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ダス・ノイエ・ウェルト・プロイェクト
天高く馬肥ゆる秋
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「は?」
「技術的には、可能だと思います」
1960年、日本戦略技研にて、ある画期的な計画が発動されようとしていた。
その名も、「高天原計画」。その第一段階である月面開発、計画名は「輝夜計画」である。
「しかし、それをやって何か利益になるかね?」
「ええ。これはただの宇宙開発計画ではありません、あくまで宇宙開発計画は隠れ蓑。その実は……」
「?」
「……正気かね」
研究員の発言は、まあ要するに成層圏にまで届く大陸間弾道弾の開発であった。とはいえ、それは巧妙に隠す必要が存在した。故に。
「ええ、第一それを言い出したらアメリカとて自動ドアの技術を近接信管に応用したではありませんか」
「……わかった、好きにしたまえ。但し正規の予算は出さんぞ」
予算は出せない。まあつまりは、「日本が宇宙開発計画をしている」という一報自体もある程度ぼやかすために、あくまで「予算内のやりくり」によって弾道弾も開発しろというものであった。無論、それには理由がある。
「……では、どうやれば……」
「資金繰りの方法ぐらい自分で考えろ、儂は最新電算機の普及で忙しい」
1960年、日本戦略技研では主に二つの派閥に分かれていた。それは「電算機による世界支配」派と「宇宙開発による地球離脱」派である。今の所、宇宙開発計画は技術的には可能でも採算が取れないとして「電算機による世界支配」派が優勢であった。とはいえ、彼らの目的は共通であった。それは、「大陸間弾道弾」を実現するためのものである。宇宙開発は弾道弾の弾頭を作ることであるし、電算機は弾道弾の弾道計算にはうってつけである。
しかし、まもなくこの研究はある発表により重要度がひっくり返る。それは、高濃度の隕鉄の発見であった。俄然、鉄資源の獲得のために、宇宙派が優勢になるのだが、さすがに地球を離脱するほどの技術は今は未だ存在せず、せいぜい人工衛星をいくつか放つ位しかできなかった。今ひとつ時間と予算があれば、と当時の研究者は嘆いていたが、この人工衛星に時計機能を備えた電算機を始め、超高性能カメラやレーザー射出装置、其の他諸々を詰め込んだ結果、ドイツ第三帝国が知らぬ間に大日本帝国は宇宙へ駒を進め始めていた……。
そして、その年の春。ドイツ第三帝国の首都「ゲルマニア」で万国博覧会の開催が決定された。その万国博覧会ではなぜか、「芸術的価値のある物品を優先的に持ってくること」という規定が行われたらしく、直前になって日本は右往左往する羽目になった。
「技術的には、可能だと思います」
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