会社を出ると猫がいる～13日間の記録～

3月4日：3日目

2日も続くと期待してしまう。今日も猫が待っているといいな。そんな気持ちで会社のエレベーターを降りる。案の定、ドアの外には猫が見えて自然と笑顔になって少し駆け足で外に出れば、尻尾を振って出迎えてくれた。

「おまたせ」

そんな言葉が口をついてでる。ここ数日で、猫に話しかける抵抗もあまり感じなくなってしまった。さり気なく同行するのにも慣れたし、視界の端で隣を歩く猫を見ることにも慣れた。一緒に歩いていることに慣れると周りを見る余裕も出てきて、なんとなくこの道は歩きにくそうだから逆側を歩こうという気遣いもできるようになった。猫に気遣いなんて変な感じだけど。このあたりで猫がいつも姿を消すんだよねというタイミングでちらっとみると、ちょうど花壇に飛び乗る姿が見えた。猫らしいしなやかな動作に一瞬目を奪われる。うっかり立ち止まってしまって、迷惑そうに抜かす人に気づいて慌てて足を踏み出した。エスカレーターに乗って後ろを振り向いたとき、微かに鳴き声が聞こえた気がした。