チートスキルで世界を支配して暇になったので未来へタイムトラベルしたら、思っていたのと違った件

フゥル

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05.理想郷

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 案内人が表示した画面には、検索欄が表示されていた。音声入力で知っている呪文を片っ端から検索して見た。案内人は全ての呪文を習得していた。禁忌とされるものや神話級の呪文も含めて。
 もはや、圭太はどこからつっこむべきかわからなくなっていた。
 習得している技能もひどかった。<オールキュア:治癒可能な傷や疾病であれば毎秒自動で全快する>、<オムニマジック:常時、魔力容量・魔法出力・魔法制御・魔法維持――中略――他、魔力に関する能力を全て最大化する。さらに呪文の詠唱、動作、魔方陣、必要物質など魔法に関するあらゆる手順を省略する>、<鬼神:戦闘関連のステータスを全て最大値として扱う>、といったむちゃくちゃなスキルや魔法のオンパレードだった。国民全員がこれらを習得しているらしい。
 ドーム内限定とはいえ、これはあんまりすぎる。笑うしかない。あんなに苦労して倒した邪神ですら、この街の一般人には勝てないだろう。
「魔力のおかげで、電気もガスも必要ありません。おかげで物価も安い。ほとんどの病気は魔法で治療できるから、病死もまずない。おまけに体も全盛期のままです!」
「まさに理想郷だな」
 一見は。と、心の中で圭太は付け足した。
 公園で、自分よりも年下の男女が、子供を連れてかけまわっていた。道を挟んだ向かい側では、光の呪文で仮説したコートで、球技に燃える青年の一団。
 彼らに手をふりながら、案内人は言う。
「好きで、得意で、やりがいがいのある仕事だけをして、余暇は創造的な活動に集中できます。争いごともありません。本当に良い国ですよ」
「不便はないのか? ドームの外が気になるとか」
「まさか。ドームの外なんて想像するだけで恐ろしいです。ドームの外には十分な魔力がないので、この街の魔導器は全てつかえなくなります。しかも、ドームの中でずっと過ごしてきた私たちは、ドームから出てしまうと数時間と持たず、魔力枯渇で死んでしまいます。たとえ『命のカプセル』使って延命したとしても、何万といる化け物に襲われて終わりでしょう」
 しばらく進むと、街の雰囲気が、がらりと変わった。建物の材質がレンガから、石に変化し、窓の形状もアーチ型ではなく四角になった。
「ここら一帯は、一匹の化け物が侵入し壊滅。討伐後に建てなおされたのです」
 案内人は区画の境目に建った。古い区画の建物は、もはや原型を止めないほど破壊し尽くされていた。強力な呪詛で汚染されており、闇色に染まっている。
「魔法を無効化するオリハルコンで作られた建物がこんな……」
「悲劇を忘れないために、あえて残してあるんです。ドームの縁は、ゴーレムが守っています。戦闘用ゴーレムたちは私たちよりもはるかに強い。ですが、数年に一度は、魔導防壁とゴーレムの守りを化け物に突破され侵入されてしまうのです」
 新区画はしばらく行くと通行止めになっていた。まだ修復の最中らしく、除染用ゴーレムたちが動き回っていた。

 圭太はそのほかにも、さまざまな場所を見学した。
 30階建ての出生管理センターでは、立体映像の解説を聞きながら、出生魔術師が受精卵を遺伝子操作する様子を見学した。また、出産された子供が、ベルトコンベアに運ばれ、各種フィルタリング呪文を延々唱えられるさまや、睡眠中の赤子にひたすら呪文を唱えつづける母親の姿をながめた。
 学校では立体映像を用いて、敷地から一歩も外に出ず、遺跡の見学をする様子を見た。圭太的には『蟻の視点で森林探索――解説:ヴェル教授』の授業が好みだった。逆に一番不快だったのは、死に対する恐怖や不快感をなくすための条件付け授業である『臨終見学・臨終体験――楽しい老衰編』。
 公園や、体感映画館、遊園地へも訪れた。ただ、教会がないのが気になった。魔法と科学が絶対視されているらしく、宗教施設……というよりも、宗教や神という概念すら存在しないようだった。
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