13 / 35
新婚生活編
【番外編】幼少期のはなし(攻め視点)
しおりを挟む
俺は瞬ちゃんが好きだ。
恋心をはっきりと自覚したのは高校の頃…だけど、物心ついた時から既に特別な存在になっていたと思う。
瞬ちゃんと俺は家が隣同士で幼稚園から高校までずっと一緒だった。
俺たち家族が瞬ちゃん家の側に引っ越して来た時、偶然お隣さんにも同い年の男の子が居るということで両親が意気投合したらしい。
それから家族ぐるみでの交流が始まり、お互い一人っ子だった俺と瞬ちゃんは兄弟のように育った。
俺の両親は仕事の都合で海外出張が多く、親戚も遠方に住んでいて頼れる身内もいなかったため自然と瞬ちゃんの家にお世話になる事が多かったのだ。
「けい、おれとけっこんしてくれ」
それは5歳くらいの時だっただろうか。
当時人気だった戦隊モノのワンシーンを真似するのが園児たちの間で流行っていた時期の事だ。
その時も俺と瞬ちゃんは一緒にごっこ遊びをしていた。
俺は女の子役で、瞬ちゃんが主人公の男の子役らしい。
「あのね、しゅんちゃん。いまのほーりつでは、おとこどうしではけっこんできないんだよ」
「もー!!けい!セリフがちがうだろ。やりなおし!」
当時の俺は同年代の子たちよりも大人びていて、なんとも可愛げのないクソガキだった。
その上マイペースでいつもぼんやりしていた為か、よく周りから浮いていた気がする。
でも別に1人遊びも嫌いじゃなかったし、他人とのコミュニケーションを億劫に感じていた俺はむしろ1人でいる方が気楽でいいとさえ思っていた。
「だってぼく、そのテレビみてないからわかんないんだもん」
「えー!?じゃあさ、きょううちにみにこいよ!ぜんぶろくがしてるから」
「うーん、べつにいいかなぁ……ぼくそういうのあんましすきじゃないし」
「なんでだよー!おもしろいのにー!!」
瞬ちゃんはそう言って大袈裟に項垂れた。
子供の頃の瞬ちゃんはちょっと強引なところもあったけれど、感情表現が豊かで素直なかわいい子だった。
今思えば、俺はそんな瞬ちゃんに構ってほしくてわざと天邪鬼な態度を取っていたのかもしれない。
「…ちがうはなしならいっしょにみてもいいよ」
「たとえばどういうやつ?」
「きょうりゅうとか」
「あ!それおもしろそうだな!!」
「うん。じゃあさ、ぼくんちにDVDあるから、きょうもっていくね」
こうやって俺が我を通すたびに、瞬ちゃんは嬉しそうに笑ってくれた。
側から見たら大人しい俺が活発な瞬ちゃんに振り回されているように見えただろう。
でも実際はその逆で。
瞬ちゃんは俺のくだらないわがままをいつも優しく受け入れてくれていたのだ。
「けいはどのきょうりゅうがすきなんだ」
「ぼくはね、トリケラトプスがすき」
「とりけ…?ふーん」
「しゅんちゃんは?」
「んー…おれはつよくてかっこいいやつがすきだな」
映画監督の父の影響で洋画に触れる機会が多かった俺は中でも恐竜映画を好んで観るようになっていた。
そしてそんな環境で育ったせいか、過激な描写への耐性もこの頃からすでに出来上がりつつあった気がする。
当然と言えば当然なのだが、当時の俺のお気に入り映画『ジュラシックパラダイス』は5歳児の瞬ちゃんには刺激が強すぎたようで…
彼は俺の手をぎゅっと握り、終始涙目になりながら画面を見つめていた。
「しゅんちゃん、こわい?」
「……ぜんぜん」
本当は怖かったくせに俺の前では平気そうなフリをする姿がいじらしくて子供心ながらに胸がきゅんとしたのを覚えている。
「あのねしゅんちゃん、あれはぜんぶつくりものだよ」
「え…そうなのか…?でもいっぱいちがでていたがってたじゃん」
「うん、それもえんぎっていうか…うそだから。こわがらなくてだいじょうぶだよ」
「…なーんだ!ま、まぁしってたけどな!」
「…うそつき」
「うっ、うるせー!くそ!あしたはおれのすきなやつみるからな!」
結局、次の日から瞬ちゃんの家に行くたびに戦隊モノをこれでもかと見せつけられる羽目になったのだが、そのお陰で2人の距離が縮まったのも事実だった。
「んー……」
明け方の淡い光がカーテンの隙間から差し込む部屋の中で目を覚ました俺はベッドに横たわったまま軽く伸びをした。
枕元に置かれた時計を見ると、時刻はまだ午前4時を回ったばかり。
7月になり日の出も早くなったとはいえ、まだ起きるには早すぎる時間だ。
(なんかすごく懐かしい夢を見たような気がする…)
ゆっくり寝返りを打つと隣ですやすやと眠る瞬ちゃんの顔が視界に入った。
普段はきりりとつり上がった眉も眠っている間は穏やかに下がっていて、どこか幼さを感じさせる。
「…しゅんちゃん」
瞬ちゃんの寝顔に向かって囁きかけてみる。
俺の声に反応するかのように微かに口元を緩ませた彼を見て思わず笑みが溢れた。
瞬ちゃんの無防備な姿を見る度に、何度愛しいと思ったことだろうか。
でも俺はただの幼馴染として側にいる事ができたらそれで良い。
だから瞬ちゃんはずっときらきらした瞬ちゃんのままで居て欲しい。
それが俺の一番の願いだった。
恋心をはっきりと自覚したのは高校の頃…だけど、物心ついた時から既に特別な存在になっていたと思う。
瞬ちゃんと俺は家が隣同士で幼稚園から高校までずっと一緒だった。
俺たち家族が瞬ちゃん家の側に引っ越して来た時、偶然お隣さんにも同い年の男の子が居るということで両親が意気投合したらしい。
それから家族ぐるみでの交流が始まり、お互い一人っ子だった俺と瞬ちゃんは兄弟のように育った。
俺の両親は仕事の都合で海外出張が多く、親戚も遠方に住んでいて頼れる身内もいなかったため自然と瞬ちゃんの家にお世話になる事が多かったのだ。
「けい、おれとけっこんしてくれ」
それは5歳くらいの時だっただろうか。
当時人気だった戦隊モノのワンシーンを真似するのが園児たちの間で流行っていた時期の事だ。
その時も俺と瞬ちゃんは一緒にごっこ遊びをしていた。
俺は女の子役で、瞬ちゃんが主人公の男の子役らしい。
「あのね、しゅんちゃん。いまのほーりつでは、おとこどうしではけっこんできないんだよ」
「もー!!けい!セリフがちがうだろ。やりなおし!」
当時の俺は同年代の子たちよりも大人びていて、なんとも可愛げのないクソガキだった。
その上マイペースでいつもぼんやりしていた為か、よく周りから浮いていた気がする。
でも別に1人遊びも嫌いじゃなかったし、他人とのコミュニケーションを億劫に感じていた俺はむしろ1人でいる方が気楽でいいとさえ思っていた。
「だってぼく、そのテレビみてないからわかんないんだもん」
「えー!?じゃあさ、きょううちにみにこいよ!ぜんぶろくがしてるから」
「うーん、べつにいいかなぁ……ぼくそういうのあんましすきじゃないし」
「なんでだよー!おもしろいのにー!!」
瞬ちゃんはそう言って大袈裟に項垂れた。
子供の頃の瞬ちゃんはちょっと強引なところもあったけれど、感情表現が豊かで素直なかわいい子だった。
今思えば、俺はそんな瞬ちゃんに構ってほしくてわざと天邪鬼な態度を取っていたのかもしれない。
「…ちがうはなしならいっしょにみてもいいよ」
「たとえばどういうやつ?」
「きょうりゅうとか」
「あ!それおもしろそうだな!!」
「うん。じゃあさ、ぼくんちにDVDあるから、きょうもっていくね」
こうやって俺が我を通すたびに、瞬ちゃんは嬉しそうに笑ってくれた。
側から見たら大人しい俺が活発な瞬ちゃんに振り回されているように見えただろう。
でも実際はその逆で。
瞬ちゃんは俺のくだらないわがままをいつも優しく受け入れてくれていたのだ。
「けいはどのきょうりゅうがすきなんだ」
「ぼくはね、トリケラトプスがすき」
「とりけ…?ふーん」
「しゅんちゃんは?」
「んー…おれはつよくてかっこいいやつがすきだな」
映画監督の父の影響で洋画に触れる機会が多かった俺は中でも恐竜映画を好んで観るようになっていた。
そしてそんな環境で育ったせいか、過激な描写への耐性もこの頃からすでに出来上がりつつあった気がする。
当然と言えば当然なのだが、当時の俺のお気に入り映画『ジュラシックパラダイス』は5歳児の瞬ちゃんには刺激が強すぎたようで…
彼は俺の手をぎゅっと握り、終始涙目になりながら画面を見つめていた。
「しゅんちゃん、こわい?」
「……ぜんぜん」
本当は怖かったくせに俺の前では平気そうなフリをする姿がいじらしくて子供心ながらに胸がきゅんとしたのを覚えている。
「あのねしゅんちゃん、あれはぜんぶつくりものだよ」
「え…そうなのか…?でもいっぱいちがでていたがってたじゃん」
「うん、それもえんぎっていうか…うそだから。こわがらなくてだいじょうぶだよ」
「…なーんだ!ま、まぁしってたけどな!」
「…うそつき」
「うっ、うるせー!くそ!あしたはおれのすきなやつみるからな!」
結局、次の日から瞬ちゃんの家に行くたびに戦隊モノをこれでもかと見せつけられる羽目になったのだが、そのお陰で2人の距離が縮まったのも事実だった。
「んー……」
明け方の淡い光がカーテンの隙間から差し込む部屋の中で目を覚ました俺はベッドに横たわったまま軽く伸びをした。
枕元に置かれた時計を見ると、時刻はまだ午前4時を回ったばかり。
7月になり日の出も早くなったとはいえ、まだ起きるには早すぎる時間だ。
(なんかすごく懐かしい夢を見たような気がする…)
ゆっくり寝返りを打つと隣ですやすやと眠る瞬ちゃんの顔が視界に入った。
普段はきりりとつり上がった眉も眠っている間は穏やかに下がっていて、どこか幼さを感じさせる。
「…しゅんちゃん」
瞬ちゃんの寝顔に向かって囁きかけてみる。
俺の声に反応するかのように微かに口元を緩ませた彼を見て思わず笑みが溢れた。
瞬ちゃんの無防備な姿を見る度に、何度愛しいと思ったことだろうか。
でも俺はただの幼馴染として側にいる事ができたらそれで良い。
だから瞬ちゃんはずっときらきらした瞬ちゃんのままで居て欲しい。
それが俺の一番の願いだった。
0
お気に入りに追加
204
あなたにおすすめの小説

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」


ガラス玉のように
イケのタコ
BL
クール美形×平凡
成績共に運動神経も平凡と、そつなくのびのびと暮らしていたスズ。そんな中突然、親の転勤が決まる。
親と一緒に外国に行くのか、それとも知人宅にで生活するのかを、どっちかを選択する事になったスズ。
とりあえず、お試しで一週間だけ知人宅にお邪魔する事になった。
圧倒されるような日本家屋に驚きつつ、なぜか知人宅には学校一番イケメンとらいわれる有名な三船がいた。
スズは三船とは会話をしたことがなく、気まずいながらも挨拶をする。しかし三船の方は傲慢な態度を取り印象は最悪。
ここで暮らして行けるのか。悩んでいると母の友人であり知人の、義宗に「三船は不器用だから長めに見てやって」と気長に判断してほしいと言われる。
三船に嫌われていては判断するもないと思うがとスズは思う。それでも優しい義宗が言った通りに気長がに気楽にしようと心がける。
しかし、スズが待ち受けているのは日常ではなく波乱。
三船との衝突。そして、この家の秘密と真実に立ち向かうことになるスズだった。
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
学園の天使は今日も嘘を吐く
まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」
家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。
絶対にお嫁さんにするから覚悟してろよ!!!
toki
BL
「ていうかちゃんと寝てなさい」
「すいません……」
ゆるふわ距離感バグ幼馴染の読み切りBLです♪
一応、有馬くんが攻めのつもりで書きましたが、お好きなように解釈していただいて大丈夫です。
作中の表現ではわかりづらいですが、有馬くんはけっこう見目が良いです。でもガチで桜田くんしか眼中にないので自分が目立っている自覚はまったくありません。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/110931919)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる