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3月12日:9日目

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昨日までの苦労が嘘だったように今日はあっさりと仕事が片付き、定時ぴったりに会社を出た。だいぶ日は落ちてきているがいい天気の今日は行きたいところがあった。猫がいるであろうことは確信していた。

「こんにちは。今日は寄り道したいんだけどいいかな?」

そう声をかけると、猫は少し止まってからくるくると私の周りを回りだした。歩いたことのない道を、たまに立ち止まって地図を確認しつつ進んでいるせいか、猫からはどことなく不安そうな視線を向けられている気がする。10分ほど歩いてたどり着いたのは、ベンチがあって滑り台があるだけの小さな公園。もう日も落ち切っているが、この公園には街灯すらない。道路にある明かりを頼りにベンチに後ろ向きに腰かけると、猫も身軽に飛び乗って横へ座る。そうすると、視界は公園の外に向き、レストランの地下一階を見下ろすことができる。おしゃれな庭と、きらきらした装飾のされた室内が見える。パーティーが行われているようで、着飾った女性たちも多い。ふとした帰り道に、こういう風景を見ると非日常感があって気持ちが上がる。ぼんやりと眺めていると、太ももに重みを感じる。見ると猫が前足をのせていて、顔だけがそっぽを向いていた。そっと撫ぜてみても逃げる様子はない。

「ありがとう」
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