ESpash(エスパッシュ)

プロローグ

「おい、少年なにしてる？ 早くここから逃げるんだ。
早く、こっちだ。走れ、こい」


街の中にはサイレンが響き、逃げ惑う大勢の人々の姿があった。


少年は中年の男に手を引かれ、全力で走る。


「くそっ、こっちも人で埋め尽くされてるな……」


道は人で塞がれていく、この先の脱出ゲートまで急ぐ人々でごった返している。


「逃げるから……追われるんだよ……」


「あ？ 逃げなきゃ、やられるだけだろ……」


中年の男は息を切らし、目の前で起きている事に焦りと恐怖で顔が歪んでいる。


「なんで逃げるの……？ 
一緒に仲良くしたら良いんだよ……」


「あいつらは俺たち人間とは違うんだ。
あいつらは俺たちが作った玩具なんだよ。それが暴走したんだ。人間じゃないんだから、仲良くできる訳ないだろ。
殺すか殺されるかだ」


「人間じゃなくても……仲良くしてほしいのに。 
僕を助けてくれたじゃない……」


「お前……まさか……」


次の瞬間、男は口から血を吐いていた。
目は恐怖と驚きに満ちていた。


少年の手は中年男性の腹部を貫いていた。


少年はすぐに手を引き抜き、男はその場に倒れしばらくして息絶えた。


「……助けてくれたのに……」


少年は腕を血まみれにしたまま、来た道をゆっくりと戻っていった。


近場にいた人々から次々と悲鳴があがっていた。