7 / 10
自己紹介
しおりを挟む
私は心臓のトクトクが早まるのを感じた。
野良にあの絵を見せたのは単に見せたかったのではなく、この人なら私を分かってもらえるような気がしたのだ。
でも、同時に知られるのも怖かった。
「……すごいなぁ、なんでだろう……」
「え、嫌なら答えなくていい」
「なんで、わかったの? 誰も気づかなかったのに」
「いや、何となく。君の作品は他に見ていないし、何となくなんだ本当に」
「昔、子供の頃に北海道に住んでいたの。
家族4人で。父と母と兄と私。
でも、ある朝起きると母の姿はなくなっていた。母が一番好きだったのがあの場所。
よく私たちも連れて行ってもらった。
とても美しい場所。
それと同時に昔を思い出す場所。
それから父の仕事の関係で私たちは東京にやってきた。記憶を頼りに描いたのよ。
だから、あの絵は外には出せない作品」
「そうだったのか……辛い思いしたんだな。
美しい中に……なるほどな。
その絵を何故俺に見せたの?」
野良は強く抱きしめてくれた。
「あなたなら理解してくれる気がした。
あの絵を認めてくれるような……分からないけど。そして、褒めてくれた。
だけど、見破られた」
私の孤独をこの人に分かって欲しかったのかもしれない。
でも、知られる事を恐れてる、私は彼に何を求めていたのだろうか……。
「見破るほどではないよ。
お父さんもお兄さんも元気なの?」
「父は嫌な女と再婚して沖縄にいる。
兄はアメリカにいる。日本には時々帰って来るけど、向こうにいたいって」
「嫌な女って。性格が合わなかったのかな。
すごいな、お兄さんも。向こうが合ってたんだね」
「そう。なんて言うの、とにかく嫌な女って感じなの。嫌味っぽいし。
兄は……昔から自由な人よ。面白い人よ。
野良の家は?」
「うちは…母は未婚で俺を生み、大学まで行かせてもらった。卒業してやっと親孝行をと思ったら、急に病気で亡くなった。
俺は一人っ子だし、もう誰もいない。
あ、母が買った家はそのまま神奈川にある。
年に1度母の誕生日に帰るけど。家族はいないよ。お兄さんがいるっいいな、憧れるよ」
二人とも暑くなり、風呂の端に腰かけた。
「野良は帰る家があったんだね。
お母さん、立派な人だね。一人でって仕事してたら本当に大変……かっこいいなぁ」
「そうだな。男前だった。母と父を同時にこなしてくれた。
一生俺は勝てない存在だな」
「そういえば、野良の名前は?」
「あ。俺は野良木 康太(ノラキ コウタ)、28歳、
仕事はカメラマン、趣味はカメラ。
それが俺の全てかな。
宜しくお願いします」
「野良は野良木さんだったの!?」
「そう。でも、野良が自分らしい」
「ふふ。そっか。
私は生嶋 のこ(イクシマ ノコ)、25歳。
仕事は画家。趣味は盆栽とお酒。
宜しくお願いします」
「盆栽!?」
「ちょ、今笑ったでしょ。部屋の色んなとこにある盆栽気がつかなかったの?奥深いんだから」
「へ~渋いな。気づかなかった」
「ハマるから~今度語って教えてあげる」
「うーん、そうだなぁ。悪くはないね」
「よし、10秒肩まで浸かったら、お風呂出よ」
「おっけー。のこ、ご飯食べに行かない?」
「私作るよ?」
「大変じゃない?申し訳ないかなって」
「全然」
「本当に?よっしゃ。のこの手料理楽しみ」
「期待しないでよ。そんな料理上手くないよ」
「作ってくれるだけで嬉しいの。
手料理なんて本当に感動する」
野良にあの絵を見せたのは単に見せたかったのではなく、この人なら私を分かってもらえるような気がしたのだ。
でも、同時に知られるのも怖かった。
「……すごいなぁ、なんでだろう……」
「え、嫌なら答えなくていい」
「なんで、わかったの? 誰も気づかなかったのに」
「いや、何となく。君の作品は他に見ていないし、何となくなんだ本当に」
「昔、子供の頃に北海道に住んでいたの。
家族4人で。父と母と兄と私。
でも、ある朝起きると母の姿はなくなっていた。母が一番好きだったのがあの場所。
よく私たちも連れて行ってもらった。
とても美しい場所。
それと同時に昔を思い出す場所。
それから父の仕事の関係で私たちは東京にやってきた。記憶を頼りに描いたのよ。
だから、あの絵は外には出せない作品」
「そうだったのか……辛い思いしたんだな。
美しい中に……なるほどな。
その絵を何故俺に見せたの?」
野良は強く抱きしめてくれた。
「あなたなら理解してくれる気がした。
あの絵を認めてくれるような……分からないけど。そして、褒めてくれた。
だけど、見破られた」
私の孤独をこの人に分かって欲しかったのかもしれない。
でも、知られる事を恐れてる、私は彼に何を求めていたのだろうか……。
「見破るほどではないよ。
お父さんもお兄さんも元気なの?」
「父は嫌な女と再婚して沖縄にいる。
兄はアメリカにいる。日本には時々帰って来るけど、向こうにいたいって」
「嫌な女って。性格が合わなかったのかな。
すごいな、お兄さんも。向こうが合ってたんだね」
「そう。なんて言うの、とにかく嫌な女って感じなの。嫌味っぽいし。
兄は……昔から自由な人よ。面白い人よ。
野良の家は?」
「うちは…母は未婚で俺を生み、大学まで行かせてもらった。卒業してやっと親孝行をと思ったら、急に病気で亡くなった。
俺は一人っ子だし、もう誰もいない。
あ、母が買った家はそのまま神奈川にある。
年に1度母の誕生日に帰るけど。家族はいないよ。お兄さんがいるっいいな、憧れるよ」
二人とも暑くなり、風呂の端に腰かけた。
「野良は帰る家があったんだね。
お母さん、立派な人だね。一人でって仕事してたら本当に大変……かっこいいなぁ」
「そうだな。男前だった。母と父を同時にこなしてくれた。
一生俺は勝てない存在だな」
「そういえば、野良の名前は?」
「あ。俺は野良木 康太(ノラキ コウタ)、28歳、
仕事はカメラマン、趣味はカメラ。
それが俺の全てかな。
宜しくお願いします」
「野良は野良木さんだったの!?」
「そう。でも、野良が自分らしい」
「ふふ。そっか。
私は生嶋 のこ(イクシマ ノコ)、25歳。
仕事は画家。趣味は盆栽とお酒。
宜しくお願いします」
「盆栽!?」
「ちょ、今笑ったでしょ。部屋の色んなとこにある盆栽気がつかなかったの?奥深いんだから」
「へ~渋いな。気づかなかった」
「ハマるから~今度語って教えてあげる」
「うーん、そうだなぁ。悪くはないね」
「よし、10秒肩まで浸かったら、お風呂出よ」
「おっけー。のこ、ご飯食べに行かない?」
「私作るよ?」
「大変じゃない?申し訳ないかなって」
「全然」
「本当に?よっしゃ。のこの手料理楽しみ」
「期待しないでよ。そんな料理上手くないよ」
「作ってくれるだけで嬉しいの。
手料理なんて本当に感動する」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編
タニマリ
恋愛
野獣のような男と付き合い始めてから早5年。そんな彼からプロポーズをされ同棲生活を始めた。
私の仕事が忙しくて結婚式と入籍は保留になっていたのだが……
予定にはなかった大問題が起こってしまった。
本作品はシリーズの第二弾の作品ですが、この作品だけでもお読み頂けます。
15分あれば読めると思います。
この作品の続編あります♪
『ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編』
若妻シリーズ
笹椰かな
恋愛
とある事情により中年男性・飛龍(ひりゅう)の妻となった18歳の愛実(めぐみ)。
気の進まない結婚だったが、優しく接してくれる夫に愛実の気持ちは傾いていく。これはそんな二人の夜(または昼)の営みの話。
乳首責め/クリ責め/潮吹き
※表紙の作成/かんたん表紙メーカー様
※使用画像/SplitShire様
一夜限りのお相手は
栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる