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新聞社へ急げ!護衛戦

古城に浮かぶ女

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<エリーゼ視点>

「そういうわけだ」

「助けに来てあげたわよ」

背後から2人が現れる。

「ショパン!ブーレ!」

「2人では、ちょっと心もとないかもしれない。だけど6人いれば」

「行けるかもしれない」

だんだん、心強くなってきた。

そんなこんなで、満月の晩はやってきた。

風が吹いていて、木々がざわめき、水面とスカートは揺れる。

湖に船を浮かべ、私は魔法を唱えた。

「エリ ダリア ホル ナノカ!」

詠唱を終え、高らかにあげた両腕を下げる。

10秒が過ぎたが、反応がない。

ダメか。

そう思ったそのときだった。

地震が起きた。

小波が往来し、思わずしゃがんでしまう。

しばらくすると、目の前に石壁の建物が、湖の中から浮上するのが見えた。

古城だ。

狙った通りのものが目の前に現れたとはいえ、にわかに信じられないでいた。

石橋が八方向に湖の端から端までまで伸びる。

アキラが慌てて船を橋に寄せると、残りの4人が集まってきた。

「行くぞ。アマデウスの手のものに先を越されてはならない」

湖から浮き上がった古城の門から、古代の衣装を着た一人の清楚なローブを着た女性が歩いているのを見つける。

かまいたちの呪文で急いで近づく。

「クライスさんですね?」

「ええ」

「我々が何者かを説明する時間はありません。アマデウス議員の手のものがあなたの命を狙っているので。信用できないのは重々承知ですが、我々についてきていただけませんか。ミラヴェニアの新聞社にあなたが知っていることを話していただきたい」

彼女は私たち6人の顔を見回し、最後にアキラの瞳をじっと見つめた。

「わかりました。協力できることはなんでもやりましょう。私も隠遁生活に疲れていたのです」

その言葉を合図に6人で彼女を囲い込み、橋を渡り、魔法馬車に無事たどり着いた。

どうやら、アマデウスの手の者はまだ来ていないようだ。

ショパンは手綱を握り、手早く魔法を唱える。

馬車は町の入り口に向かって駆けだした。

計算ではペースだと6時間後には新聞社にたどり着く。

新聞社では、女性記者が夜番で泊まり込みをすると約束してくれた。

魔法で連絡を取ると、約束は守られているようだ。

新聞社は厳重な警備がなされているとはいえ、襲撃されないことを祈るばかりだ。

村の門をくぐり抜け、広大な平野に馬車は躍り出た。

ミラヴェニア公路と呼ばれる土嚢で舗装された道を行く。

このあたりは見晴らしが良いため、山賊の襲撃は難しい。

とはいえ、全く賊が襲う隙のない道が常時続くわけではない。

橋、山道、森。

要所要所で警戒を張らなくてはならなかった。
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