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日はまた昇る

日はまた昇る

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 新京五輪が閉幕した後、早くも世界は動き始めていた。まず最初に動いたのは日本だった。とはいえ、そのコマンド自体はそこまで大胆なものではなかった。せいぜい、首都を東京に遷都する旨を追認する勅令を議会に通し、何の問題もなく認められたことぐらいであった。問題はその次である。東京をはじめとした大東亜共栄圏の国家の首都を試験的にあるネットワークで結んだのだ。まず満州帝国新京、続いて東南アジア、そしてあろうことか中東の首都はどこかと訪ねたらメッカかパレスチナに割れていたのでパレスチナを政治的首都、メッカを宗教的首都とすればどうかと言い出し、イスラム諸国家も別に異存はないのか快諾、どちらに敷けばいいのかということにはメッカは宗教的首都なのでパレスチナに敷いてはどうかという提案にも合理的であると快諾、事実上ではなく、正式にイスラム連邦の首都がパレスチナに決まった瞬間であった。それは、欧州諸国の逆鱗に触るに十分な事件であった。しかし、相手が相手である。強いものにはこびる性質を持つ白人種には、苦々しく思えども今は大日本帝国の靴を舐める以外に選択肢はなかった。
 一方で、その白人種の心情を知ってか知らずか、アメリカ大陸の大日本帝国領をにも副都を定め、外地の領土には都督として皇族を置き、天皇が外遊に行くという形で、外地と内地の平等性を図ったのは誰の指図かは明らかになることはなかったが、なんと、大東亜共栄圏諸国家がこぞって大日本帝国領にしてくれとせがみ始めたのだ。無論、大陸独占禁止法がある以上断らざるを得なかったのだが、無碍にもできない。そこで行われたのが、かつて白人種に邪魔されて実現しえなかったハワイ王室との婚姻をはじめとした外戚政治である。おまえはどこの藤原氏かとツッコまれそうではあるが、そもそも藤原氏は天皇家と最も近かった存在である、どちらかがどちらかの影響を受けていてもおかしくはなかった。
 一方で、白人種も黙って見ていたわけではなかった。銭束による戦争ならば資本主義発明者である白人種のお手の物である、そう思い経済戦争を仕掛けにかかった。しかし、それは大日本帝国による巧妙な罠であった。どういった罠かは次回以降に解説を譲るとして、結果として白人種は無駄に銭を消耗し、大航海時代以前の、ああつまりは元の木阿弥の生活状態に戻る羽目になる。無論、今すぐにではないが、徐々に削られていく銭束に、彼らは気づく由もなかった。
 そんな折、隣の大陸において漸く諸部族の領土争いが幕を閉じ始めた。この戦乱において直接的に銭を儲けたのは白人種だったが、彼らは同時に恨まれていた。一方で大日本帝国は銭束こそ得られなかったが、事実上の大陸中の信望を手にしていた。
 世界に太陽があまねく照らされる日は、すぐそこまで来ていた……。
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