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第1章 〜初めての日本〜
(3)朝食は戦場
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僕の家は自慢じゃないが、案外大きい。
何故なら僕の父方の祖父が有名な建築家なので、孫が生まれた記念に家を建ててくれたのだ。
広いリビングに草刈りを怠ったために生え散らかしている広大な庭にお風呂が3つ。
トイレに関しては4つもある大サービス振りだ。
一体いつトイレを4台同時に使う時が来るのやら……
まぁ、そんなことはさておき、この広い我が家に今日新しい家族(仮)がやってきた。
シュケイツ国第一王位継承権を持っている王女、アネッサだ。
彼女は初めての日本の朝食、白米と納豆に驚きつつも、案外美味しそうに食べながら母と会話を交わしていた。
「あらあら、アネッサちゃんてば、綺麗な金髪だわね~」
「そ、そうかしら?私の住んでいた国では金髪が主流だったのですが…」
「住んでいた国?…アネッサちゃんもしかして日本の外からやってきたの?」
「え、えぇ、シュケイts…」
「ア、アメリカだよ母さんッッ!!!」
僕は咄嗟に嘘をついたが、危うくアネッサが異世界人だということがバレるところだった。
"国の名前ぐらい大丈夫でしょ?"と、ジェスチャーするアネッサの姿が横目にチラチラ映るが、僕は敢えてジェスチャーで応答せずに朝食を食べ始めた。
彼女はこの日本という国がネット社会だということを知らないのだ。
今の時代、国の名前なんざ調べればすぐにヒットする。
母さんがシュケイツという国を検索すれば、その国が存在しないことに気付き、余計な不信感を募らせただろう。
そのような不信感が募りに募ってしまった場合、アネッサが家から放り出される可能性がおおいに上がる。
まったく、危ないところだった。
「へぇー、アメリカねぇ、私日本の外に出たことないからとっても興味あるのよ~」
「そ、そんなことより母さん!話があるんだ…」
「あら、なぁに司ちゃん?」
「あの…そのアネッサを少しの間この家に泊めさせてくれない…かな?」
これは一か八かの賭けだった。
ここでこの賭けに失敗した場合、アネッサは明日から異国の地で彷徨うことになるだろう。
流石にそれは僕の転移の際の失敗で連れてきてしまった身としては申し訳ないと考えている。
その静寂は時間にして30秒ほどだったのだろうが、僕からしてみれば体感5分以上にも感じた。
その長い長い静寂を終わらせたのは、母ではなく父だった。
「ほう…?」
「泊めるのは構わんが、今この時期は6月。司含め、そこのアネッサちゃんも学園生活を満喫する時期だろう。
異国の地とて学校がないわけがない。その点に関して、どうするつもりだ?」
「ッッッ」
これに関しては準備不足だった。
まさか学校の話を持ち出して来るとは。
すまないアネッサ、明日から僕たちは路上生活だよ。
などと冗談でも笑えないことを考えていると、アネッサが突然喋り出した。
「こ、こちらの家でホームステイをさせてもらいながら、こちらの学園に通いたいと思っていますの!」
ほう、これは驚いた。異世界にもホームステイという言葉があるのだなと、正直な感想が漏れた。流石は教養がある王女だ。
そして、この一手は思ったよりも父を納得させ得る理由になったらしい。
「そうか、なるほど、それなら問題はないだろう。司の彼女だしな?」
賭けは成功だった。
「それじゃあ、この話はおしまい!みんなでご飯食べて、お父さんはちゃっちゃと仕事に行きなさい!」
父は"仕事'という単語を聞いた途端に、目に見える形でテンションが下がっていたが、そこはうちの家計のためにも頑張ってほしいところだ。
今はひとまずこれで一安心。学園への入学書類等の面倒臭いことはとりあえず置いといて、素直に喜ぶとしよう。
なんせ、路上生活を免れたのだから。
何故なら僕の父方の祖父が有名な建築家なので、孫が生まれた記念に家を建ててくれたのだ。
広いリビングに草刈りを怠ったために生え散らかしている広大な庭にお風呂が3つ。
トイレに関しては4つもある大サービス振りだ。
一体いつトイレを4台同時に使う時が来るのやら……
まぁ、そんなことはさておき、この広い我が家に今日新しい家族(仮)がやってきた。
シュケイツ国第一王位継承権を持っている王女、アネッサだ。
彼女は初めての日本の朝食、白米と納豆に驚きつつも、案外美味しそうに食べながら母と会話を交わしていた。
「あらあら、アネッサちゃんてば、綺麗な金髪だわね~」
「そ、そうかしら?私の住んでいた国では金髪が主流だったのですが…」
「住んでいた国?…アネッサちゃんもしかして日本の外からやってきたの?」
「え、えぇ、シュケイts…」
「ア、アメリカだよ母さんッッ!!!」
僕は咄嗟に嘘をついたが、危うくアネッサが異世界人だということがバレるところだった。
"国の名前ぐらい大丈夫でしょ?"と、ジェスチャーするアネッサの姿が横目にチラチラ映るが、僕は敢えてジェスチャーで応答せずに朝食を食べ始めた。
彼女はこの日本という国がネット社会だということを知らないのだ。
今の時代、国の名前なんざ調べればすぐにヒットする。
母さんがシュケイツという国を検索すれば、その国が存在しないことに気付き、余計な不信感を募らせただろう。
そのような不信感が募りに募ってしまった場合、アネッサが家から放り出される可能性がおおいに上がる。
まったく、危ないところだった。
「へぇー、アメリカねぇ、私日本の外に出たことないからとっても興味あるのよ~」
「そ、そんなことより母さん!話があるんだ…」
「あら、なぁに司ちゃん?」
「あの…そのアネッサを少しの間この家に泊めさせてくれない…かな?」
これは一か八かの賭けだった。
ここでこの賭けに失敗した場合、アネッサは明日から異国の地で彷徨うことになるだろう。
流石にそれは僕の転移の際の失敗で連れてきてしまった身としては申し訳ないと考えている。
その静寂は時間にして30秒ほどだったのだろうが、僕からしてみれば体感5分以上にも感じた。
その長い長い静寂を終わらせたのは、母ではなく父だった。
「ほう…?」
「泊めるのは構わんが、今この時期は6月。司含め、そこのアネッサちゃんも学園生活を満喫する時期だろう。
異国の地とて学校がないわけがない。その点に関して、どうするつもりだ?」
「ッッッ」
これに関しては準備不足だった。
まさか学校の話を持ち出して来るとは。
すまないアネッサ、明日から僕たちは路上生活だよ。
などと冗談でも笑えないことを考えていると、アネッサが突然喋り出した。
「こ、こちらの家でホームステイをさせてもらいながら、こちらの学園に通いたいと思っていますの!」
ほう、これは驚いた。異世界にもホームステイという言葉があるのだなと、正直な感想が漏れた。流石は教養がある王女だ。
そして、この一手は思ったよりも父を納得させ得る理由になったらしい。
「そうか、なるほど、それなら問題はないだろう。司の彼女だしな?」
賭けは成功だった。
「それじゃあ、この話はおしまい!みんなでご飯食べて、お父さんはちゃっちゃと仕事に行きなさい!」
父は"仕事'という単語を聞いた途端に、目に見える形でテンションが下がっていたが、そこはうちの家計のためにも頑張ってほしいところだ。
今はひとまずこれで一安心。学園への入学書類等の面倒臭いことはとりあえず置いといて、素直に喜ぶとしよう。
なんせ、路上生活を免れたのだから。
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