僕を見つめる君の瞳は、なぜか輝いて見えた。

uribou

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学校が終わり放課後になった。いつもなら走って家に帰り、速攻ゲームの世界に飛び込んでいる時間だ。
しかし今日は、学年一の陽キャ女子である佐藤さんと一緒にいる。
「今日は何を買うんですか?」
やっぱりまだ、タメ口では話せないみたいだ。
「んーとね、実は決まってないんだよね」
「え!買い物って買うもの決めずに行くものなんですか?」
「本当は決めてから行く方がいいのかもしれないけど、私は、行ってから決める方が好きだから」
「なるほど、です」
僕は買い物なんて行かないからよく分からなかった。
「今日は、どこで買い物するんですか?」
「電車で市内まで行って、市内のショッピングモールかな」
まさか市内に行くとは思いもしなかった。多分僕は、初めて市内に行く。
駅に着き、僕は切符を買った。佐藤さんは、スマホに登録しているらしく先に行ってしまった。僕は急いで佐藤さんを追いかけた。
「小野寺遅ーいwはやくはやくー、電車いっちゃうよ」
「はぁ、はぁ、ちょっ、と待って、ください」
運動を全然していない僕は、すぐ息があがってしまったが、なんとか佐藤さんに追いつき電車に乗ることができた。
「うわー、席ひとつも空いてないじゃん」
「そうですね、立つしかなさそうですよ」
電車内の席は本当にひとつも空いていなく、立つしかない状況だった。
「まぁいっか、じゃあ、あそこの扉の近く行こ!」
「分かりました」
僕と佐藤さんは、扉の近くに向かい合わせで立った。前を見ると佐藤さんが近くにいてドキドキしてしまう。佐藤さん、普通に可愛いんだよな、、、
いやいや何考えてるんだ、僕と佐藤さんでは住む世界が違うんだぞ!
僕の癖である妄想が始まってしまった。オタクあるあるだ。
「んwどした?ジロジロ見てるけど、なんか付いてる?」
「い、いや、別になんでもないです、」
「ふーんwそうなんだーwまぁいいやー」
つい佐藤さんを見つめてしまった。次から気を付けないと。
「まもなく、榴ヶ岡《つつじがおか》、榴ヶ岡、お出口は右側です。開くドアにご注意ください」
駅に着き扉が開くと、どんどん電車に人が入ってくる。僕は入ってくる人に押され、佐藤さんとの距離がどんどん近くなってくる。扉が閉まった頃には、僕と佐藤さんとの距離は二十センチもなかった。
「きゃっ!」
電車が揺れて僕はバランスを崩した。そしてなによりやばいのは、壁ドン状態になってしまっていることだ。
「ご、ごめん、多分、次の駅に着くまでこのままだと思う。本当にごめん」
「べ、別に大丈夫、そんなに気にしてないから」
僕の鼓動のスピードが急激に速くなった。クラス一の美女とこんなに近くなってしまったら、きっと誰でもこうなるだろう。佐藤さんに僕の鼓動が聞こえていないか心配だ。
「まもなく、仙台、仙台、お出口は右側です。開くドアにご注意ください」
やっと駅に着いた。僕と佐藤さんの壁ドン状態は約二分間も続いた。
電車から降り、駅を出た。
「ごめんなさい、あんなことになってしまって」
「いいよ、小野寺が悪いわけじゃないんだし、別に嫌じゃなかったし、」
佐藤さんは陽キャなのに、陰キャの僕にも優しく接してくれる。
「じゃあ、買い物行こー」
「う、うん」
佐藤さんは、すごく笑顔だった。やっぱり佐藤さんは可愛い、
「はぁ」
またやってしまった。すぐそうゆうことを考えてしまう自分が嫌いだ。
「ため息なんてついて、なんかあった?」
「い、いやなんでもないです。気にしないでください」
「もしかして、やっぱ私と買い物行きたくなかった?」
「そんなことないですよ、すごく楽しみです」
「ならよかった、買い物行こっか」
「はい」
僕は佐藤さんに心配をかけてばっかりだ。せっかく誘ってくれたんだし、楽しんでもらわないと。
駅からショッピングモールに向かっている間、僕は佐藤さんとたくさん話をした。
佐藤さんは甘いものが好きでよく友達と食べに行っているらしい。他にも小学四年生の弟がいて、毎日一緒に遊んであげているらしい。佐藤さんと話していると、自分との格差を感じてしまうけど全然苦じゃないから、もっと話したいなと思ってしまった。
「やっと着いたね、よっしゃ!小野寺じゃんじゃん買い物するぞ」
「お、おう!」
昔やったゲームで主人公が言ってたから言ってみたけど、僕が言うと体がゾッとした。
それから僕たちは、ご飯を食べて、服やアクセサリー、可愛いぬいぐるみなどいろんな物を買った。
佐藤さんとの買い物は、佐藤さんのことをたくさん知れて楽しかった。佐藤さんはファッションにたくさんお金をかけていることやクマのぬいぐるみが好きでたくさん集めているということも分かった。
「そういえば、今日はなんで僕を誘ったんですか?」
「えーw答えないといけないやつ?」
「できれば教えて欲しいなって。佐藤さんみたいな陽キャが僕みたいな陰キャと買い物に行く理由がどうしても分からなくて」
「それはねー、私が小野寺の事気になったからだよ。この人何考えてるんだろう、普段何してるんだろうって」
佐藤さんが真剣な顔で答えたから、僕は佐藤さんが嘘をついていないことは分かっていた。だからこそ僕は驚いている。学年一の陽キャ女子が学年一の陰キャを気になったという事実に。
「な、なんか、ありがとうございます」
「いえいえーw」
この時僕は、嬉しい気持ちよりも、もっと佐藤さんのことを知りたいと思った。
「買い物も終わったし帰る?」
「そうですね、もう七時ですし今日は帰りましょう」
「小野寺の家ってどこなの?」
「ここから十分くらいのとこにあります」
「そっか、じゃあここで解散だね、」
「はい、今日はありがとうございました」
佐藤さんは、どこか寂しそうな顔をしていた。僕も少し寂しくなった。
「小野寺、今日はありがと。楽しかったよ」
「僕も楽しかったです」
「ほんと!?よかった、じゃあまた明日」
「はい、また明日学校で」
僕は佐藤さんと解散し、逆方向に歩き出した。
「おのでらーーー!!またねーーー」
佐藤さんに呼ばれたので、僕は手を振りながら小さい声でこう言った。
「また行きたいな、」



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