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第2部-ファフニール王国・成長編-
039_成長
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とはいえ、2人の関係が変わるわけではなく、リリアは毎日屋敷に通っていた。いつもの道をアンと歩いていると、先に行っていたはずのルイが駆け戻ってきた。
「リリアお嬢様!」
「どうしたの?」
「早く来てください! 急いで」
何かがあったらしい。息を切らせながら、早く来てほしいと急かす。その勢いに押されて、2人も走り出した。あっという間に屋敷につき、手招きされるがままについていく。
着いた先にあったのは、ラーズを育てている花壇。甲斐甲斐しい世話のおかげで、数か所で青々と枝葉が伸びている。そのうちの一か所でアンが手招きしていた。
「見てください!」
指さした先を一斉にのぞきこむ。膝の高さまで伸びたラーズの葉の間に、小さな蕾がいくつか顔を出していた。リリアはそっとその蕾に触れ、現実だと確かめる。
「これって!」
「成功ですよ、お嬢様! ようやく花を咲かせられますね」
「うん!」
栽培が困難なラーズ。これまで幾度となく発芽を繰り返し、途中で枯らしたり腐らせてしまったりしながらようやく、花をつけられる段階まできた。ここからスムーズに花が咲くかはわからないが、一歩ずつ進んできている。それを実感し、リリアは嬉しそうに近くにあった別の葉の間も覗き込んだ。やはり同様に蕾がついており、ほっと息を吐く。
「良かった……」
「素晴らしいですね。まだ誰も、この国では栽培には成功していないというのに」
「やはりリリアお嬢様のお考えは間違っていなかったのです。おめでとうございます」
どのように育てればよいかと相談に乗り、資料集めに付き合い、一緒に悔しさを乗り越えてきたルイもアンも我がことのように手を取り合って喜ぶ。
「ありがとう。まだ最後まで気は抜けないけど、ここまできたんだもん。やってみせるよ」
「今日は早く帰ってオズウェル様にお知らせいたしましょう」
「うん!」
手に持った道具も今日は軽い。休憩を惜しんで作業を進め、この日は足早に屋敷を後にしたのだった。
「リリアお嬢様!」
「どうしたの?」
「早く来てください! 急いで」
何かがあったらしい。息を切らせながら、早く来てほしいと急かす。その勢いに押されて、2人も走り出した。あっという間に屋敷につき、手招きされるがままについていく。
着いた先にあったのは、ラーズを育てている花壇。甲斐甲斐しい世話のおかげで、数か所で青々と枝葉が伸びている。そのうちの一か所でアンが手招きしていた。
「見てください!」
指さした先を一斉にのぞきこむ。膝の高さまで伸びたラーズの葉の間に、小さな蕾がいくつか顔を出していた。リリアはそっとその蕾に触れ、現実だと確かめる。
「これって!」
「成功ですよ、お嬢様! ようやく花を咲かせられますね」
「うん!」
栽培が困難なラーズ。これまで幾度となく発芽を繰り返し、途中で枯らしたり腐らせてしまったりしながらようやく、花をつけられる段階まできた。ここからスムーズに花が咲くかはわからないが、一歩ずつ進んできている。それを実感し、リリアは嬉しそうに近くにあった別の葉の間も覗き込んだ。やはり同様に蕾がついており、ほっと息を吐く。
「良かった……」
「素晴らしいですね。まだ誰も、この国では栽培には成功していないというのに」
「やはりリリアお嬢様のお考えは間違っていなかったのです。おめでとうございます」
どのように育てればよいかと相談に乗り、資料集めに付き合い、一緒に悔しさを乗り越えてきたルイもアンも我がことのように手を取り合って喜ぶ。
「ありがとう。まだ最後まで気は抜けないけど、ここまできたんだもん。やってみせるよ」
「今日は早く帰ってオズウェル様にお知らせいたしましょう」
「うん!」
手に持った道具も今日は軽い。休憩を惜しんで作業を進め、この日は足早に屋敷を後にしたのだった。
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