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演劇文化祭!歌がつなぐ愛の旋律編
君が歌えば美しい曲になる
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<エリーゼになったエリック視点>
「みにくいあひるの子か」
僕はため息をついた。
白鳥変身魔法は、詠唱難易度としてはかなり高い。
それだけに、そのプレッシャーに打ち勝ったらかなりの名誉のことで学内に名声が知れ渡ることだろう。
だが、僕はその魔法を成功させたことが一度もない。
13歳のとき、声変わりになる前に腕試しのために挑戦したことがある。
だが、流れるように移りゆくハイトーンに声がついていかない。
女子寮に戻った僕はプレッシャーにさらされていた。
「ねえ?あんたできんの?そんな大役」
「こいつにできるわけないじゃない。早く下りれば?」
「魔法失敗したらブーイングしてやろっか?」
ううう。
地味に嫌味言われていじめられてる。
練習しなければ。
そして、見返してやらないと。
夜中に一人でボイトレをこなす日々がはじまった。
腹の奥底から声を出して、そして、練習!練習!練習!
だが、思ったように声のコントロールがうまくいかない。
高音を出すだけでも大変なのに、音階の変化がうまくいかない。
試行錯誤を繰り返し、悩みに悩んだある日だった。
ボイトレをしているところにアキラがやってきた。
「悩んでいるって聞いてさ。力になれることないかな」
「残念だけど、魔法初心者の君にお願いできることはないかな」
「そっか。ところで、楽譜描いてみたんだけど」
そういって、五線譜を手渡される。
「これ……?」
「白鳥に変身する魔法の練習曲作ってみた」
見てみると、なるほど、白鳥魔法と音階が似ているようだ。
「こんな高音の難曲はなかなかお目にかかれるものじゃないよ。僕が来た世界でいえば、モーツアルトの魔笛ってクラシック曲によく似たタイプの難しさだ。高音が乱高下してさ。ただ、音階に注目すると基本的に5音しか使われていない。こういうのをペンタトニックスケールっていうんだ」
音楽理論を語りはじめるもんだから僕はただふんふんとうなづくばかり。
「20世紀のブルースロック系の名曲の数々でギターソロでこんな音階になることはある。だけど、人間の声帯でこれを歌うのは正気なのかって僕も思うよ」
「まあ、詠唱しないといけないけどね」
「そこで練習曲というわけだ」
「この曲とこの曲がスケールの練習だ。そして、この曲が、僕が作曲した練習曲『ハイトーンドリーム』だ」
「ハイトーンドリーム?魔法詠唱じゃないの?」
僕が聞くと、アキラは首を横に振った。
「残念ながら、魔法詠唱のルールからは外れた音階の曲だから、たとえ歌えたとしても、魔法の効果はない。僕のやってきた世界では、音楽とは音を楽しむためのもので、生活のために覚えなきゃいけないものじゃないんだ。だから、効果よりも美しさが重視される」
「美しさ……」
「君が歌えばきっと美しい曲になると思うよ」
とにっこりとほほ笑む。
「それって……」
遠回しの愛の告白じゃ。
僕は男だ。
男である僕がそんなこと言われてドキドキするはずが。
「みにくいあひるの子か」
僕はため息をついた。
白鳥変身魔法は、詠唱難易度としてはかなり高い。
それだけに、そのプレッシャーに打ち勝ったらかなりの名誉のことで学内に名声が知れ渡ることだろう。
だが、僕はその魔法を成功させたことが一度もない。
13歳のとき、声変わりになる前に腕試しのために挑戦したことがある。
だが、流れるように移りゆくハイトーンに声がついていかない。
女子寮に戻った僕はプレッシャーにさらされていた。
「ねえ?あんたできんの?そんな大役」
「こいつにできるわけないじゃない。早く下りれば?」
「魔法失敗したらブーイングしてやろっか?」
ううう。
地味に嫌味言われていじめられてる。
練習しなければ。
そして、見返してやらないと。
夜中に一人でボイトレをこなす日々がはじまった。
腹の奥底から声を出して、そして、練習!練習!練習!
だが、思ったように声のコントロールがうまくいかない。
高音を出すだけでも大変なのに、音階の変化がうまくいかない。
試行錯誤を繰り返し、悩みに悩んだある日だった。
ボイトレをしているところにアキラがやってきた。
「悩んでいるって聞いてさ。力になれることないかな」
「残念だけど、魔法初心者の君にお願いできることはないかな」
「そっか。ところで、楽譜描いてみたんだけど」
そういって、五線譜を手渡される。
「これ……?」
「白鳥に変身する魔法の練習曲作ってみた」
見てみると、なるほど、白鳥魔法と音階が似ているようだ。
「こんな高音の難曲はなかなかお目にかかれるものじゃないよ。僕が来た世界でいえば、モーツアルトの魔笛ってクラシック曲によく似たタイプの難しさだ。高音が乱高下してさ。ただ、音階に注目すると基本的に5音しか使われていない。こういうのをペンタトニックスケールっていうんだ」
音楽理論を語りはじめるもんだから僕はただふんふんとうなづくばかり。
「20世紀のブルースロック系の名曲の数々でギターソロでこんな音階になることはある。だけど、人間の声帯でこれを歌うのは正気なのかって僕も思うよ」
「まあ、詠唱しないといけないけどね」
「そこで練習曲というわけだ」
「この曲とこの曲がスケールの練習だ。そして、この曲が、僕が作曲した練習曲『ハイトーンドリーム』だ」
「ハイトーンドリーム?魔法詠唱じゃないの?」
僕が聞くと、アキラは首を横に振った。
「残念ながら、魔法詠唱のルールからは外れた音階の曲だから、たとえ歌えたとしても、魔法の効果はない。僕のやってきた世界では、音楽とは音を楽しむためのもので、生活のために覚えなきゃいけないものじゃないんだ。だから、効果よりも美しさが重視される」
「美しさ……」
「君が歌えばきっと美しい曲になると思うよ」
とにっこりとほほ笑む。
「それって……」
遠回しの愛の告白じゃ。
僕は男だ。
男である僕がそんなこと言われてドキドキするはずが。
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