11 / 34
炎のドラムソロ
しおりを挟む
<ラルゴ>
白の下着とワンピース型のパジャマが置かれていたので着ることにした。なんか、これの方がフォルテの体にはにあっているように思った。ブラジャーを悪戦苦闘してつけてみる。ゴワゴワして着心地が悪い感じだとまちがった付け方だなということが直感的にわかり、試行錯誤を繰り返す中、なんとか収まりのいい付け方を見つける。合ってるように思うけど、上下逆とかないか不安が残る。
部屋に戻るとテヌートが目を覚ましていた。優しい目で微笑みかける。それがトリガーで再び、僕の体が光りだす。ま、まさか! 3回目でようやくわかった。男性に胸がときめくと体が光りだすんだ! ぼ、僕は男だぞ。男にときめくなんてそんなこと認めたく、認めたくないけど。やだやだやだ。心が見透かされるようでやばい。やばすぎて語彙力もやばい。
「爺やから聞いたよ。懸命の看病をしてくれたんだね。ありがとう」
声が出ないのでパジャマスカートをつまんで深くお辞儀する。
「ところで、色が思ったように見えないんだ。色覚異常っていうのかな。一応、誰がどこに居て何があるかはわかるんだ。赤とか青とか大雑把にわかるけど、光の強弱がわからないんだ。君を庇った時、魔女に呪いをかけられたのかもしれない」
心配になる一方、体が光っていることが、バレずに済んで安堵する。
その刹那、ガラス窓が激しくガンガンと鳴り響き、外からの大音声が屋敷を揺るがす。
「貴様たちを生かしてこのまま逃すと思ったか! この屋敷ごと焼き尽くしてやる!」
狂気に満ちた叫びが轟くと同時に、炎のような赤黒い何かが窓を目がけて噴射され、鋭いひびが窓ガラスに走った。瞬く間に部屋の温度が上昇し、皮膚を焦がすような熱が襲いかかってくる。
「魔女だ! 復讐にきたんだ、やっぱり……君は甘すぎたんだ。あの女に情けをかけるべきではなかった、滅するべきだったんだ!」
背筋に冷たい恐怖が走る。しかしその緊張を打ち破るように、不敵な笑みと共に声が響く。
「いいこと言うねぇ。俺もお前とは仲良くなれないと思ってたけど、少しは気が合うかもな?」
部屋の扉が乱暴に開かれ、そこに現れたのは……僕と全く同じ姿をしたフォルテだった。彼の気迫に部屋の空気さえ変わるような錯覚を覚える。
「ラルゴ! 貴様、なぜここに?」
「魔女の魔力の残滓を感じ取ってな。ケンカ別れしたふりをして、やつの痕跡を追っていたんだ。そしたら、森の奥で傷を癒しているところを見つけた。こっそり尾行したら、この屋敷の前にたどり着いたってわけさ」
彼の声に、テヌートが軽く息を呑む。
「再び、三重奏というわけか……」
「ふん。病人と女はここで待ってろ! 俺一人でケリをつけてやる!」
フォルテが堂々とした態度で言い放つと、彼の手元に鮮やかなホログラムのドラムが現れる。その姿は僕の体なのに、僕よりも遥かに男らしく見えるのが不思議でならない。胸にわずかな悔しさがこみ上げてくるが、同時にその頼もしさが心を支配していた。
「おかしい。窓が割れてもおかしくないはずだ」と、テヌートが不審げに眉をひそめる。
「気づいたか、色男? ただ尾行してたわけじゃないさ。やつの回復を妨げるために、密かにバスドラムの重低音で邪魔をしてやったんだ。あいつは完全に回復したと思い込んでるが、大きな計算違いだったってわけだ」
「おのれええええええ! この狡猾者め!」
魔女の怨念が染み付いたような声が再び響き渡る。それに応じるように、フォルテの瞳が冷たく光る。
「フォルテの温情に感謝しろよ、だが俺は甘くない。貴様には、今ここで終わりを迎えさせてやる!」
フォルテはドラムスティックを回し、リズムが響き渡ると、屋敷全体が震えだす。彼の男声魔法が次々と唱えられ、ホログラムに複雑なリズムが刻まれるたびに、風が屋敷の外を巻き込み、炎の方向を逆転させた。
「ぎゃああああああ!」
炎が突風に煽られ、魔女の方へ向かう。その瞬間、彼女の体が炎に包まれ、断末魔の叫びが夜空にこだました。
<???>
魔女アリアがやられたか。まあ、想定外の事態はあるが、むしろ、我々にとっては、願った以上の成果だ。人件費が浮く。そうすれば、新しい殺し屋を雇うことだってできるし、研究にも投資できる。どちらも組織の維持拡大には必要なことだ。
アリアを殺した3人、中でもコバルトプリンセスは、危険な存在だ。一刻も早く葬らねばならない。エッジホープ社とエッジガード社、両方に刺客を差し出すよう命じるとしよう。
それはそうと、どうやら、エッジホープ社から女体化薬盗んだやつがいるらしいが、そっちは、とりあえずは、泳がせておくことにしようか。
ガーネットプリンスに覚醒すれば、兵器としていずれ使えることだろう。女体化男子が戦争の形を変えるのだ。
白の下着とワンピース型のパジャマが置かれていたので着ることにした。なんか、これの方がフォルテの体にはにあっているように思った。ブラジャーを悪戦苦闘してつけてみる。ゴワゴワして着心地が悪い感じだとまちがった付け方だなということが直感的にわかり、試行錯誤を繰り返す中、なんとか収まりのいい付け方を見つける。合ってるように思うけど、上下逆とかないか不安が残る。
部屋に戻るとテヌートが目を覚ましていた。優しい目で微笑みかける。それがトリガーで再び、僕の体が光りだす。ま、まさか! 3回目でようやくわかった。男性に胸がときめくと体が光りだすんだ! ぼ、僕は男だぞ。男にときめくなんてそんなこと認めたく、認めたくないけど。やだやだやだ。心が見透かされるようでやばい。やばすぎて語彙力もやばい。
「爺やから聞いたよ。懸命の看病をしてくれたんだね。ありがとう」
声が出ないのでパジャマスカートをつまんで深くお辞儀する。
「ところで、色が思ったように見えないんだ。色覚異常っていうのかな。一応、誰がどこに居て何があるかはわかるんだ。赤とか青とか大雑把にわかるけど、光の強弱がわからないんだ。君を庇った時、魔女に呪いをかけられたのかもしれない」
心配になる一方、体が光っていることが、バレずに済んで安堵する。
その刹那、ガラス窓が激しくガンガンと鳴り響き、外からの大音声が屋敷を揺るがす。
「貴様たちを生かしてこのまま逃すと思ったか! この屋敷ごと焼き尽くしてやる!」
狂気に満ちた叫びが轟くと同時に、炎のような赤黒い何かが窓を目がけて噴射され、鋭いひびが窓ガラスに走った。瞬く間に部屋の温度が上昇し、皮膚を焦がすような熱が襲いかかってくる。
「魔女だ! 復讐にきたんだ、やっぱり……君は甘すぎたんだ。あの女に情けをかけるべきではなかった、滅するべきだったんだ!」
背筋に冷たい恐怖が走る。しかしその緊張を打ち破るように、不敵な笑みと共に声が響く。
「いいこと言うねぇ。俺もお前とは仲良くなれないと思ってたけど、少しは気が合うかもな?」
部屋の扉が乱暴に開かれ、そこに現れたのは……僕と全く同じ姿をしたフォルテだった。彼の気迫に部屋の空気さえ変わるような錯覚を覚える。
「ラルゴ! 貴様、なぜここに?」
「魔女の魔力の残滓を感じ取ってな。ケンカ別れしたふりをして、やつの痕跡を追っていたんだ。そしたら、森の奥で傷を癒しているところを見つけた。こっそり尾行したら、この屋敷の前にたどり着いたってわけさ」
彼の声に、テヌートが軽く息を呑む。
「再び、三重奏というわけか……」
「ふん。病人と女はここで待ってろ! 俺一人でケリをつけてやる!」
フォルテが堂々とした態度で言い放つと、彼の手元に鮮やかなホログラムのドラムが現れる。その姿は僕の体なのに、僕よりも遥かに男らしく見えるのが不思議でならない。胸にわずかな悔しさがこみ上げてくるが、同時にその頼もしさが心を支配していた。
「おかしい。窓が割れてもおかしくないはずだ」と、テヌートが不審げに眉をひそめる。
「気づいたか、色男? ただ尾行してたわけじゃないさ。やつの回復を妨げるために、密かにバスドラムの重低音で邪魔をしてやったんだ。あいつは完全に回復したと思い込んでるが、大きな計算違いだったってわけだ」
「おのれええええええ! この狡猾者め!」
魔女の怨念が染み付いたような声が再び響き渡る。それに応じるように、フォルテの瞳が冷たく光る。
「フォルテの温情に感謝しろよ、だが俺は甘くない。貴様には、今ここで終わりを迎えさせてやる!」
フォルテはドラムスティックを回し、リズムが響き渡ると、屋敷全体が震えだす。彼の男声魔法が次々と唱えられ、ホログラムに複雑なリズムが刻まれるたびに、風が屋敷の外を巻き込み、炎の方向を逆転させた。
「ぎゃああああああ!」
炎が突風に煽られ、魔女の方へ向かう。その瞬間、彼女の体が炎に包まれ、断末魔の叫びが夜空にこだました。
<???>
魔女アリアがやられたか。まあ、想定外の事態はあるが、むしろ、我々にとっては、願った以上の成果だ。人件費が浮く。そうすれば、新しい殺し屋を雇うことだってできるし、研究にも投資できる。どちらも組織の維持拡大には必要なことだ。
アリアを殺した3人、中でもコバルトプリンセスは、危険な存在だ。一刻も早く葬らねばならない。エッジホープ社とエッジガード社、両方に刺客を差し出すよう命じるとしよう。
それはそうと、どうやら、エッジホープ社から女体化薬盗んだやつがいるらしいが、そっちは、とりあえずは、泳がせておくことにしようか。
ガーネットプリンスに覚醒すれば、兵器としていずれ使えることだろう。女体化男子が戦争の形を変えるのだ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
少年女体化監禁事件
氷室ゆうり
恋愛
めったに書かないダークものも、たまには書いてみようかとした結果がこれです。ショートショートとはいえ、あまり好みじゃないということがよく分かりました。
それはそれとしてこういう作品も自身の成長に必要だと思うので。
r18です。それでは!
声楽学園日記~女体化魔法少女の僕が劣等生男子の才能を開花させ、成り上がらせたら素敵な旦那様に!~
卯月らいな
ファンタジー
魔法が歌声によって操られる世界で、男性の声は攻撃や祭事、狩猟に、女性の声は補助や回復、農業に用いられる。男女が合唱することで魔法はより強力となるため、魔法学園では入学時にペアを組む風習がある。
この物語は、エリック、エリーゼ、アキラの三人の主人公の群像劇である。
エリーゼは、新聞記者だった父が、議員のスキャンダルを暴く過程で不当に命を落とす。父の死後、エリーゼは母と共に貧困に苦しみ、社会の底辺での生活を余儀なくされる。この経験から彼女は運命を変え、父の死に関わった者への復讐を誓う。だが、直接復讐を果たす力は彼女にはない。そこで、魔法の力を最大限に引き出し、社会の頂点へと上り詰めるため、魔法学園での地位を確立する計画を立てる。
魔法学園にはエリックという才能あふれる生徒がおり、彼は入学から一週間後、同級生エリーゼの禁じられた魔法によって彼女と体が入れ替わる。この予期せぬ出来事をきっかけに、元々女声魔法の英才教育を受けていたエリックは女性として女声の魔法をマスターし、新たな男声パートナー、アキラと共に高みを目指すことを誓う。
アキラは日本から来た異世界転生者で、彼の世界には存在しなかった歌声の魔法に最初は馴染めなかったが、エリックとの多くの試練を経て、隠された音楽の才能を開花させる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる