14 / 58
呂宋沖殲滅戦
呂宋沖殲滅戦(弐)
しおりを挟む
チャールズ・イェーガーはまもなく生涯を終了するにもかかわらず、その最期の瞬間まで目の前で繰り広げられている光景が信じられなかった。
紙飛行機ともライターとも揶揄されていたはずの敵機が、何度銃撃を浴びせてもまるで墜落しないからだ。
此方は零戦の弱点をこれでもかと研究したF6F、そして新鋭機のF4Uまで持ち出しているのに、どの敵機もまるでそれを知っているかのような動きをしている。否、それどころではない、自分を含め、数々のミートボールを食べてきたはずのエースがまるで手も無く撃墜されている。そして、彼もこの大海原で微塵に消えるのだが、その瞬間まで彼は謎の焦燥感と戦い続けていた。
……これこそが高松宮の百選技法の最高の戦果と言ってもよかった。
合衆国軍の戦闘的合理性を逆手に取り、その合理性を分析した上で、さらに裏をかいた対合衆国用の戦法追求と同時に、現状の機械性能の限界以上の性能を引出し、さらにエンジン自体を多少スペックが悪くても安定する軽度空冷の重戦闘機に限定。
後の統一戦闘機「晴天」の原型ともいうべき艦上戦闘機「昇風」のデビュー戦でもあった。
当初、烈風の開発に統一化されており零戦の後継機がなかなか出現しないことに怒った高松宮は自力で図面を執筆、競作ではなくどれだけその図面に近づけるかを下令した。奇しくも、その図面は読者世界の震電とよく似たエンテ型のものであった……。
結果、三菱でも中島でも川西でも川崎でもないある新興の企業が奇跡的に作成することに成功した。その名は「豊後警備」、後の「衛藤製作所」であった。
その歴史は八幡製鉄所までさかのぼることができるが、如何せん企業としては新興であり、深かったのは歴史だけという体たらく。
当初は歴戦の企業が失敗したからプロジェクトを中止するかどうか迷っているところに名乗りを上げ、ダメでもともとといった状態であったが、ある発想の転換が思わぬ結果をもたらした。
それは、漆塗り技法であった。圧縮した材木のモノコック製法を基に、それだけでは本朝では湿気などのため変形してしまうが、それを素早く漆を塗って変形を防ぎ、同時にレーダーに反応しない奇跡の翼ができあがったのだ。
その結果、豊後警備は一気に老舗を追い抜き海軍の航空機を一手に担う結果となった。
そして、その結晶が「昇風」、すなわち今アメリカ軍の戦闘機をハエやカトンボのように撃墜している新型機であった。
この「昇風」、カタログ・データとしてはそんなに強いものではない。しかし、戦闘機としての性能は最も日本人に合った性能であった。
何よりもどのような町工場でも作ることができる簡便性、そして木製セミモノコック仕様で低質の石油でも稼働し、尚且つ操縦性が抜群というまさに今の戦況に即したものであった。
ベテランは訝しむも、乗ってみてこの航空機は強いと確信したらしい。雛については言うまでもなく。また、整備士からの評判も上々であった。
紙飛行機ともライターとも揶揄されていたはずの敵機が、何度銃撃を浴びせてもまるで墜落しないからだ。
此方は零戦の弱点をこれでもかと研究したF6F、そして新鋭機のF4Uまで持ち出しているのに、どの敵機もまるでそれを知っているかのような動きをしている。否、それどころではない、自分を含め、数々のミートボールを食べてきたはずのエースがまるで手も無く撃墜されている。そして、彼もこの大海原で微塵に消えるのだが、その瞬間まで彼は謎の焦燥感と戦い続けていた。
……これこそが高松宮の百選技法の最高の戦果と言ってもよかった。
合衆国軍の戦闘的合理性を逆手に取り、その合理性を分析した上で、さらに裏をかいた対合衆国用の戦法追求と同時に、現状の機械性能の限界以上の性能を引出し、さらにエンジン自体を多少スペックが悪くても安定する軽度空冷の重戦闘機に限定。
後の統一戦闘機「晴天」の原型ともいうべき艦上戦闘機「昇風」のデビュー戦でもあった。
当初、烈風の開発に統一化されており零戦の後継機がなかなか出現しないことに怒った高松宮は自力で図面を執筆、競作ではなくどれだけその図面に近づけるかを下令した。奇しくも、その図面は読者世界の震電とよく似たエンテ型のものであった……。
結果、三菱でも中島でも川西でも川崎でもないある新興の企業が奇跡的に作成することに成功した。その名は「豊後警備」、後の「衛藤製作所」であった。
その歴史は八幡製鉄所までさかのぼることができるが、如何せん企業としては新興であり、深かったのは歴史だけという体たらく。
当初は歴戦の企業が失敗したからプロジェクトを中止するかどうか迷っているところに名乗りを上げ、ダメでもともとといった状態であったが、ある発想の転換が思わぬ結果をもたらした。
それは、漆塗り技法であった。圧縮した材木のモノコック製法を基に、それだけでは本朝では湿気などのため変形してしまうが、それを素早く漆を塗って変形を防ぎ、同時にレーダーに反応しない奇跡の翼ができあがったのだ。
その結果、豊後警備は一気に老舗を追い抜き海軍の航空機を一手に担う結果となった。
そして、その結晶が「昇風」、すなわち今アメリカ軍の戦闘機をハエやカトンボのように撃墜している新型機であった。
この「昇風」、カタログ・データとしてはそんなに強いものではない。しかし、戦闘機としての性能は最も日本人に合った性能であった。
何よりもどのような町工場でも作ることができる簡便性、そして木製セミモノコック仕様で低質の石油でも稼働し、尚且つ操縦性が抜群というまさに今の戦況に即したものであった。
ベテランは訝しむも、乗ってみてこの航空機は強いと確信したらしい。雛については言うまでもなく。また、整備士からの評判も上々であった。
10
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
我らの輝かしきとき ~拝啓、坂の上から~
城闕崇華研究所(呼称は「えねこ」でヨロ
歴史・時代
講和内容の骨子は、以下の通りである。
一、日本の朝鮮半島に於ける優越権を認める。
二、日露両国の軍隊は、鉄道警備隊を除いて満州から撤退する。
三、ロシアは樺太を永久に日本へ譲渡する。
四、ロシアは東清鉄道の内、旅順-長春間の南満洲支線と、付属地の炭鉱の租借権を日本へ譲渡する。
五、ロシアは関東州(旅順・大連を含む遼東半島南端部)の租借権を日本へ譲渡する。
六、ロシアは沿海州沿岸の漁業権を日本人に与える。
そして、1907年7月30日のことである。
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
江戸時代改装計画
城闕崇華研究所(呼称は「えねこ」でヨロ
歴史・時代
皇紀2603年7月4日、大和甲板にて。皮肉にもアメリカが独立したとされる日にアメリカ史上最も屈辱的である条約は結ばれることになった。
「では大統領、この降伏文書にサインして貰いたい。まさかペリーを派遣した君等が嫌とは言うまいね?」
頭髪を全て刈り取った男が日本代表として流暢なキングズ・イングリッシュで話していた。後に「白人から世界を解放した男」として讃えられる有名人、石原莞爾だ。
ここはトラック、言うまでも無く日本の内南洋であり、停泊しているのは軍艦大和。その後部甲板でルーズベルトは憤死せんがばかりに震えていた。
(何故だ、どうしてこうなった……!!)
自問自答するも答えは出ず、一年以内には火刑に処される彼はその人生最期の一年を巧妙に憤死しないように体調を管理されながら過ごすことになる。
トラック講和条約と称される講和条約の内容は以下の通り。
・アメリカ合衆国は満州国を承認
・アメリカ合衆国は、ウェーキ島、グアム島、アリューシャン島、ハワイ諸島、ライン諸島を大日本帝国へ割譲
・アメリカ合衆国はフィリピンの国際連盟委任独立準備政府設立の承認
・アメリカ合衆国は大日本帝国に戦費賠償金300億ドルの支払い
・アメリカ合衆国の軍備縮小
・アメリカ合衆国の関税自主権の撤廃
・アメリカ合衆国の移民法の撤廃
・アメリカ合衆国首脳部及び戦争煽動者は国際裁判の判決に従うこと
確かに、多少は苛酷な内容であったが、「最も屈辱」とは少々大げさであろう。何せ、彼らの我々の世界に於ける悪行三昧に比べたら、この程度で済んだことに感謝するべきなのだから……。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
日は沈まず
ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。
また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。
御稜威の光 =天地に響け、無辜の咆吼=
城闕崇華研究所(呼称は「えねこ」でヨロ
歴史・時代
そこにある列強は、もはや列強ではなかった。大日本帝国という王道国家のみが覇権国など鼻で笑う王道を敷く形で存在し、多くの白人種はその罪を問われ、この世から放逐された。
いわゆる、「日月神判」である。
結果的にドイツ第三帝国やイタリア王国といった諸同盟国家――すなわち枢軸国欧州本部――の全てが、大日本帝国が戦勝国となる前に降伏してしまったから起きたことであるが、それは結果的に大日本帝国による平和――それはすなわち読者世界における偽りの差別撤廃ではなく、人種等の差別が本当に存在しない世界といえた――へ、すなわち白人種を断罪して世界を作り直す、否、世界を作り始める作業を完遂するために必須の条件であったと言える。
そして、大日本帝国はその作業を、決して覇権国などという驕慢な概念ではなく、王道を敷き、楽園を作り、五族協和の理念の元、本当に金城湯池をこの世に出現させるための、すなわち義務として行った。無論、その最大の障害は白人種と、それを支援していた亜細亜の裏切り者共であったが、それはもはや亡い。
人類史最大の総決算が終結した今、大日本帝国を筆頭国家とした金城湯池の遊星は遂に、その端緒に立った。
本日は、その「総決算」を大日本帝国が如何にして完遂し、諸民族に平和を振る舞ったかを記述したいと思う。
城闕崇華研究所所長
蒼海の碧血録
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年六月、ミッドウェー海戦において日本海軍は赤城、加賀、蒼龍を失うという大敗を喫した。
そして、その二ヶ月後の八月、アメリカ軍海兵隊が南太平洋ガダルカナル島へと上陸し、日米の新たな死闘の幕が切って落とされた。
熾烈なるガダルカナル攻防戦に、ついに日本海軍はある決断を下す。
戦艦大和。
日本海軍最強の戦艦が今、ガダルカナルへと向けて出撃する。
だが、対するアメリカ海軍もまたガダルカナルの日本軍飛行場を破壊すべく、最新鋭戦艦を出撃させていた。
ここに、ついに日米最強戦艦同士による砲撃戦の火蓋が切られることとなる。
(本作は「小説家になろう」様にて連載中の「蒼海決戦」シリーズを加筆修正したものです。予め、ご承知おき下さい。)
※表紙画像は、筆者が呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)にて撮影したものです。
武蔵要塞1945 ~ 戦艦武蔵あらため第34特別根拠地隊、沖縄の地で斯く戦えり
もろこし
歴史・時代
史実ではレイテ湾に向かう途上で沈んだ戦艦武蔵ですが、本作ではからくも生き残り、最終的に沖縄の海岸に座礁します。
海軍からは見捨てられた武蔵でしたが、戦力不足に悩む現地陸軍と手を握り沖縄防衛の中核となります。
無敵の要塞と化した武蔵は沖縄に来襲する連合軍を次々と撃破。その活躍は連合国の戦争計画を徐々に狂わせていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる