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第一分章:ベンガル湾の大和

第一次ベンガル湾海戦(弐)

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 前回より同時刻、ベンガル湾海中にてギュンター・プリーンやオットー・クレッチマーらをはじめとしたクリーグス・マリーネの誇る海狼たちは定時連絡の一環として連合艦隊旗艦、即ち大和の艦橋に逐一ロイヤルネイビーの東洋艦隊が存在する座標を送り続けていた。とはいえ、それが何故東洋艦隊に未だバレていないのかは定かでは無い。と、いうより戦後に日独が行った感想戦を行ってもなお謎が多かった。無理からぬことだ、何せNSDAPの技術力は世界一なのだから。
「クレッチマー隊に連絡、ビスマルクの仇を取る絶好の機だ」
 ビスマルク、即ちライン川演習作戦においてクリーグス・マリーネはロイヤルネイビーに対して最後の戦略的勝利を収めていた。ライン川演習作戦においてクリーグス・マリーネは事実上のビスマルク喪失と引き換えにロイヤルネイビーの本国艦隊に所属する総ての主力艦を撃沈、これにより植民地からロンドンへ航行する輸送船の安全を確保できなくなったイギリス王国は東洋艦隊に対して増援した艦艇の一部を返還するように要請。だが、その返還要請は一手遅かった……。
「ヤボール、しかしエニグマで宜しいので?」
 この当時、エニグマ暗号機は既に看過されているという想定で前線の兵は動いていた。とはいえ、ドイツ軍人は莫迦ではない。エニグマを二重に仕掛けたり、あるいは辞書型暗号に切り替えた上でエニグマを使うことによってイギリス軍を相変わらず翻弄し続けていた。それに……。
「いくら何でもこんな即興の暗号文まで連中が解析するわけ無いだろ、それに……」
「……なるほど、読まれたら読まれたで、日本軍が始末してくれますか」
 ……プリーンがクレッチマーに単純にエニグマ暗号機を仕掛けたものをわざとイギリス軍に傍受させることにより潜水艦、すなわちロイヤルネイビーが唯一畏れる艦種、に注意を向けさせることにより味方の作戦、すなわち夜間空襲、の成功率を高めることももくろんでいた。そして、ギュンターらは一隻の落伍艦も出すこと無く、そして味方の航空機にすら未帰還機を出すこと無く作戦を成功に導いた!
「そういうことだ」
 ……そして、第一次ベンガル湾海戦が始まった……。

 イギリス海軍東洋艦隊の旗艦直掩部隊に所属する駆逐艦、エキスプレスとクオリティが敵潜水艦部隊を見つけたのはカタリナ飛行艇が敵艦隊を見つけてから日付が変わる頃であった。そのまま夜が更けるのを待つばかりとなっていたはずだった東洋艦隊は、当然ながら鉄火場突入の報を聞き若干の動転と共に戦闘配置に入り始めた。だが、その「敵潜水艦」らしき艦影は一向に攻撃を行ってこない。奇妙に思うクオリティの水雷長であったが、エキスプレスが爆雷を投下し始めているのを確認し、遅れてはならんと急ぎ爆雷投下の準備を始めていた。だが……。
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