上 下
42 / 58
東京オリンピック

東京オリンピック

しおりを挟む
 1952年8月、東京オリンピック。

「閣下、こんな所にお出ででしたか」
「おお、どうだお前も一杯」
「全くもう、平和になったからってだらけすぎです」
「そうでもあるまい、隣のボックスを見てみろ」
「?
 ……あ、あれは!」
「しっ、折角のお忍びだ、声は掛けるなよ」
「……ははっ」

 そこに居るのは、昭和帝ご一行様であった。何せ軍人枠で弟である高松宮が出るのだ、家族総出で応援しに来たようだ。
 無論、周囲を固める観客は全て特務護衛官であった。とはいえ、基本的に大日本帝国は治安も良く、特に首都である東京は何せ江戸時代から続く肝煎りの首都である。事実上、彼らもかなり安堵していた。
 そして、高松宮の登場が始まった。

 結果として、高松宮はほぼ想定通りの金賞であった。まあ、当たり前と言えば当たり前なのだが、それでも大日本帝国の威信を絶やすなと配下が奮起した結果ですとコメントしたこともあって、士気はうなぎ登りであった。
 一方で、海軍部門の銀賞、即ち二位はなんとドイツ軍であった。大方の予想を裏切ったそれはしかし銅賞である三位の国家がさらに驚天動地の結果だったが故に詳しく分析されなかった。そう、その第三位の国家とは……。
「しかし、イタリアがああも果敢に戦うとはな」
「イギリスが入賞すらしないのは意外ですが、フィンランドあたりはまだわかるのですがね……」
「とはいえ、金賞は大方の予想通りか」
「戦法は予想を大きく裏切ってくれましたけどね」
「それはまあ、仕方あるまい」

なお、海軍部門の順位はこんな感じである。
1位:大日本帝国・高松宮宣仁チーム
2位:ドイツ第三帝国・ギュンター・プリーンチーム
3位:イタリア王国・ルイージ・デ・ラ・ベンネチーム
4位:大日本帝国・神重徳チーム
5位:フィンランド・マンネルハイムチーム
6位:ドイツ第三帝国・カール・デーニッツチーム
7位:大日本帝国・田中頼三チーム
8位:大日本帝国・黒島亀人チーム


 そして、東京でオリンピックが開かれると同時に大阪にて国際博覧会が開かれた。テーマとしては「知恵の勝利」。人類の叡智の結晶である医学薬学においての展示がメインとされた。病気に対する策が徐々に祈祷から投薬、そして怪我の治療なども麻酔がいつ出来たかなどを参加者がメインロードを歩いて行くにつれて医学の進歩を体感できる掲示になっていた。
そんな折である、ある会議が開かれたのは。

 通称、「淡路会談」と呼ばれたそれは、謂わば日本をはじめとした戦勝国による北アメリカ大陸分割の最終会議にして、ユーラシアの覇権を巡る新たなる血を流さない戦争の幕開けであった。アメリカ合衆国とソビエトロシアという二大巨悪が滅びたことを契機に、二度と人類社会を未曾有の大戦争に巻き込まないことを前提とした会議であり、最も争点となったのはどこの植民地を明け渡すかだ。
とはいえ、それは既定路線であり、まず大東亜共栄圏と称し大日本帝国が占領地の過半を解放したことから諸国も追随せざるを得ず、さらに大陸独占禁止法も相まってヨーロッパは植民地の過半を手放さざるを得なかった。が、そこからがコーカソイドの狡猾なところであった。植民地の独立に際し自国の有利な方向へ契約を進めようと企む。それに待ったを掛けたのが大日本帝国であった。大日本帝国としてはそれでは旧植民地人達が元の木阿弥であり、何のために血路を開いたのかわからないからだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

我らの輝かしきとき ~拝啓、坂の上から~

城闕崇華研究所(呼称は「えねこ」でヨロ
歴史・時代
講和内容の骨子は、以下の通りである。 一、日本の朝鮮半島に於ける優越権を認める。 二、日露両国の軍隊は、鉄道警備隊を除いて満州から撤退する。 三、ロシアは樺太を永久に日本へ譲渡する。 四、ロシアは東清鉄道の内、旅順-長春間の南満洲支線と、付属地の炭鉱の租借権を日本へ譲渡する。 五、ロシアは関東州(旅順・大連を含む遼東半島南端部)の租借権を日本へ譲渡する。 六、ロシアは沿海州沿岸の漁業権を日本人に与える。 そして、1907年7月30日のことである。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

江戸時代改装計画 

城闕崇華研究所(呼称は「えねこ」でヨロ
歴史・時代
皇紀2603年7月4日、大和甲板にて。皮肉にもアメリカが独立したとされる日にアメリカ史上最も屈辱的である条約は結ばれることになった。 「では大統領、この降伏文書にサインして貰いたい。まさかペリーを派遣した君等が嫌とは言うまいね?」  頭髪を全て刈り取った男が日本代表として流暢なキングズ・イングリッシュで話していた。後に「白人から世界を解放した男」として讃えられる有名人、石原莞爾だ。  ここはトラック、言うまでも無く日本の内南洋であり、停泊しているのは軍艦大和。その後部甲板でルーズベルトは憤死せんがばかりに震えていた。  (何故だ、どうしてこうなった……!!)  自問自答するも答えは出ず、一年以内には火刑に処される彼はその人生最期の一年を巧妙に憤死しないように体調を管理されながら過ごすことになる。  トラック講和条約と称される講和条約の内容は以下の通り。  ・アメリカ合衆国は満州国を承認  ・アメリカ合衆国は、ウェーキ島、グアム島、アリューシャン島、ハワイ諸島、ライン諸島を大日本帝国へ割譲  ・アメリカ合衆国はフィリピンの国際連盟委任独立準備政府設立の承認  ・アメリカ合衆国は大日本帝国に戦費賠償金300億ドルの支払い  ・アメリカ合衆国の軍備縮小  ・アメリカ合衆国の関税自主権の撤廃  ・アメリカ合衆国の移民法の撤廃  ・アメリカ合衆国首脳部及び戦争煽動者は国際裁判の判決に従うこと  確かに、多少は苛酷な内容であったが、「最も屈辱」とは少々大げさであろう。何せ、彼らの我々の世界に於ける悪行三昧に比べたら、この程度で済んだことに感謝するべきなのだから……。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

日は沈まず

ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。 また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。

御稜威の光  =天地に響け、無辜の咆吼=

城闕崇華研究所(呼称は「えねこ」でヨロ
歴史・時代
そこにある列強は、もはや列強ではなかった。大日本帝国という王道国家のみが覇権国など鼻で笑う王道を敷く形で存在し、多くの白人種はその罪を問われ、この世から放逐された。 いわゆる、「日月神判」である。 結果的にドイツ第三帝国やイタリア王国といった諸同盟国家――すなわち枢軸国欧州本部――の全てが、大日本帝国が戦勝国となる前に降伏してしまったから起きたことであるが、それは結果的に大日本帝国による平和――それはすなわち読者世界における偽りの差別撤廃ではなく、人種等の差別が本当に存在しない世界といえた――へ、すなわち白人種を断罪して世界を作り直す、否、世界を作り始める作業を完遂するために必須の条件であったと言える。 そして、大日本帝国はその作業を、決して覇権国などという驕慢な概念ではなく、王道を敷き、楽園を作り、五族協和の理念の元、本当に金城湯池をこの世に出現させるための、すなわち義務として行った。無論、その最大の障害は白人種と、それを支援していた亜細亜の裏切り者共であったが、それはもはや亡い。 人類史最大の総決算が終結した今、大日本帝国を筆頭国家とした金城湯池の遊星は遂に、その端緒に立った。 本日は、その「総決算」を大日本帝国が如何にして完遂し、諸民族に平和を振る舞ったかを記述したいと思う。 城闕崇華研究所所長

蒼海の碧血録

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年六月、ミッドウェー海戦において日本海軍は赤城、加賀、蒼龍を失うという大敗を喫した。  そして、その二ヶ月後の八月、アメリカ軍海兵隊が南太平洋ガダルカナル島へと上陸し、日米の新たな死闘の幕が切って落とされた。  熾烈なるガダルカナル攻防戦に、ついに日本海軍はある決断を下す。  戦艦大和。  日本海軍最強の戦艦が今、ガダルカナルへと向けて出撃する。  だが、対するアメリカ海軍もまたガダルカナルの日本軍飛行場を破壊すべく、最新鋭戦艦を出撃させていた。  ここに、ついに日米最強戦艦同士による砲撃戦の火蓋が切られることとなる。 (本作は「小説家になろう」様にて連載中の「蒼海決戦」シリーズを加筆修正したものです。予め、ご承知おき下さい。) ※表紙画像は、筆者が呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)にて撮影したものです。

武蔵要塞1945 ~ 戦艦武蔵あらため第34特別根拠地隊、沖縄の地で斯く戦えり

もろこし
歴史・時代
史実ではレイテ湾に向かう途上で沈んだ戦艦武蔵ですが、本作ではからくも生き残り、最終的に沖縄の海岸に座礁します。 海軍からは見捨てられた武蔵でしたが、戦力不足に悩む現地陸軍と手を握り沖縄防衛の中核となります。 無敵の要塞と化した武蔵は沖縄に来襲する連合軍を次々と撃破。その活躍は連合国の戦争計画を徐々に狂わせていきます。

処理中です...