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呂宋沖殲滅戦
呂宋沖殲滅戦(壱)
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1944年8月のことである。
「次の戦場、ミッドウェーでもハワイでもない。言ったはずだ、俺は攻勢作戦を考えてはいない、と」
「しかし、危険すぎます!!」
「構わんさ。俺は部下の技量でできる範囲でしか作戦を立てないのでな」
「我々を侮らないでください! いくらなんでもレイテを使うのは……!」
レイテ。言うまでもなく、フィリピン沿岸である。目の前の長官はそこに敵をおびき寄せて覆滅するという作戦を打ち立てた。無論、失敗したら目も当てられない事態になるのは火を見るより明らかである。危険な賭けであった。が、高松宮には部下の技量はその程度にしか見えていなかった。無理もあるまい、基準が布哇海戦時のままであったら、彼らは如何にも未熟に見えたからだ。無論、兵器の質がそのままであるが故に、不足とみるべきところもあるのだが。
「無駄だ。人間のできることには限界がある。なぜ今まで負けたか、お前ならわかるだろう?」
「くっ……!」
山本親雄は、苛立った。よもやそのことまで目の前の殿下が知っているとは思わなかったからだ。少なくとも、簾の向こうで安穏としている人間の出る台詞ではなかった。
「まあなんにせよ開戦だ。陸軍がインドに突入するまでが勝負だぞ?」
「……ははっ!」
そして、作戦は動き出した。
次なる高松宮宣仁の作戦、それは何の衒いもなくいってしまえば海戦で釣り野伏せを再現することだった。
そろそろ三段戦法が通用しなくなっており、また航空隊員の技量も上がってきたための遅攻戦術だ。
VT信管やレーダーが通用しなくなった今現在、米軍が新たな兵器を考案しているのは明らかであり、圧倒的な科学技術を前にできることは限られていた。
それを逆手に取ったのが今回の戦法である。
今回の戦に於いて高松宮宣仁は日本で最も戦訓の多い時代、すなわち戦国時代のあらゆる書物を読み込み、黒島と神に申し渡した。
「俺よりできる作戦があったら言え。そしたらGFの座はすぐにでも開けてやる。」
二人が沈黙するまでにかかる時間はそう長くはなかった。明らかに先鋭的だったのだ。
かくて、次の戦いの火蓋が切られた。
1944年8月15日。レイテ沖にて大日本帝国は太平洋艦隊をおびき寄せるために露骨な作戦行動を開始した。一応、表向きの目標としてはポートモレスビー救援だったのだが、裏の目標は言うまでもない、太平洋艦隊の覆滅である。
「な、なんだこの艦隊の数は?!」
チャールズ・イエーガーは眼前に立ち塞がる連合艦隊の数に仰驚愕した。それは、明らかにミッドウェーやソロモンといった数々の海戦で喪失した艦艇を立て直したように見えたからだ。
「間違いねえ、隊長!!」
「あ、ああ。行くぞ!!」
イエーガーは意識を向き直した。確かに、眼前の艦隊を撃沈すればおそらく大日本帝国は再起不能になるはずだからだ。
一方、レイテ沖にほど近い停泊地では、醍醐忠重という提督が指揮を取っていた。無論、本来ならば高松宮本人が指揮を取るべき大作戦なのだが、表向きの作戦目標の都合上、高松宮は敢えて囮艦隊の指揮を執っていた。
「司令官!!来ます!!」
「ああ、構わんさ。覚悟はできている。それより、撒き餌の回収は済んだか?」
「ははっ。高松宮司令長官座乗艦「超甲巡」を初め総員轟沈艦なし!」
「よし来た!!」
「次の戦場、ミッドウェーでもハワイでもない。言ったはずだ、俺は攻勢作戦を考えてはいない、と」
「しかし、危険すぎます!!」
「構わんさ。俺は部下の技量でできる範囲でしか作戦を立てないのでな」
「我々を侮らないでください! いくらなんでもレイテを使うのは……!」
レイテ。言うまでもなく、フィリピン沿岸である。目の前の長官はそこに敵をおびき寄せて覆滅するという作戦を打ち立てた。無論、失敗したら目も当てられない事態になるのは火を見るより明らかである。危険な賭けであった。が、高松宮には部下の技量はその程度にしか見えていなかった。無理もあるまい、基準が布哇海戦時のままであったら、彼らは如何にも未熟に見えたからだ。無論、兵器の質がそのままであるが故に、不足とみるべきところもあるのだが。
「無駄だ。人間のできることには限界がある。なぜ今まで負けたか、お前ならわかるだろう?」
「くっ……!」
山本親雄は、苛立った。よもやそのことまで目の前の殿下が知っているとは思わなかったからだ。少なくとも、簾の向こうで安穏としている人間の出る台詞ではなかった。
「まあなんにせよ開戦だ。陸軍がインドに突入するまでが勝負だぞ?」
「……ははっ!」
そして、作戦は動き出した。
次なる高松宮宣仁の作戦、それは何の衒いもなくいってしまえば海戦で釣り野伏せを再現することだった。
そろそろ三段戦法が通用しなくなっており、また航空隊員の技量も上がってきたための遅攻戦術だ。
VT信管やレーダーが通用しなくなった今現在、米軍が新たな兵器を考案しているのは明らかであり、圧倒的な科学技術を前にできることは限られていた。
それを逆手に取ったのが今回の戦法である。
今回の戦に於いて高松宮宣仁は日本で最も戦訓の多い時代、すなわち戦国時代のあらゆる書物を読み込み、黒島と神に申し渡した。
「俺よりできる作戦があったら言え。そしたらGFの座はすぐにでも開けてやる。」
二人が沈黙するまでにかかる時間はそう長くはなかった。明らかに先鋭的だったのだ。
かくて、次の戦いの火蓋が切られた。
1944年8月15日。レイテ沖にて大日本帝国は太平洋艦隊をおびき寄せるために露骨な作戦行動を開始した。一応、表向きの目標としてはポートモレスビー救援だったのだが、裏の目標は言うまでもない、太平洋艦隊の覆滅である。
「な、なんだこの艦隊の数は?!」
チャールズ・イエーガーは眼前に立ち塞がる連合艦隊の数に仰驚愕した。それは、明らかにミッドウェーやソロモンといった数々の海戦で喪失した艦艇を立て直したように見えたからだ。
「間違いねえ、隊長!!」
「あ、ああ。行くぞ!!」
イエーガーは意識を向き直した。確かに、眼前の艦隊を撃沈すればおそらく大日本帝国は再起不能になるはずだからだ。
一方、レイテ沖にほど近い停泊地では、醍醐忠重という提督が指揮を取っていた。無論、本来ならば高松宮本人が指揮を取るべき大作戦なのだが、表向きの作戦目標の都合上、高松宮は敢えて囮艦隊の指揮を執っていた。
「司令官!!来ます!!」
「ああ、構わんさ。覚悟はできている。それより、撒き餌の回収は済んだか?」
「ははっ。高松宮司令長官座乗艦「超甲巡」を初め総員轟沈艦なし!」
「よし来た!!」
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