正しい歴史への直し方 =吾まだ死せず・改= ※現在、10万文字目指し増補改訂作業中!

華研えねこ

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呂宋沖殲滅戦

呂宋沖殲滅戦(参)

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 チャールズ・イェーガーはまもなく生涯を終了するにもかかわらず、その最期の瞬間まで目の前で繰り広げられている光景が信じられなかった。
 紙飛行機ともライターとも揶揄されていたはずの敵機が、何度銃撃を浴びせてもまるで墜落しないからだ。
 此方は零戦の弱点をこれでもかと研究したF6Fヘルキャット、そして新鋭機のF4Uシコルスキーまで持ち出しているのに、どの敵機もまるでそれを知っているかのような動きをしている。否、それどころではない、自分を含め、数々のミートボールを食べてきたはずのエースがまるで手も無く撃墜されている。そして、彼もこの大海原で微塵に消えるのだが、その瞬間まで彼は謎の焦燥感と戦い続けていた。
 ……これこそが高松宮の百選技法の最高の戦果と言ってもよかった。
 合衆国軍の戦闘的合理性を逆手に取り、その合理性を分析した上で、さらに裏をかいた対合衆国用の戦法追求と同時に、現状の機械性能の限界以上の性能を引出し、さらにエンジン自体を多少スペックが悪くても安定する軽度空冷の重戦闘機に限定。
 後の統一戦闘機「晴天」の原型ともいうべき艦上戦闘機「昇風」のデビュー戦でもあった。
 当初、烈風の開発に統一化されており零戦の後継機がなかなか出現しないことに怒った高松宮は自力で図面を執筆、競作ではなくどれだけその図面に近づけるかを下令した。奇しくも、その図面は読者世界の震電とよく似たエンテ型のものであった……。
 結果、三菱でも中島でも川西でも川崎でもないある新興の企業が奇跡的に作成することに成功した。その名は「豊後警備」、後の「衛藤製作所」であった。
 その歴史は八幡製鉄所までさかのぼることができるが、如何せん企業としては新興であり、深かったのは歴史だけという体たらく。
 当初は歴戦の企業が失敗したからプロジェクトを中止するかどうか迷っているところに名乗りを上げ、ダメでもともとといった状態であったが、ある発想の転換が思わぬ結果をもたらした。
 それは、漆塗り技法であった。圧縮した材木のモノコック製法を基に、それだけでは本朝では湿気などのため変形してしまうが、それを素早く漆を塗って変形を防ぎ、同時にレーダーに反応しない奇跡の翼ができあがったのだ。
 その結果、豊後警備は一気に老舗を追い抜き海軍の航空機を一手に担う結果となった。
 そして、その結晶が「昇風」、すなわち今アメリカ軍の戦闘機をハエやカトンボのように撃墜している新型機であった。
 この「昇風」、カタログ・データとしてはそんなに強いものではない。しかし、戦闘機としての性能は最も日本人に合った性能であった。
 何よりもどのような町工場でも作ることができる簡便性、そして木製セミモノコック仕様で低質の石油でも稼働し、尚且つ操縦性が抜群というまさに今の戦況に即したものであった。
 ベテランは訝しむも、乗ってみてこの航空機は強いと確信したらしい。雛については言うまでもなく。また、整備士からの評判も上々であった。
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