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30.ダブルデート~遊園地に到着~
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ここの遊園地は、巨大迷路や謎解きアドベンチャーなどキッズ用のアトラクションが充実しているせいか、幼児がいる家族連れが目立つ。
千紗たちもゲートを入って、どのアトラクションに向かうかを入り口でもらった園内マップを見て、回る順番を相談する。
大輝と並んで歩く蓮が、後ろを歩く千紗と悠里を振り返った。
「せっかく4人だしさ、4人乗りのアトラクションが2つあるから、それから順番に行こうぜ」
千紗がマップ上を指でたどる。
「これね。ウォーターライドとコースター。ここからだとコースターの方が近いね」
「じゃ、こっち」
ちょうど道が2股に分かれていた。大輝が右の道を指さす。
4人乗りコースターは乗り物自体が小さく小回りがきくせいで、急カーブや急な方向転換が多かった。
さんざん叫んだ千紗と悠里は声が枯れている。大輝はあきれたような目をしていた。
美人顔の冷たい目はことさらきつく感じる。
「1個目だよ。声枯らすの早すぎだろ」
蓮と2人で笑い声を立てている。
ウォーターライドでは前に座った大輝と蓮がクライマックスで水しぶきを浴び、顔と頭がずぶぬれになっていた。
1人は短髪のスポーツマン、1人はさらさら茶髪の美人顔、そんな整った顔立ちの2人が水にぬれている姿を見て、近くを通る女の子たちがそろって目をハートにさせていた。
髪についた水を飛ばすように頭を振った大輝がつぶやく。
「思ったより2つとも激しい乗り物だったから、次は乗り物以外にしてくれ」
濡れた服と髪を気にする男子2人を放って、千紗と悠里は園内マップをのぞきこむ。地図上のある場所に悠里がすらっとした人差し指をおく。
「期間限定でお化け屋敷やってる。ここ行こ」
千紗はマップから顔を上げて目を見開いて、大きく首を横に振る。
「他のとこにしよーよ。迷路とか謎解きとかあるよ」
ほんの一瞬だけ真顔になった悠里が、片方だけ口角を上げて千紗を見た。そして、横に並ぶように立っていた大輝と蓮のほうへ顔を向ける。
「次、お化け屋敷ね。蓮も南くんもOK?」
大輝はうなずき、蓮は右手の親指を立てた。
園内には軽やかな音楽が流れている。
心が弾むメロディを耳にしながら、千紗はお化け屋敷のことを考えて気分が沈んだ。足取りが重くなったのをさとられ、悠里にひきずられるようにお化け屋敷へと連れていかれた。
江戸時代をテーマにしたお化け屋敷のようで、入り口から井戸や穴の開いた襖がおどろおどろしく表現されている。
ここは1人もしくは2人でしか入れないらしい。
当然のように、蓮と悠里、大輝と千紗のペアに分かれる。どちらが入るか決めようと、蓮と大輝のじゃんけんが始まった。
結果、負けた大輝から行くことになり、ペアの千紗もついていく。
入り口を入ってすぐ、千紗は大輝の袖をつかんだ。
「ごめん。つかませて。絶対1人にしないでね。お願い」
すでに真っ暗で一歩先しか見えていない。頭の上から大輝の声が聞こえた。
「松村さん、怖いんだ」
「こ、怖くないよっ。苦手なだけ。暗いからはぐれたら困るでしょ」
「ははっ。苦手と怖いの違いってなんだよ。はぐれたら出口で待ち合わせすればいいよ」
わずかな光を頼りに、突き放すようなことを言う大輝をにらみつける。
肩を震わせているところをみると、からかっているだけのようだ。
「じゃ、手つなごっか」
大輝は返事を待たずに、自分の服の袖をつかんでいた千紗の手を取って握ってきた。千紗は手を引きかけたけれど、強く握られているのでゆだねることにした。すると、その手が少し緩み、指と指を絡める恋人つなぎに変えられていった。
千紗の心臓はギュッとつかまれたようになる。
千紗たちもゲートを入って、どのアトラクションに向かうかを入り口でもらった園内マップを見て、回る順番を相談する。
大輝と並んで歩く蓮が、後ろを歩く千紗と悠里を振り返った。
「せっかく4人だしさ、4人乗りのアトラクションが2つあるから、それから順番に行こうぜ」
千紗がマップ上を指でたどる。
「これね。ウォーターライドとコースター。ここからだとコースターの方が近いね」
「じゃ、こっち」
ちょうど道が2股に分かれていた。大輝が右の道を指さす。
4人乗りコースターは乗り物自体が小さく小回りがきくせいで、急カーブや急な方向転換が多かった。
さんざん叫んだ千紗と悠里は声が枯れている。大輝はあきれたような目をしていた。
美人顔の冷たい目はことさらきつく感じる。
「1個目だよ。声枯らすの早すぎだろ」
蓮と2人で笑い声を立てている。
ウォーターライドでは前に座った大輝と蓮がクライマックスで水しぶきを浴び、顔と頭がずぶぬれになっていた。
1人は短髪のスポーツマン、1人はさらさら茶髪の美人顔、そんな整った顔立ちの2人が水にぬれている姿を見て、近くを通る女の子たちがそろって目をハートにさせていた。
髪についた水を飛ばすように頭を振った大輝がつぶやく。
「思ったより2つとも激しい乗り物だったから、次は乗り物以外にしてくれ」
濡れた服と髪を気にする男子2人を放って、千紗と悠里は園内マップをのぞきこむ。地図上のある場所に悠里がすらっとした人差し指をおく。
「期間限定でお化け屋敷やってる。ここ行こ」
千紗はマップから顔を上げて目を見開いて、大きく首を横に振る。
「他のとこにしよーよ。迷路とか謎解きとかあるよ」
ほんの一瞬だけ真顔になった悠里が、片方だけ口角を上げて千紗を見た。そして、横に並ぶように立っていた大輝と蓮のほうへ顔を向ける。
「次、お化け屋敷ね。蓮も南くんもOK?」
大輝はうなずき、蓮は右手の親指を立てた。
園内には軽やかな音楽が流れている。
心が弾むメロディを耳にしながら、千紗はお化け屋敷のことを考えて気分が沈んだ。足取りが重くなったのをさとられ、悠里にひきずられるようにお化け屋敷へと連れていかれた。
江戸時代をテーマにしたお化け屋敷のようで、入り口から井戸や穴の開いた襖がおどろおどろしく表現されている。
ここは1人もしくは2人でしか入れないらしい。
当然のように、蓮と悠里、大輝と千紗のペアに分かれる。どちらが入るか決めようと、蓮と大輝のじゃんけんが始まった。
結果、負けた大輝から行くことになり、ペアの千紗もついていく。
入り口を入ってすぐ、千紗は大輝の袖をつかんだ。
「ごめん。つかませて。絶対1人にしないでね。お願い」
すでに真っ暗で一歩先しか見えていない。頭の上から大輝の声が聞こえた。
「松村さん、怖いんだ」
「こ、怖くないよっ。苦手なだけ。暗いからはぐれたら困るでしょ」
「ははっ。苦手と怖いの違いってなんだよ。はぐれたら出口で待ち合わせすればいいよ」
わずかな光を頼りに、突き放すようなことを言う大輝をにらみつける。
肩を震わせているところをみると、からかっているだけのようだ。
「じゃ、手つなごっか」
大輝は返事を待たずに、自分の服の袖をつかんでいた千紗の手を取って握ってきた。千紗は手を引きかけたけれど、強く握られているのでゆだねることにした。すると、その手が少し緩み、指と指を絡める恋人つなぎに変えられていった。
千紗の心臓はギュッとつかまれたようになる。
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