声楽学園日記~女体化魔法少女の僕が劣等生男子の才能を開花させ、成り上がらせたら素敵な旦那様に!~

卯月らいな

文字の大きさ
上 下
42 / 100
演劇文化祭!歌がつなぐ愛の旋律編

音楽の神話

しおりを挟む
<エリーゼになったエリック視点>

文化祭の会場の準備は僕たちキリンクラスの1年生が行う。

シートを敷き、椅子を並べる。

こんな雑用をしている間にも、他のクラスの生徒は授業を受け、魔法の知見を深めている。

歯がゆくて悔しいと思い、焦りながらもアキラの言葉を思い出す。

「音楽は争いの道具ではない……か」

そんなきれいごとを言われても、生まれたときから、競争の道具として音楽は使われていた。

いや、生まれたときからではなく、それよりも前、有史始まって以来から。

神学の授業によれば、はるか昔、人類は神より2つの選択を迫られたという。

科学と魔法。

どちらを使って発展させたいかを神は人類に選ばせた。

人類は魔法を選び、声楽を選んだ。

社会の身分は声楽の能力で決まる社会が築かれた。

人類の歴史の必然として、時に革命が起き、政変が起き、下剋上も起きた。

だが、社会身分のヒエラルキーを決める存在としての声楽、魔法は絶対だという原則は変わらなかった。

生まれ持った身分だけで、人間の価値が決まるよりかは、努力によって向上するスキルによって決まる方がいくらか平等である。

そんな理屈により、音楽を立身出世の道具として使われることに人類は誰も何の疑問も持たなくなっていた。

音楽が生活に根差す一方で、音楽を奏でることに人類は疲れていた。

アキラによると、彼はそんな世界の外からやってきた。

外の世界では、音楽は純粋に芸術として、あるいは娯楽として消費されているらしい。

そんな世界では、きっと僕は、エリートではなく平凡な人間として埋もれていたことだろう。

だが、そんな世界も悪くないと思った。

単純に人の感情を揺さぶり、癒しを与える存在としてミュージシャンがいる。

アキラの暮らしていた世界にいつか行ってみたい!とすら考え始めていた。

ミラヴェニア魔法学園は、男子生徒こそが花形で女子は添え物でしかない。

そんな学校で女子が目立てる数少ないイベントの一つがこの文化祭の舞台である。

男子生徒は舞台装置をセットする裏方に回り、女子生徒が役者として舞台にあがることが慣習となっていた。

文化祭のヒロインはとても名誉なことだったが、プレッシャーも感じていた。

きっと、それは、誰にも負けたくないという気持ちが先走っているからに違いなかった。

もし、誰かと戦うことを意識せず、純粋に声楽を楽しむことができたら……。

アキラは僕に声楽の喜び楽しさを与えてくれた。

最近の夜のトレーニングのおかげで、音楽を立身出世の道具としてではなく、生きる楽しみとして見れるようになってきた。

僕は、自分で自分に魔法をかけ、みにくいあひるの子の姿になり、舞台裏にスタンバイした。

開園ブザーの音は鳴り、舞台の幕は徐々に上にあがっていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃった件

楠富 つかさ
恋愛
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃうし、なんなら恋人にもなるし、果てには彼女のために職場まで変える。まぁ、愛の力って偉大だよね。 ※この物語はフィクションであり実在の地名は登場しますが、人物・団体とは関係ありません。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

処理中です...