正しい歴史への直し方 =吾まだ死せず・改= ※現在、10万文字目指し増補改訂作業中!

華研えねこ

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ソビエト、参戦(ここ以降、現在編集中)

封印は解かれた、いよいよ始まる。(後)

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 1944年6月初頭、クレムリンにて極東ソ連軍の参謀将校がジュガシヴィッリと密会を行っていた。これだけ書くと政治的陰謀に聞こえるが、極東ソ連軍は精鋭である、純然たる会議であった。
「同志書記長、よろしいでしょうか」
「なんだね?」
「マカーキがマンシュウやサハリンからの侵攻を計画しております。具体的な報告は此方に」
 そこに記されていたのは、アメリカ合衆国に潜むソビエト連邦のスパイから送られた断片的な情報を基に推論と憶測の積み木細工で出来た何かであった。事実とは異なるそれは、而して論理的には正しいように見えた。何せ、石原莞爾は北進論者である、備えておくに超したことは無かった。
「……ふむ。その分だと腹案がありそうだが?」
「はい。おそらくはニーメツの直近の攻勢と同時に仕掛けてくるものと思われます。であれば、事前に三個軍も東方に派兵しておけばかたがつくかと。」
 ニーメツ、つまりはNSDAP、というよりはドイツのことなのだが、これはロシア語で「文盲」を意味する。ドイツ圏とロシア圏では言語体系が違うことによる蔑称である。尚、マカーキはロシア語で「猿」を意味する。
「……まあ、いいだろう。その代り指揮官は、できるな?」
「ダー、もとよりそのつもりでございました」
「よかろう、任せる」
 ……そして、ソビエト連邦は大事な精鋭をむざむざと東に固定されることとなる。これではあぶはち取らずだ。


 1944年6月上旬から中旬の間、極東ソ連軍本部にて。彼らは着々と皮算用を行っていた。無理もあるまい、彼ら自身の得た情報が正しければ、それは勝てる戦だから。……そう、その情報が正しければ。
「……さて、これで我々はなんの遠慮もなく満州を掠め取れる。他に案はあるかね?」
「ファシストどもの攻勢に関してですが……」
「なんだね?」
「イギリスより報告がありました、今年の6月22日に攻勢準備の動きがある、と」
 それは、硬直しつつある軍に特有な、作戦日時の縁起担ぎであった。無論、ドイツ軍はその日時に合わせて作戦準備をしていたため、それは正しい予測ではあったのだが。
「なれば、どうするかはわかっているな?」
「ははっ」
「……ふっふっふ。念願の不凍港と広大な資源……」



 そして、1944年初夏某日、南ビルマ戦線司令部にて。
「む。参謀本部から電文だと?」
 飯田祥次郎。牟田口とは違い、実力のみで中将になった人物だけあって、その実力は折り紙付きであった。タイ進駐やバー・モウ解放など数々の特殊作戦を成功させてきた逸材であったが、無論正規戦もお手の物であった。高松宮号令から石原莞爾指令によってビルマに復帰した彼は牟田口の解任から始まって今やビルマ全住人から「我らが父」と慕われるまでに至った。
「ははっ」
「…どれどれ……。
 …はははッ、なるほど。
 諸君、漸く我々は攻勢に出られるぞ!」
 その電文の内容はただ一つだけ、[封印は解かれた、いよいよ始まる。]であった。だが、その電文の意味するところは言うまでも無い、ビルマ方面における攻勢許可であった。彼らが耐えに耐え抜いた結果、なんと前線の軍兵の数が逆転していたのだ!
「おお!!」
「腕が鳴りますな!」
「如何様に?」
「なんだっていい、戦えればな」
 湧き上がる幕僚。ここ数ヶ月防衛作戦ばかりだったからか、彼らも鬱憤がたまっていたようだ。古今東西、軍人、否、民間企業でも攻勢作戦こそが華だと思われているのは、無理からぬことである。
「で、おそらくはどう鬪うかも書いてあるのでありましょうか?」
「ああ。ディマプールを重点的に叩け、あとは好きにしろとのことだ。
 それとだが、カルカッタに上陸する部隊がいるらしい。いずれ会えるだろう」
「作戦決行予定日は?」
「ああ。明後日だ。それでは二日間、じっくりと休め」
『ははっ!!』
 ……斯くて、ビルマの最も暑い一日が刻一刻と迫りつつあった……。
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