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アキラと姉!甲府の旅
アキラの姉との遭遇
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<エリーゼになったエリック視点>
最初はアキラが、本当は男である僕にドキドキしているのを面白がっていた。
医務室で二人きりになったあの日、アキラは僕に対してアニマ(理想の女性像)を投影していたんだ。
僕は彼のアニマを演じることが最初は楽しかった。
はじめは、子どものようないたずら半分のような気持ちだった。
だけど、いつの間にか彼の期待の演技を裏切りたくない、彼のアニマをやめたくないという気持ちが日に日に強くなっていった。
いつしか、自分が彼のアニマであることに幸せすら感じるようになった。
やがて、アニマは、本物の女心に似た何かに育っていった。
僕はアニマをやめたくない。
アキラに寄り添って生きていきたい。
でも、この気持ちは果たして許されるべきものなのか。
それを確かめる旅に僕は出た。
目が覚めると、固く舗装された河川敷に寝そべっていた。
後に知ったことだがこの材質はコンクリートというものらしい。
警報音が鳴り、近くをけたたましく鉄の塊が走る。
これも電車というらしく、この日本という世界では移動手段として広く使われているものという。
僕たちの世界にも汽車はあるが、それよりも性能が高く見えた。
見たことのない植物、独特なデザインの家屋、白い線を引かれた道を行き交う鉄の塊。
この世界では、魔法というものが発展せずに科学が発展したと聞いた。
アキラの家を僕は探すことにした。
ソプラノボイスで魔法を唱えるが、反響がない。
「嘘だ!魔法が使えないなんて」
どうやら、僕は、ここでは、優秀な魔法使いではなくただの一人の少女に過ぎないようだ。
仕方なく、周囲を歩いているおばさんに聞いてみることにした。
こんな広い街だから、簡単にアキラの家なんて見つからないと思いつつも手掛かりがない以上は聞くしかない。
「すみません。アキラ・スズキさんの家はご存じないですか?最近、行方不明になっているはず」
向こうから見れば変わったいで立ちをしているであろう僕のことを怪訝そうな顔をして、じっと見つめる。
まあ、不審者と言われても仕方ないですよね。
「鈴木さん家に何の用?」
礼儀正しさを強調するために帽子を取って深々と礼をする。
アキラのふるまいを観察した限りでは、文化は違えど、僕たちと礼儀作法の部分は大きな差異があるように見えなかった。
「アキラくんのご家族にお見舞い申し上げたくて」
アキラの居場所を知っていると言ってしまうと怪しすぎて、教えてもらえそうにないというのは直感でわかった。
「鈴木さんの家だったら、国道を挟んですぐのところだよ。表札にこんな字を書いている家がそうだよ」
さっと、ノートの切れ端に『鈴木』という文字を書いたものをさっと手渡してくれた。
その家はすぐに見つかった。
インターフォンを押せばいいという常識がわからない僕は、家の前でまごまごしていた。
すると、僕より少し年上のどこかアキラに似た雰囲気を持った女性が家の中から出てきた。
「あの、はじめまして。私、アキラくんの知り合いと言いますか。その、申し上げにくいのですが」
うまく言葉が出てこない。
すると、女性は僕の名前を言い当てた。
「あなたエリーゼちゃんでしょ?」
へ?
「どうして私の名前を……」
「声楽学園日記(せいがくがくえんダイアリー)にあなたのことが書いてある」
最初はアキラが、本当は男である僕にドキドキしているのを面白がっていた。
医務室で二人きりになったあの日、アキラは僕に対してアニマ(理想の女性像)を投影していたんだ。
僕は彼のアニマを演じることが最初は楽しかった。
はじめは、子どものようないたずら半分のような気持ちだった。
だけど、いつの間にか彼の期待の演技を裏切りたくない、彼のアニマをやめたくないという気持ちが日に日に強くなっていった。
いつしか、自分が彼のアニマであることに幸せすら感じるようになった。
やがて、アニマは、本物の女心に似た何かに育っていった。
僕はアニマをやめたくない。
アキラに寄り添って生きていきたい。
でも、この気持ちは果たして許されるべきものなのか。
それを確かめる旅に僕は出た。
目が覚めると、固く舗装された河川敷に寝そべっていた。
後に知ったことだがこの材質はコンクリートというものらしい。
警報音が鳴り、近くをけたたましく鉄の塊が走る。
これも電車というらしく、この日本という世界では移動手段として広く使われているものという。
僕たちの世界にも汽車はあるが、それよりも性能が高く見えた。
見たことのない植物、独特なデザインの家屋、白い線を引かれた道を行き交う鉄の塊。
この世界では、魔法というものが発展せずに科学が発展したと聞いた。
アキラの家を僕は探すことにした。
ソプラノボイスで魔法を唱えるが、反響がない。
「嘘だ!魔法が使えないなんて」
どうやら、僕は、ここでは、優秀な魔法使いではなくただの一人の少女に過ぎないようだ。
仕方なく、周囲を歩いているおばさんに聞いてみることにした。
こんな広い街だから、簡単にアキラの家なんて見つからないと思いつつも手掛かりがない以上は聞くしかない。
「すみません。アキラ・スズキさんの家はご存じないですか?最近、行方不明になっているはず」
向こうから見れば変わったいで立ちをしているであろう僕のことを怪訝そうな顔をして、じっと見つめる。
まあ、不審者と言われても仕方ないですよね。
「鈴木さん家に何の用?」
礼儀正しさを強調するために帽子を取って深々と礼をする。
アキラのふるまいを観察した限りでは、文化は違えど、僕たちと礼儀作法の部分は大きな差異があるように見えなかった。
「アキラくんのご家族にお見舞い申し上げたくて」
アキラの居場所を知っていると言ってしまうと怪しすぎて、教えてもらえそうにないというのは直感でわかった。
「鈴木さんの家だったら、国道を挟んですぐのところだよ。表札にこんな字を書いている家がそうだよ」
さっと、ノートの切れ端に『鈴木』という文字を書いたものをさっと手渡してくれた。
その家はすぐに見つかった。
インターフォンを押せばいいという常識がわからない僕は、家の前でまごまごしていた。
すると、僕より少し年上のどこかアキラに似た雰囲気を持った女性が家の中から出てきた。
「あの、はじめまして。私、アキラくんの知り合いと言いますか。その、申し上げにくいのですが」
うまく言葉が出てこない。
すると、女性は僕の名前を言い当てた。
「あなたエリーゼちゃんでしょ?」
へ?
「どうして私の名前を……」
「声楽学園日記(せいがくがくえんダイアリー)にあなたのことが書いてある」
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