かやら凛々しいお顔に見つめられ視線をそらすと尾を握られた。
また尻尾を伸ばされ、離される。
また、伸ばされ、戻り……。
くい、くるん!(ぞくぞく)
くい、くるん!(ぞくぞく)
どうやらそれがお気に召したようで、私のキュンキュンした鳴き声に本気の泣きが入るまでしばらく続いたのだった。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
転生したらうちの柴犬が最強でした
深水えいな
ファンタジー
犬の散歩中に転生してしまった柴田。共に転生した愛犬、サブローさんとともに、ウ〇チ袋とウン〇シャベルを手に異世界を行く!犬TUEEEEゆるギャグファンタジーです!
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活
mio
ファンタジー
なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。
こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。
なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。
自分の中に眠る力とは何なのか。
その答えを知った時少女は、ある決断をする。
長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる