僕を見つめる君の瞳は、なぜか輝いて見えた。

uribou

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地と天

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佐藤さんと買い物に行った次の日、僕はいつもより早く起き、学校に行く準備を始めた。
八時に家を出ているところを今日は、七時三十分に家を出た。
いつもより早く学校に着いたから、教室には四・五人しかいなかった。今まではほぼ全員教室にいたから、なんか新鮮だ。
僕はロッカーに荷物を入れた後、席に着き、本を読み始めた。やっぱり本は物語の中にいる感覚がするから大好きだ。
本を読み始めてから約八分が経ったその時、聞いたことのある元気な声が聞こえた。
「おはよーう!おー!!小野寺今日は早いねー、なんかあった?」
「別になにもないですよ。今日は早く起きれただけです」
「そっかー、じゃあ今日も学校がんばりましょー!」
佐藤さんに早く会いたいから早起きしたなんて言えない。そんなこと言ったら絶対に引かれるからだ。
佐藤さんは荷物をロッカーに入れた後、僕の前の席に座ってこっちを見てきた。
「何読んでんのー?」
「これは、僕の心臓をあげたいって言う小説だよ」
「へー面白いの?」
「うん!すっごく面白い。主人公は心臓の病気なんだけど、そんなこと気にせず、人生を全力で楽しんでいるところがかっこいいんだよね」
「小野寺ってさ、好きなものの話になると楽しそうにお話してくれるよね」
「え、えー、そうなんですか。自分じゃ気づかなかったです」
「そうだよ。すっごく笑顔でお話してくれる小野寺かわいいよw」
「え、え、え、えーーーーー!!!!」
「そんなに驚くことでもないでしょw」
さっき佐藤さんなんて言った?かわいい?いやいや気のせい、気のせい。そんなこと僕に言うはずがない。
「ご、ごめん」
「小野寺ってたまに面白いとこあるよねw」
今日の佐藤さんはいつもより機嫌がいい。そんなことよりさっきの言葉が頭から離れない。多分からかっているだけだよな。うん、そうゆうことにしよう。
そのあと、佐藤さんと本の話をした。僕の好きな本や佐藤さんの好きな本も教えてもらった。
「あ、そろそろホームルームの時間だ、じゃあね、またはなそーね」
「うん、また」
人とのコミュニケーションが苦手な僕でも佐藤さんとなら普通に話せる。これは多分、佐藤さんの話し方や反応がいいからだ。
朝のホームルームが終わり、国語の授業が始まった。そのあとも数学、英語、社会とどんどん授業が終わっていった。気づけばもう昼ごはんの時間だ。いつも僕は食堂で毎日カレーを食べている。今日もそうする予定だ。
いつも通り食堂に向かおうとしたその時、
「小野寺!今からご飯?」
「はい、食堂に行こうとしてました」
「じゃあ一緒に食べよ」
「え、えっと、、、」
今日の佐藤さんはどこかおかしい気がする。
「ダメかな?」
「い、いいですよ。一緒に食べましょう」
こんなに可愛く言われて断れるわけがない。なんてずるい生き物なんだ。
「やったー!じゃあ食堂にしゅっぱーつ!」
やっぱり今日の佐藤さんはおかしい。いつもは、こんなにテンション高くないはずなんだけどな。
食堂に着き、僕はいつも通り六百円のカレーライスを頼んだ。
佐藤さんはたまに食堂で昼ご飯を食べるらしい。
「へー小野寺ってカレー好きなの?」
「うん、食堂のカレー美味しいからほぼ毎日食べてる」
「じゃあ私もカレー食べよ]
佐藤さんも僕と同じカレーライスを頼んだ。
空いている席を見つけて向かい合わせに座った。何度見ても佐藤さんは可愛い。
「いっただっきまーす!」
「いただきます」
佐藤さんは無我夢中にカレーに食らいついた。僕もカレーを口に運んだ。やっぱりこの食堂のカレーは、いつ食べても美味しい。
「小野寺!これめっちゃ美味しいね」
「でしょ!野菜もお肉も全部が美味しいよね」
「うんうん、もっと早く知っとけば良かった」
佐藤さんの口に合って良かった。多分このカレーを嫌いと言う人はいないだろうけど。
「そういえば、小野寺って家に帰ったらなにしてるの?」
「普段はゲームしかしてないかも」
「ゲーム!私も弟にやらされてからハマってるんだよね」
佐藤さんがゲームをしているのは意外だ。そうゆうものには興味がないと思っていた。弟がいるとそうゆうものにもハマることがあるのだろうか。
「なんのゲームしてるの?」
「怪物ハンターとかポチっとモンスターかな」
「僕もポチっとモンスターやってるよ」
「あれめっちゃ楽しいよね!今度一緒にやろうよ」
「うん、でもやりこんでるから対戦しても多分佐藤さん勝てないよ」
一時期本気でやり込んでいて、大会でトップ二百位以内に入ったことがある。
「えー、なら手加減してよね。本気出したら怒るからね!」
「うん、そうだね、同じくらいの強さで戦おう」
一瞬怒られるのもいいかなと思ったのは、気のせいということにしておこう。
そのあとも佐藤さんと話しながらご飯を食べた。
「ごちそうさまー」
「ごちそうさまでした」
このあとは音楽と理科の授業がある。正直帰りたいけど、佐藤さんに心配はかけたくない。
なんとか午後の授業をやり終え、帰りのホームルームの時間になった。学校で一番無駄な時間だ。
帰りのホームルームが終わった。やっと帰れる、今日は家に帰ってすぐ寝よう。じゃないと明日学校に行く気力がなくなってしまう。
「お・の・で・ら、今日一緒に帰ろ」
「う、うん、早く帰ろう」
もう倒れそうなほど疲れている。一秒でも早く家に帰りたい。
「よし、行きましょー!」
佐藤さんはいつも元気で羨ましい。どんだけ体力あるんだよと思ってしまう。
「てかさ、小野寺のこと守って呼んでいい?」
「え、な、なんで?」
「だって私たち友達じゃん」
僕と佐藤さんって友達なのだろうか。確かに一緒に買い物に行ったし、昼ご飯も食べたから友達なのかもしれない。でも陽キャと陰キャだぞ、月とスッポンだぞ。
「そうなの?」
「え、逆に私の事なんて思っていたの?」
「クラスメイト」
今まで友達を作ったことがないから、どこから友達なのか分からない。
「そっか、小野寺は私の事ずっとただのクラスメイトだと思って関わってきてたんだ、」
「い、いや、そうゆうことじゃなくて」
「なんか悲しいな、あれ、なんで泣いてるんだろうw」
「ご、ごめん」
また泣かせてしまった。やっぱり僕は、他の人と関わらないのが正解なのかもしれない。
「ううん、大丈夫。でもこれからは、友達だと思って接してね」
「うん、ごめん」
一から人との関わり方を勉強した方が良さそうだ。
「でも、守が私を泣かせたんだから、私の言うこと何でも聞いてね」
「そ、それは、違くない?」
「守に拒否権はないでーすw」
まぁ佐藤さんの頼み事ならなんでも聞ける自信があるけど。
「じゃあ、まず一個目」
「え、何個もあるの?」
「当たり前でしょ、この私を泣かせたんだから当然のことよ、三個あるんだからね」
泣かせたのは僕だし、しょうがないか。お願いだから変なやつはやめてよ、佐藤さん。
「一個目は、私の事柚子って呼んで」
「え、絶対?」
「拒否権ないって言ったでしょ」
異性の事を、ていうか人の事を下の名前で呼ぶのは初めてだ。
「じゃあ、ゆ、ゆず?」
「よろしい。じゃあ二個目は、これからも私に付き合ってね」
「は、はい!」
これは、明日からも忙しくなりそうだ。柚子と一緒にいられるのは嬉しいけど。
「三個目は?」
「三個目は何かあったとき用に残しとく」
「そっか、ちゃんとしたことにしてよね。変なやつとか嫌だから」
「うん!じゃあこれからもよろしくね、ま・も・る」
「うん、よろしく」
このとき僕は、柚子が最後の願い事を使うのは最期だとは想像もしていなかった。

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