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03.街並み
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入国ゲートを超えた先にあった町並みは、圭太のはるか上をいっていた。
大半の建物はレンガ造りだった。窓の形が、アーチ型なのが目につく。道幅は広く、一軒家が多い。
「木やセメントを使った建物は存在しません。環境破壊は重罪ですので」
「木造に見える建物も、魔法か……」
「さようで」
空を注意深く見ると、魔方陣が描かれていいるのがわかる。街全体をおおう、巨大なドーム状のようだが、大きすぎて端はみえない。
「ドームは外側から、魔導防壁と超巨大魔方陣の二層からなります。魔導防壁は原水爆や<ミーティア:流星>を合わせて100発同時に被弾しても容易に耐えうるほどの耐久力と、あらゆるものから街を隠す隠蔽の魔法がかかっています。超巨大魔方陣は各種データや気候をはじめ、我が国の生活基盤を制御しています」
「《叡智》か、あれは?」
「《叡智》は四百年前までは使われていました。が、低能過ぎて現在は使用されていません」
そんな、バカな。異世界転生時に手に入れたチートスキルが低能……。
常識がまるで通用しない。
ゴーレムの告げたとおり、外は適度な気温に、適度な湿度だった。空気の流れは完全に制御されており、人が住むのに最適な環境が維持されている。
「な、なにがなんだか」
住民は気軽に空を飛んだり、降りたりしていた。見上げれば、空中に描かれた光の道を、ワイバーンや高速飛行船が行き来している。
朝早いのにもかかわらず、多くの人が散歩にくりだしていた。
住民は全員小柄だ。鼻と指が細長い。目はエルフ以上に鋭く、表情が読みづらい。
「ゴブリン、ですか」
「そうです。この国は支配階級であるゴブリンと、労働階級の人間の二種類に分かれています」
労働階級ということは、奴隷か?
圭太は疑念を深めながらも、追求はしなかった。
「ここから先は彼女が案内してくれますよ」
紹介された案内人は、若くて人間の女性だった。両頬のそばかすと、赤いポニーテールが印象的だった。ゴブリンほどではないが小柄。丸っこく大きな瞳が、親しみやすさに一役買っていた。
目が眩むほどのまばゆい笑みを浮かべながら、案内人は両手をバッと広げた。
「『誰もがみんなのために働く』、『いなくていい人などいない』、『今は、誰もが幸せ』! ようこそ、魔導都市国家ネオカルマポリスへ!」
彼女は、心のそこから仕事を楽しんでいる。少なくとも、労働階級という暗い言葉からは想像できないほどの、ハッピーさだった。
「さあ、行きましょう、圭太さん!」
「何で僕の名前を知っているんだ?」
「<超巨大魔法陣>にアクセスすれば、誰でもわかりますよ?」
歩道では、イッヌをつれて散歩している婦人や、笑い合う若い四人組、乳母を押す若い母親などがいた。外見年齢は二十代半ばが多い。みな、心に余裕があるのか穏やかな表情。生産性を追求する都市によく見られる『何かにせき立てられている人』はいない。
「若い人ばかりですね」
「この街には老化という概念がないんです」
「なっ」
「私も、老化の実物を見れて、とてもうれしく思っていますよ」
「そ、そうか」
彼女の案内で、商店街を行く。
大半の建物はレンガ造りだった。窓の形が、アーチ型なのが目につく。道幅は広く、一軒家が多い。
「木やセメントを使った建物は存在しません。環境破壊は重罪ですので」
「木造に見える建物も、魔法か……」
「さようで」
空を注意深く見ると、魔方陣が描かれていいるのがわかる。街全体をおおう、巨大なドーム状のようだが、大きすぎて端はみえない。
「ドームは外側から、魔導防壁と超巨大魔方陣の二層からなります。魔導防壁は原水爆や<ミーティア:流星>を合わせて100発同時に被弾しても容易に耐えうるほどの耐久力と、あらゆるものから街を隠す隠蔽の魔法がかかっています。超巨大魔方陣は各種データや気候をはじめ、我が国の生活基盤を制御しています」
「《叡智》か、あれは?」
「《叡智》は四百年前までは使われていました。が、低能過ぎて現在は使用されていません」
そんな、バカな。異世界転生時に手に入れたチートスキルが低能……。
常識がまるで通用しない。
ゴーレムの告げたとおり、外は適度な気温に、適度な湿度だった。空気の流れは完全に制御されており、人が住むのに最適な環境が維持されている。
「な、なにがなんだか」
住民は気軽に空を飛んだり、降りたりしていた。見上げれば、空中に描かれた光の道を、ワイバーンや高速飛行船が行き来している。
朝早いのにもかかわらず、多くの人が散歩にくりだしていた。
住民は全員小柄だ。鼻と指が細長い。目はエルフ以上に鋭く、表情が読みづらい。
「ゴブリン、ですか」
「そうです。この国は支配階級であるゴブリンと、労働階級の人間の二種類に分かれています」
労働階級ということは、奴隷か?
圭太は疑念を深めながらも、追求はしなかった。
「ここから先は彼女が案内してくれますよ」
紹介された案内人は、若くて人間の女性だった。両頬のそばかすと、赤いポニーテールが印象的だった。ゴブリンほどではないが小柄。丸っこく大きな瞳が、親しみやすさに一役買っていた。
目が眩むほどのまばゆい笑みを浮かべながら、案内人は両手をバッと広げた。
「『誰もがみんなのために働く』、『いなくていい人などいない』、『今は、誰もが幸せ』! ようこそ、魔導都市国家ネオカルマポリスへ!」
彼女は、心のそこから仕事を楽しんでいる。少なくとも、労働階級という暗い言葉からは想像できないほどの、ハッピーさだった。
「さあ、行きましょう、圭太さん!」
「何で僕の名前を知っているんだ?」
「<超巨大魔法陣>にアクセスすれば、誰でもわかりますよ?」
歩道では、イッヌをつれて散歩している婦人や、笑い合う若い四人組、乳母を押す若い母親などがいた。外見年齢は二十代半ばが多い。みな、心に余裕があるのか穏やかな表情。生産性を追求する都市によく見られる『何かにせき立てられている人』はいない。
「若い人ばかりですね」
「この街には老化という概念がないんです」
「なっ」
「私も、老化の実物を見れて、とてもうれしく思っていますよ」
「そ、そうか」
彼女の案内で、商店街を行く。
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