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二度目の布哇

布哇よ再び(伍)

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 会議は踊り、そして続く。今度は国際犯罪についてだった。この件で最も割を食ったのはソ連である。ソ連は事実上、コミンテルン・ドクトリンを破棄せざるを得なかった。一説によると日本の海軍長官や総理大臣まで動かしたとされるのだからその悪辣さはいかばかりであったか。皮肉にもヒトラーの正しさはここで証明された。だが、ドイツ軍も意外なところで欠損を余儀なくされた。さすがに民族迫害を隠し通せるわけではなかった。だがそこに横槍が入った。イギリスである。イギリス曰く、「ホロコースト非難は大いに結構だがアメリカが日本人にした行為をユダヤ人が覆い隠そうとした事実を忘れてはならない。ユダヤ人が報復すべきは虐待したナチ政権であって現地のパレスチナ人や同じく迫害されていた日系人ではないはずだ」と如何にも見てきたようにすらすらと議題をそらし始めた。結果としてナチ政権はかなりのダメージと引き換えに生存圏(レイベンス・ラウム)を手に入れたのだからまあトントン、ドイツ全体で考えたら大きなプラスであった。ここでも、煮え湯を飲まされたのはアメリカであった。

 さらにアメリカの受難は続く。必死に日本の犯罪行為を洗い出しても一向に組織的なものが出てこないのだ。当たり前だ。日本軍の組織的犯罪なる譫妄は所詮はアメリカのチャイナ・ロビイが生み出したものだったからだ。後に宋美齢姉妹ら一味が突然の永久国外追放を受けるのはその八つ当たりではないかと噂されるほどであった。それどころか隠そうとした自分の国の国際犯罪や戦争犯罪がまるでどこかから見られているかのように次々と暴かれていくのだ。皮肉にも、裏で糸を引いていたのはソ連とイギリスであった。コミンテルンは再び国を売りさばいたのだ。これがアメリカのレッド・パージの切欠になるとは誰が否定できようか?

 そして11月がすぎ去る頃には遂に講和会議の内容は定まった。
ハワイ講和会議は以下のとおりである。
・アメリカは速やかに日系人への補填を開始する
・両陣営は速やかに戦争犯罪人を差し出す
・以後、特に肌の色による・・・・・・・・人種差別の絶対厳禁
・勿論、植民地支配など以ての外である
・植民地へは支配した苛烈さと年数を掛け合わせて補填を開始
・連合国は枢軸国へ賠償金100兆円(当時。平成年間では京に上る)をそれぞれの責任と加害に応じて負担及び賠償額を分配
・アラスカは日本に割譲、アメリカは海外の領土全域を破棄、両陣営はカナダ国境への軍隊駐留一切禁止
・ドイツ軍はエルザス・ロートリンゲン並びにルール工業地帯より西には軍隊を駐留させないこと
・イギリスは速やかに中近東の混乱を人道的な方法で・・・・・・・鎮める事、五年以内に出来ない場合は全領域を枢軸国にゆだねることとする
・ソビエト連邦は解体、ロシアの領国はノブゴロド時代の三領域までとする
 苛烈な判決であった。だが、連合国にはこれを受諾せざるを得ない状況にあった。そう、それは日本に亡命したある技術者集団の取り扱いについてである。
 彼らが考えていた必殺兵器、それを無作為にまで乱発できるほどの資源が存在するのは朝鮮半島の北部区域だけだったのだから。
 一応資源だけならばアメリカを始めとした各所にも存在したが、彼らは皮肉にも我々の世界とは異なる態度をとった。即ち彼らは自分の民族が同盟国の非難を受けてまで保護した国家を決して忘れはしなかった。
 後に彼が語るところによると「日本という国家こそが最後の人類の希望、それを守るためならばアメリカ相手でも容赦はしない」。
 アルバート・アインシュタイン。彼が世界最高の発電所を作り上げるまでにかかる時間はもう少し先になる。
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