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日はまた昇る

宴も酣となりまして

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 1956年春、朝鮮半島の暴動は支那大陸に飛び火した。民族自決を謳ったその理想は、図らずも世界の少数民族の勃興を意味した。一方で大日本帝国は支那における占領地を事実上放棄、諸民族の争いに巻き込まれて無為に兵を失うくらいならという決断であった。
 支那における少数民族の目標はただ一つ、今まで自分達を虐げてきた漢民族の首級であった。
 一方で大日本帝国および満州帝国は支那における諸民族の変には不介入を宣言、事実上漢民族は列強から見捨てられる形となった。欧州列強とてどちらに武器を売ったほうが儲かるかの皮算用をしている位であったから最早言うまでも無いだろう、中華民国は短期間で崩壊した。蒋介石は首級を晒され、九族は例によって虐殺された。そして、その支那諸民族の変に巻き込まれたのは朝鮮半島もそうであった。彼らは漢民族の手先となって自分達を虐げてきた「高麗棒子」が誰であるかをきちんと認識していた。朝鮮半島が日本領であればそのようなことも起きなかったろうが、彼らは大韓民国(くなんのみち)を自分達で選んだ。そして、隣国は出奔した国家を決して許すことはなかった。無理もあるまい、彼らは大日本帝国の皇帝を散々に侮辱し暗殺しようとしたのだから。

 支那・アフリカで諸民族の独立運動が巻き起こり、アラブでは諸侯が大日本帝国の手を取った頃、ある機関が動き出した。
 ……後に、北アメリカ情勢を最もややこしくする、マンハッタン問題である。


 1954年春季皇霊祭、杉原千畝率いる特務機関が極秘命令の下ある国家の設立を開始した。
 そこは、大戦争前までは最も経済的に栄えた町、マンハッタン島であった。
 そして彼らは、後世の人間に最も怨まれる決断をする。
 ……カナン共和国の建設である。
 俗称「イスラエル」として知られるそれは当初ユダヤ人難民を引き受けたはいいものの植民先に困っていた彼らに一筋の光明を与えた。そうだ、アメリカ大陸ならば今更どこまで混沌化しても問題はないじゃないか、と。
 無論、アメリカ大陸の大部分は諸部族同盟共有地となっていたのだが、転々とする島々は今だ列強の統治下にあった。そして、大日本帝国が選んだマンハッタン島にユダヤ人国家を建設するという行為は如何にもお人好しに見えた。おやおや、またあの帝国は人のために働いているよ、と。
 少なくとも、大日本帝国首脳部からしてみれば本当にお人好しな決断だったのだろう。少なくとも、害意があったわけではなく(そもそも害意があればわざわざ大東亜宣言など行わないだろう)民族自決の方向から自身の統治下にあった荒れ地を提供しただけにすぎたない。しかし、この決断は以後、アメリカ大陸の島嶼部を締める混沌たる情勢の元凶となる。
 そんな折の出来事である、今年のオリンピックはどこでやるかという会議が行われていた。
 大戦争の後のことであるため、政治的な駆け引きから東京二連続は拙いが、大日本帝国の影響下の国家でなければならないという前提の下、遂にあの国家が脚光を浴びた。
 ……後に、20世紀で最も成功したオリンピックとされる、満州帝国首都は新京におけるオリンピックである。
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