春のツンデレロマンス

uribou

文字の大きさ
上 下
7 / 17

誤解とすれ違い

しおりを挟む
秋も深まり、木々が色とりどりの紅葉で彩られる季節がやって来た。学校の敷地内も赤や黄色に染まり、どこか物悲しさを漂わせていた。しかし、桜井めぐみの心には別の悩みが重くのしかかっていた。

クラスのプロジェクトは大成功に終わり、これからという時に、めぐみと陽介の間に小さな亀裂が走り始めた。ある日、些細な噂話が巡り巡って二人の耳に入ってきたのだった。

「あの二人、最近よく一緒にいるけれど、本当にただの友達なのかな?」

教室の片隅で何気なく耳にしたこの一言が、めぐみの中でくすぶっていた不安を呼び起こし、彼女は急に陽介に対してどう接していいのかがわからなくなってしまった。

放課後、図書館で再び資料を探すめぐみの心には、曇りが広がっていた。どうにかして陽介と自然に会話を続けようと思いつつも、ふとした時に不安がよぎる。

その日の放課後、陽介はめぐみに声をかけた。

「ねぇ、また一緒に帰らない?」

普段なら素直にうなずくところを、めぐみはなぜだか気まずくなり首を横に振った。

「今日は…ちょっと用事があるから先に帰るわ。ごめんね。」

彼女自身も、なぜこう答えたのかよく理解できなかった。ただ、目の前にいる彼を見るたびに、あの噂が頭に浮かんでしまうのだ。

陽介は少し驚いたような表情を浮かべたが、「そっか、また今度にしようね。」と笑顔で返し、それ以上は追究しなかった。

しかし、心中では何かが引っかかっていた。陽介は、教室でちらっとめぐみの顔を見るたびに、彼女が抱えている何かを感じ取ろうとしていた。彼女を悲しませたのは何か、そう考えれば考えるほど、もどかしさが募るばかりだった。

週末、めぐみは一人で商店街を歩いていた。この間、陽介と一緒に歩いた道が、どこか懐かしく、一方で寂しさも感じさせた。そのとき、偶然にも陽介と顔を合わせてしまった。

「めぐみちゃん!」

陽介が声をかけてきた。同時に、彼の隣にはクラスメイトのまりあの姿があった。

まりあは気まずそうに微笑む。

「あ、やあ、偶然だね。」

その瞬間、めぐみの中で何かが弾けたような気がした。ささいなことが、彼女にとってはまるで意味深なものに映り、感情が溢れ出してしまった。

「そっか、まりあと一緒だったんだ。」と声を落とした彼女の返事は、どこか刺々しさをはらんでいた。

「うん、ちょっと一緒に寄りたいところがあって…いや、君も一緒に行こうよ。」

陽介は笑顔でめぐみに提案するが、彼女は頷くことができなかった。

戸惑う陽介をよそに、めぐみは心の葛藤を抱えたまま冷静になれず、その場を立ち去ることにした。誤解から生まれた感情が、瞬く間に二人の間に壁を築いてしまったのだ。

帰り道、めぐみは自分を責めた。何が正しいのか、どうするべきなのかがわからなくなり、強い孤独感を感じた。自分の気持ちを素直に表現することができれば、こんな状況にはならなかったかもしれないのに。

その夜、ベッドに横たわりながらめぐみは涙を浮かべた。そして、陽介の優しさを思い出すたびに、もう一度彼とちゃんと話し合いたいという思いが強くなっていった。

一方の陽介もまた、めぐみを戸惑わせたのが自分のせいではないかと悩み続けていた。彼女と過ごした数々の日々を振り返り、どうにかしてこの誤解を解き、元の関係に戻りたいと願うばかりだった。

秋の風が頬を撫でるように、めぐみと陽介の心の間にも優しい変化が起きることを、互いに祈るような気持ちで過ごしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【ショートショート】おやすみ

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。 声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

完結【R―18】様々な情事 短編集

秋刀魚妹子
恋愛
 本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。  タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。  好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。  基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。  同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。  ※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。  ※ 更新は不定期です。  それでは、楽しんで頂けたら幸いです。

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

人妻の日常

Rollman
恋愛
人妻の日常は危険がいっぱい

【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました

utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。 がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本

しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。 関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください ご自由にお使いください。 イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

俺の彼女が黒人デカチンポ専用肉便器に堕ちるまで    (R18禁 NTR胸糞注意)

リュウガ
恋愛
俺、見立優斗には同い年の彼女高木千咲という彼女がいる。 彼女とは同じ塾で知り合い、彼女のあまりの美しさに俺が一目惚れして付き合ったのだ。 しかし、中学三年生の夏、俺の通っている塾にマイケルという外国人が入塾してきた。 俺達は受験勉強が重なってなかなか一緒にいることが出来なくなっていき、彼女は‥‥‥

処理中です...