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朱鷺は舞い降りた
朱鷺は舞い降りた(前)
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「上昇角度30度、周囲に敵軍見当たらず!」
「よし、晴嵐発艦!」
「ははっ、晴嵐用意!」
「こちら楠七号、周囲に敵影なし、これより攻撃用意に入る!」
「こちら浦北、他の機への連絡の用なし、健闘を祈る!」
日本軍は、一見往時の勢いを取り戻したようであった。事実、連合艦隊の規模の敵艦隊を鏖殺し、ビルマからイギリス軍を追放し、西太平洋は再び日本軍の手に帰した。
だが、統合軍令議会の考えは違った。「いずれ、国力差、いや、工場の物量差でこの勝ちはひっくり返される。」これが共通認識であった。
ならばどうするか。今のうちに不利でもいいから講和会議を開くか。だが、相手はハル・ノートを突きつけた。
一見手詰まりのように見えた。だが、ある将校が口を開いた。「何のために伊400型を作ったのですか」と。
そう、答えはそこにあった。
「やれやれ……。今の長官も山本提督に負けず劣らずの博打好きらしい……。」
「艦長、所定の位置まで到達いたしました。」
「よし、潜望鏡深度。敵はどうなっている?」
「……大丈夫です。どうやら来るならハワイかミッドウェーだと思っているようです。」
「……わかった。発艦準備!!」
そうである。その将校が提案したのは、かねてより計画されていた伊400型潜水艦及び晴嵐によるパナマ湾奇襲作戦である。
1944年9月、日曜の奇襲を警戒した米軍の裏をかき翌朝にガラパゴス諸島近海まで近寄った潜水艦部隊は作戦符牒を確認し晴嵐を発艦、ドイツ特製の誘導爆弾を以て米軍の急所、パナマはガトゥーンの制御装置並びにレーダーサイトに殺到、これを手早く撃滅した。
一方の米軍は完全に不意を突かれた。現在の主力艦隊は台湾沖に誘導されていたからだ。
その暗号文の巧みさたるや、わざわざ配置換えをした上に新型機械を導入してまで行われており到底一つの作戦の費用対効果とは合わないのではないかと論議されるほどであった。
悲報が阿鼻叫喚へと変わり始めたころに大西洋艦隊が漸く到着するもそのころには潜水艦部隊はあとかたもなく。挙句の果てには機雷によって空母「フランクリン」が轟沈するほどであった。
パナマ海峡を失った米海軍は急ぎ太平洋艦隊へ打電、「台湾をそのまま強襲し此方も不意をつけ」。
だが、台湾沖で待ち受けていたのは日本軍の罠であった。
台湾沖で起きた戦闘は次章で語るとして、ここではその経緯だけ語りたいと思う。
台湾沖に突入した太平洋艦隊第七艦隊は「消滅」した。「壊滅」でも「全滅」でもなく、「消滅」である。
そんなことを言うとタイムスリップでも起きたのかと思うかもしれないが、そうではない。台湾沖に突入した米海軍部隊は全て海の藻屑と消えうせたのである。
そんなバカなことがと嘲弄するは勝手だが、少なくとも生き残った兵員は語る、「あれこそが地獄だとしか思えない」と。
そもそもの問題として、当時の米海軍の訓練度不足があるのだが問題はそこではない。連合艦隊はパナマ海峡と台湾沖近辺以外に兵力を其の時貼り付けていなかったのである。
そうとも知らずにのこのことやってきた太平洋艦隊は自身が包囲されたことを悟った。だが手遅れである。
斯くしてさしもの米海軍といえども再起が困難な分の兵力を喪失した。講和を結ぶなら今であった。
だが、ルーズベルトは首を縦に振らなかった。たった四カ月でここまで状況が悪化するとは思っていなかったこともあるが、そもそも首を縦に振れなかったとする歴史学者も存在する。
戦後最大の謎とされている「世界共同計画(ニュー・ワールド・オーダー)」である。一説にはコミンテルンと深いかかわりがあったとされているが、コミンテルンは戦争犯罪として裁かれており多くは陰謀論として片付けられている。
第一大日本帝国は勝ったのだ、勝った以上は余裕を以て受け入れる必要が世界情勢では必要だった。少なくとも眼前の敵のように情け容赦のない鬼畜の所業は戦後のイメージ戦略のために避けるべきであった。
尤も、戦後の独立運動ラッシュでそれ以前にコーカソイドの罪が暴かれて報復戦争が始まりそうだったからそれを避けるために国際裁判が必要だったわけだが、それゆえに我々の世界での非人道的な茶番ではなく、きちんとした国際法並びに被害者救済を目的とした正々堂々たる裁判であったことは記されなければならない。
「よし、晴嵐発艦!」
「ははっ、晴嵐用意!」
「こちら楠七号、周囲に敵影なし、これより攻撃用意に入る!」
「こちら浦北、他の機への連絡の用なし、健闘を祈る!」
日本軍は、一見往時の勢いを取り戻したようであった。事実、連合艦隊の規模の敵艦隊を鏖殺し、ビルマからイギリス軍を追放し、西太平洋は再び日本軍の手に帰した。
だが、統合軍令議会の考えは違った。「いずれ、国力差、いや、工場の物量差でこの勝ちはひっくり返される。」これが共通認識であった。
ならばどうするか。今のうちに不利でもいいから講和会議を開くか。だが、相手はハル・ノートを突きつけた。
一見手詰まりのように見えた。だが、ある将校が口を開いた。「何のために伊400型を作ったのですか」と。
そう、答えはそこにあった。
「やれやれ……。今の長官も山本提督に負けず劣らずの博打好きらしい……。」
「艦長、所定の位置まで到達いたしました。」
「よし、潜望鏡深度。敵はどうなっている?」
「……大丈夫です。どうやら来るならハワイかミッドウェーだと思っているようです。」
「……わかった。発艦準備!!」
そうである。その将校が提案したのは、かねてより計画されていた伊400型潜水艦及び晴嵐によるパナマ湾奇襲作戦である。
1944年9月、日曜の奇襲を警戒した米軍の裏をかき翌朝にガラパゴス諸島近海まで近寄った潜水艦部隊は作戦符牒を確認し晴嵐を発艦、ドイツ特製の誘導爆弾を以て米軍の急所、パナマはガトゥーンの制御装置並びにレーダーサイトに殺到、これを手早く撃滅した。
一方の米軍は完全に不意を突かれた。現在の主力艦隊は台湾沖に誘導されていたからだ。
その暗号文の巧みさたるや、わざわざ配置換えをした上に新型機械を導入してまで行われており到底一つの作戦の費用対効果とは合わないのではないかと論議されるほどであった。
悲報が阿鼻叫喚へと変わり始めたころに大西洋艦隊が漸く到着するもそのころには潜水艦部隊はあとかたもなく。挙句の果てには機雷によって空母「フランクリン」が轟沈するほどであった。
パナマ海峡を失った米海軍は急ぎ太平洋艦隊へ打電、「台湾をそのまま強襲し此方も不意をつけ」。
だが、台湾沖で待ち受けていたのは日本軍の罠であった。
台湾沖で起きた戦闘は次章で語るとして、ここではその経緯だけ語りたいと思う。
台湾沖に突入した太平洋艦隊第七艦隊は「消滅」した。「壊滅」でも「全滅」でもなく、「消滅」である。
そんなことを言うとタイムスリップでも起きたのかと思うかもしれないが、そうではない。台湾沖に突入した米海軍部隊は全て海の藻屑と消えうせたのである。
そんなバカなことがと嘲弄するは勝手だが、少なくとも生き残った兵員は語る、「あれこそが地獄だとしか思えない」と。
そもそもの問題として、当時の米海軍の訓練度不足があるのだが問題はそこではない。連合艦隊はパナマ海峡と台湾沖近辺以外に兵力を其の時貼り付けていなかったのである。
そうとも知らずにのこのことやってきた太平洋艦隊は自身が包囲されたことを悟った。だが手遅れである。
斯くしてさしもの米海軍といえども再起が困難な分の兵力を喪失した。講和を結ぶなら今であった。
だが、ルーズベルトは首を縦に振らなかった。たった四カ月でここまで状況が悪化するとは思っていなかったこともあるが、そもそも首を縦に振れなかったとする歴史学者も存在する。
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尤も、戦後の独立運動ラッシュでそれ以前にコーカソイドの罪が暴かれて報復戦争が始まりそうだったからそれを避けるために国際裁判が必要だったわけだが、それゆえに我々の世界での非人道的な茶番ではなく、きちんとした国際法並びに被害者救済を目的とした正々堂々たる裁判であったことは記されなければならない。
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