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ソビエト、参戦(ここ以降、現在編集中)

北の宮様(中)

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「露助ども、所定の位置に接近にしつつあり!味方各所からは攻勢命令の意見具申が出ております!」
「……宜しく候……宜しく候……」
「閣下!!」
 叫ぶ従卒。無理もあるまい、かの「閣下」の玉音次第では味方をむざむざと見殺しにする危険性もあったり、あるいはそうで無いにしてもその戦局の行方次第ではせっかくの優勢が崩れ去る可能性を考えれば、つい急がせてしまうのも無理からぬ人間心理であった。一方で、その「閣下」は。
「わかっている、だから皆に落ち着けと言っている。四半刻、あと四半刻だけ耐えてくれ。四半刻以内に確実に解除命令を出す。もう少し、あと少しなんだ……」
 四半刻。俗に言う30分のことだが、この状況を決定打として扱うにはどうしても、30分前後の時間を必要とした。それは、ここまで敵軍を誘導していった結果、どうしても必要な30分であった。
「しっ、しかしっ……!!」
「大丈夫だ!!……信じてくれ。私が信じられないのならば「彼」を信じてくれ。この作戦如何で満州から露助を追いやれるか否かが決まる。……今は、ただ耐えてくれ……!!」
「……了解……!!」
 そして、眼前の「閣下」が呼んだ「彼」。その、人物こそがこの状況を作り上げたのだから当然であった。

 ……四半刻。永遠に長い刻のように見えたそれは、ソ連軍が慢心を取り戻すのに十分な時間であった。

「ふはっはっはははは、ヤポニェチめついに攻勢限界を悟って閉じこもったか!」
「連隊長、周囲には敵軍はいませんぜ!!あの町に行って掠奪しやしょう!」
「まあ焦るな焦るな、師団長閣下や戦線長官閣下が来るまでまあ待つんだ」
 中世同然の意識レベルである赤軍。彼らにとって、略奪とは臨時収入であり、特に共産主義国家は明文上給金の差がない、ことになっているのでその「臨時収入」とは好機に違いなかった。そして、彼らもまた白豪主義的な者の考え方をしていた。白豪主義者にとって自分以外は人間ではないという選民思想なのだから、それも当然といえた。

「あっ、あいつらっ……!!」
「こらえろ、こらえんか!」
 ロシア語がわかるのか、ある斥候が逸る思いのまま攻撃を行おうとしていた。必死にそれを止める上官。
「このままじゃ、町が……!」
 彼のロシア語の知識を統合すれば、眼前の赤軍部隊は町(満州里あたりだと思われる)で差別的思想のまま略奪を始めようとしていたのだからそれに怒りを覚えるのも当然といえた。
「閣下を信じろ!」
「……かしこまりました……」
  題名から察した方もいるかもしれないが、この「閣下」は梅津のことではない。彼は作戦総指揮官であるが、この作戦を練った人物は別に存在した。その人物は「閣下」、すなわち将官であった。今はそれだけ把握いただきたい。

「どうだね、侵略者の討伐と富裕層の解体は進んでいるかね?」
 侵略者はどちらだ、という読者諸兄諸姉の気持ちもあろうが、これが連中の本音である。それだけで、この白人種という連中が如何に歪んだ思考を持っているかわかろうという物だ。
「ええ、もちろんです。この陣地が頑強ながら、これさえ抜ければあとは「やわらかい下腹」、満州の平野は目前です!」
「よかろうよかろう。それでは、戦線全力を挙げてあの陣地を抜こうか」
 そして、ついに慢心という毒は戦線長官まで広まり、彼らは黄泉平坂を昇り始めた。

 運命の、そして約束の四半刻は、斯くて経過した。
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