正しい歴史への直し方 =吾まだ死せず・改= ※現在、10万文字目指し増補改訂作業中!

華研えねこ

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天才の証明

天才の証明 =石原莞爾の場合=

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 昭和三十一年九月、大日本帝国は中東はパレスチナに大亜細亜連盟アラブ支部を設立、これにより遂に欧州の1000年侵略の計は遮断された。そして、アフリカこと始原大陸に於いてある象徴的な出来事が起きた。その、事件の名は――。

「それにしても、まさかここまで上手くいくとはな」
「?
 石原中将閣下はこの事態を予測していたのではないのでありますか?」
 従卒が問う。無理もあるまい、彼にとって仕えている石原莞爾という人間は軍務に限定しては完璧超人といっても良かった。
「阿呆抜かせ、流石にアフリカまで前線を移すことになるとは思ってなかったよ、そもそも、確かに有色人種すべてに参加権限はあると触れ歩いたが、俺だってここまで来るのは想定の範囲外だ。あと中将だの閣下だの、特に閣下はやめろ、呼び捨ては拙いが敬称つけるなら別に幕僚長とか、将軍とかでもいい。なんだったらさん程度でも構わんくらいだ」
 それは、予備役を経験した石原なりの処世術だった。彼は顕官なる地位に上った人間が驕ると碌な事は無いということを懸念しており、たとえ自身がそうだとしても意見を言いやすくするための敷居を低くする努力を怠ることはなかった。あるいは、それも高松宮がそうしたからという可能性も、あるにはあるのだが。
「はあ……」
「まあ、それはさておき、宮田、朝廷工作は上手くいっているか?」
「正直、厳しいですな、聖上が頷かない以上、相当な抵抗勢力が存在しているものかと」
 抵抗勢力。言うまでも無く、平和主義を装った反石原的な、即ち古典派的勢力である。それは石原に反発するというよりは、権力闘争によって自身の力量よりも高い地位を確立した結果、彼に放逐されることを恐れた人物達の抵抗と言っても良い。
「ったく……、堀、敵サンの配備はどうなっている」
「ははっ、現在まだまだ南北ともに白人勢力は強く、我々が上陸している現場以外では敵地と考えた方が良いでしょう」
 敵地。言うまでも無く、今だ植民地支配を続ける白人勢力、特に現地の支配的な地主となった土着勢力である。また、これには現地の黒人支配層も含まれていた。
「そうか。そいつぁ難儀だな……」
「石原幕僚長、現地の部族が挨拶に来たようです、如何なさいますか」
「ああ、通せ」

「この度はお目通り感謝致します」
「随分日本語慣れしてんなぁ」
「はい、日本軍を招く以上日本の本を読んで勉強致しました」
 日本軍を招く。外患に外の勢力を以て対抗させるのはあまりよろしくはない行動なのだが、事態が事態であり、勢力が勢力である。やむを得ない処置と言えた。
「そうか。
 で、だ。
 ……一応、マダガスカル島は橋頭堡として押さえる事に成功したが、現状南北は敵地、どう見る」
「そのことで御座いますが……」
 そして、その部族の長は恐るべき謀略を口にした。それは、現地の人間だからこそ見て取れる、外部の人間には思いつくことのない策であった。


「……なんだと?」
 石原は耳を疑った。戦略的にはともかく、戦術的にここまで精通している人間が現地にいること自体が予想外とも言えたからだ。
「準備は整っております、あとは後押しする武力集団に事欠く状態で御座いましたが……」
「……ふむ。堀、どう見るよ」
「は、現状成功の確率は決して高くはありませんが、決まれば相当な打撃を敵に与えるでしょう」
 そして、石原莞爾の腹は決まった。彼は常に大胆な戦争によってのみ、逆転が可能であるということを心情として装備していたのだから。
「……そうか。ならば、道は一つだな」
「と、仰いますと……」
「大胆、大胆、常に大胆。それこそが成功の秘訣だ。
 宮田、本国に通信、我此よりザイールにて作戦を決行する!!」
「は、ははっ!!」

 斯くて、石原莞爾率いる兵団はアメリカに引き続き、ヨーロッパの解体に挑む。世に言う、「テテの誓い」である。
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