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日はまた昇る
大東亜宣言
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「高松宮長官!」
「この度の決定は本当ですか!」
「ああ、詳しいことは兄上から聞いてくれ」
1956年改め昭和三十一年、大日本帝国は画期的な軍制改革に打って出た。かねてより考えられていたシビリアンコントロールを実施するために、インペリアルコントロールである現状から憲法を修正する形で志願兵制度に切り替えたのだ。また、それまでの軍隊経験者には恩給制度の改正を始めとした年金制度の抜本的改革を開始。さすがに即時福祉国家体制とまではいかなかったものの、それは従来の大日本帝国のイメージである軍政国家のイメージを塗り替えるに充分であった。とはいえ、原資は今は亡きアメリカ合衆国から回収した分はあるものの、人の意識はなかなか変えられないものである。この体制が本格的に発動するまでにはまだ数年の時を必要とした。
それはさておき、首都ネットワーク構想は予想以上に順調に進んだ。無理もあるまい、現地の者は協力的で、白人どもの横槍のない環境においては大日本帝国の構想通りの青写真を実行できた。では、ネットワークを敷いて大日本帝国は何がしたかったのか?あくまでネットワークは手段であって目的ではない。
皇民化教育か?有色人種による決起集会か?各国が動静を見守る中、大日本帝国が発動したネットワークによる第一次計画はある種順当なものであった。
「東條首相!」
「この度の会議の結果はいかがなものでしたか!」
「ああ、大丈夫だ。暗号文は「トウアノヒノデ」。会心の会議だったよ」
大東亜共栄圏の第一次会議は以下のようなものであった。
「以上を以て、大東亜宣言とする!」
1956年8月15日。大阪万博が万感の拍手で以て幕を閉じた一週間後にそれは宣言された。
即ち、戦前戦中の手形が空手形ではないという証明である。
開催地は、無論東亜の象徴である東京……ではなく古都京都……でもなく、なぜか神戸と横浜であった。
理由としては諸説あるが、公式発表では「白人共の亡霊に勝利を見せつけるため」といったものであった。
何はともあれ、まず第一段階として東アジアが解放された。そして、大東亜宣言はある行動の狼煙の役割をも果たしていた。
なぜなら……。
「尚、当宣言を以て、新渡戸稲造氏がかつて提案してアメリカ合衆国に却下された人種差別撤廃法案を実力行使するものとする!」
この大東亜宣言は全有色人種の解放のための号砲だったからだ。
無論、諸国は慌てた。特に慌てたのは言うまでもなくイギリスである。そしてフランスやオランダも完全に泡を食った形で日本大使館に抗議を行ったが、返ってきた答えは以下のようなものであった。
「だから、遅すぎると言ったのだ!今更当会議による決起を覆すことは天変地異が起こったとしてもあり得ない!」
ーー大東亜会議の後、欧州の記者団に囲まれた日本代表の言葉
「この度の決定は本当ですか!」
「ああ、詳しいことは兄上から聞いてくれ」
1956年改め昭和三十一年、大日本帝国は画期的な軍制改革に打って出た。かねてより考えられていたシビリアンコントロールを実施するために、インペリアルコントロールである現状から憲法を修正する形で志願兵制度に切り替えたのだ。また、それまでの軍隊経験者には恩給制度の改正を始めとした年金制度の抜本的改革を開始。さすがに即時福祉国家体制とまではいかなかったものの、それは従来の大日本帝国のイメージである軍政国家のイメージを塗り替えるに充分であった。とはいえ、原資は今は亡きアメリカ合衆国から回収した分はあるものの、人の意識はなかなか変えられないものである。この体制が本格的に発動するまでにはまだ数年の時を必要とした。
それはさておき、首都ネットワーク構想は予想以上に順調に進んだ。無理もあるまい、現地の者は協力的で、白人どもの横槍のない環境においては大日本帝国の構想通りの青写真を実行できた。では、ネットワークを敷いて大日本帝国は何がしたかったのか?あくまでネットワークは手段であって目的ではない。
皇民化教育か?有色人種による決起集会か?各国が動静を見守る中、大日本帝国が発動したネットワークによる第一次計画はある種順当なものであった。
「東條首相!」
「この度の会議の結果はいかがなものでしたか!」
「ああ、大丈夫だ。暗号文は「トウアノヒノデ」。会心の会議だったよ」
大東亜共栄圏の第一次会議は以下のようなものであった。
「以上を以て、大東亜宣言とする!」
1956年8月15日。大阪万博が万感の拍手で以て幕を閉じた一週間後にそれは宣言された。
即ち、戦前戦中の手形が空手形ではないという証明である。
開催地は、無論東亜の象徴である東京……ではなく古都京都……でもなく、なぜか神戸と横浜であった。
理由としては諸説あるが、公式発表では「白人共の亡霊に勝利を見せつけるため」といったものであった。
何はともあれ、まず第一段階として東アジアが解放された。そして、大東亜宣言はある行動の狼煙の役割をも果たしていた。
なぜなら……。
「尚、当宣言を以て、新渡戸稲造氏がかつて提案してアメリカ合衆国に却下された人種差別撤廃法案を実力行使するものとする!」
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無論、諸国は慌てた。特に慌てたのは言うまでもなくイギリスである。そしてフランスやオランダも完全に泡を食った形で日本大使館に抗議を行ったが、返ってきた答えは以下のようなものであった。
「だから、遅すぎると言ったのだ!今更当会議による決起を覆すことは天変地異が起こったとしてもあり得ない!」
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