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演劇文化祭!歌がつなぐ愛の旋律編
決定的な挫折
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<エリーゼになったエリック視点>
開幕、アヒルの母親が先導する中、子アヒルたちがついていく。
これはあくまで演劇。
完全にアヒルそのものの姿になると人間が感情移入できにくいので、アヒルでありながらも漫画絵のように人間味あふれる愛嬌を残したルックスに変身する。
ただし、僕だけみにくいあひるの子の姿。
アヒル変身魔法のうち、四小節だけ他のみんなと唱える魔法と変拍子にするとちょっと大柄で不細工な白鳥の子になるのだ。
アヒルの子たちが交代交代で僕に悪態を突くようなセリフを言う。
もちろんシナリオ通りだし、キリンクラスの仲間たちなのでそこまで本気で憎しみのこもったセリフを僕にぶつけてくる者はいない。
演劇として、声の美しさをアピールしつつ、流れるように皆演技する。
すごいな。
キリンクラスと言ってもみんなエリートだ。
僕もみんなに負けてられない。
客席にアピールしながらいじめられ演技をする。
まばらな拍手がやってくる。
キリンクラスの出し物などと思って、よそ見をしている人間、真剣に見ている者、客席は多種多様だった。
プレッシャーに押しつぶされそうになった僕は、真剣に見ている教頭先生の顔を見て緊張を緩和することにした。
ミュージカルのように歌うように演技する。
アヒルの子たちはやがて大きくなり、やがてクライマックスに。
体が大きくなり、そして、僕の体が白鳥になる場面だ。
成功してみんなを見返してやる場面だ。
ここで成功すれば会場はカタルシスの解放に満たされる。
だが、失敗したら……。
魔法を詠唱する。
練習の時に一度も成功していない白鳥になる魔法を。
ハイトーンボイスで難読の楽譜を詠唱する。
Aパートは無事成功、難しいBパートに差し掛かる。
そして、いちばん難しい場所……。
「アー…アッ!」
失敗した。
僕は膝まづく。
会場からため息が漏れる。
「やっぱりね」
「キリンクラスだったらこんなもんだよ。よくやったよ」
「あの子、上級クラスに行くとか生意気言ってた子だっけ?」
ざわざわが耳にあふれる。
演劇は失敗。
この魔法は一度詠唱を失敗したら、30分は再詠唱できない。
この劇場で30分も待ってくれる気長な人間はいない。
舞台袖に視線を投げると、目が合った男子が視線を逸らす。
僕の挑戦はどうやら失敗してしまったようだ。
ん?どこからか、強い視線を感じる。
アキラ!
何かを口パクで言っている。
何を言いたいんだ。
「歌え!」
と言っているように見えた。
何を歌えというんだ。
僕の敗北は決まったような今になって……。
はっ。
僕ははたと気づき立ち上がった。
そして、立ち上がった。
開幕、アヒルの母親が先導する中、子アヒルたちがついていく。
これはあくまで演劇。
完全にアヒルそのものの姿になると人間が感情移入できにくいので、アヒルでありながらも漫画絵のように人間味あふれる愛嬌を残したルックスに変身する。
ただし、僕だけみにくいあひるの子の姿。
アヒル変身魔法のうち、四小節だけ他のみんなと唱える魔法と変拍子にするとちょっと大柄で不細工な白鳥の子になるのだ。
アヒルの子たちが交代交代で僕に悪態を突くようなセリフを言う。
もちろんシナリオ通りだし、キリンクラスの仲間たちなのでそこまで本気で憎しみのこもったセリフを僕にぶつけてくる者はいない。
演劇として、声の美しさをアピールしつつ、流れるように皆演技する。
すごいな。
キリンクラスと言ってもみんなエリートだ。
僕もみんなに負けてられない。
客席にアピールしながらいじめられ演技をする。
まばらな拍手がやってくる。
キリンクラスの出し物などと思って、よそ見をしている人間、真剣に見ている者、客席は多種多様だった。
プレッシャーに押しつぶされそうになった僕は、真剣に見ている教頭先生の顔を見て緊張を緩和することにした。
ミュージカルのように歌うように演技する。
アヒルの子たちはやがて大きくなり、やがてクライマックスに。
体が大きくなり、そして、僕の体が白鳥になる場面だ。
成功してみんなを見返してやる場面だ。
ここで成功すれば会場はカタルシスの解放に満たされる。
だが、失敗したら……。
魔法を詠唱する。
練習の時に一度も成功していない白鳥になる魔法を。
ハイトーンボイスで難読の楽譜を詠唱する。
Aパートは無事成功、難しいBパートに差し掛かる。
そして、いちばん難しい場所……。
「アー…アッ!」
失敗した。
僕は膝まづく。
会場からため息が漏れる。
「やっぱりね」
「キリンクラスだったらこんなもんだよ。よくやったよ」
「あの子、上級クラスに行くとか生意気言ってた子だっけ?」
ざわざわが耳にあふれる。
演劇は失敗。
この魔法は一度詠唱を失敗したら、30分は再詠唱できない。
この劇場で30分も待ってくれる気長な人間はいない。
舞台袖に視線を投げると、目が合った男子が視線を逸らす。
僕の挑戦はどうやら失敗してしまったようだ。
ん?どこからか、強い視線を感じる。
アキラ!
何かを口パクで言っている。
何を言いたいんだ。
「歌え!」
と言っているように見えた。
何を歌えというんだ。
僕の敗北は決まったような今になって……。
はっ。
僕ははたと気づき立ち上がった。
そして、立ち上がった。
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