誰にも読まれない小説だからこそ書ききりなさい

フゥル

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「小説」を友達に見せるのは、アリか。ナシか。

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 結論から言うと、それは友達次第だ。

●気になったので、友達に直接聞いてみた
 日没直後、銭湯へ向かう途中。バスの二人席にて、隣に座っている男友達に、私はぼやいた。
「私は謝らなければならないことがある。私は、今まで『小説』を読ませていた。でもそれは、相当迷惑な行為らしいことがわかった。場合によっては、友情に亀裂が入るレベルの無礼だそうだ。ごめん」
「どうして? べつにぼくはそう思わないけれど」
「新人賞の下読みをした小説家の話によると、素人小説の九割は、最後まで読むに耐えない駄作以下の作品だそうだ。今、小説投稿サイトのランキング上位を占めているのは、読み手至上主義と割り切り、書きたくもない『商品』を書いている人たちがほとんどだ。本屋に置いてある、世間一般では駄作とされている小説ですら、出版社と編集者がついて最低限の質を担保されているものだ。私の書いている小説は『駄作』以下なんだ。それを前提として、『素人小説』を君に見せるのは、失礼に当たるのではないかと思った」
 実際、知恵袋で「迷惑だ」とコメントしている人もいた。
「そうなの? ぼくは違うと思うけどな」
「マジ?」
 友達は「学校で習うレベルの文章作法を習得していることを前提として」と前置きしてから答えた。
「プロが書いた作品でも、受け手を選ぶ。百田尚樹は世間的には評価されているが、ぼくは百田尚樹の小説は楽しめなかった。逆に、まったくの素人の学生が書いた脚本でも、面白いものがたくさんあった。小説であれ、商品であれ、面白いか判断するのは読み手だよ。『商品』であるか否かと、君の文章をぼくに見せていいかどうかは、別だよ」
「別なのか? 同じだと思っていたけれど」
「マーケティングを意識した読者至上の『商品』をぼくに見せたするでしょ。でも、ぼくに『商品』が刺さるかどうかはわからない。逆も同じ。君が『刺さらないだろう』と思って見せた『小説』が、ぼくに刺さるかもしれない」
「そういうものなのか」
「君は『面白いかどうか』を小説を見せる前に判断してる。でも、実際に『面白いかどうか』を決めるのは、ぼくであって君じゃない。君の言う、『商品』じゃないから『絶対に面白くない』『だから見せてはいけない』理論は、成り立たない。だからぼくは、君が『商品』ではない『小説』を見せることを、迷惑だとは思わない」
「そうか。迷惑に思っていないことを聞けて、ホッとしたよ」
 彼の述べた言葉は、目から鱗だった。
 私は「小説」を友達に見せることに、否定的だった。しかし、肝心の読み手である友達が「べつにいいんじゃない?」と許してくれた。
 私は、自分の視野の狭さと、凝り固まった認知と、一瞬でも友達を疑ったことを恥じた。

●感じ方は読者それぞれ
 小説ノウハウ本を読みあさっていると、つい商業至上主義的な考えに陥りがちである。しかし、一つの考え方に過ぎない。読者は、必ずしもそう思っているとは限らない。
 素人小説を他者に見せるのはアリか? ナシか?
 それを決めるのは私達ではない、読者だ。
 他人の心を見ることが出来ない以上、我々に読者が何を考えているのかを知る術はない。私達にできることは、上記のエピソードのように、直接「読ませられるのは不快ではないか」と問いかける程度だろう。
 「不快である」と言われたら辞めればいい。
 「べつにいいよ」と言われたら、続ければいい。
 それだけのことだ。
 ただし、どちらにせよ友達にとって「素人小説」を読むのは、大変な労力である。外見上「何も気にしていない」といった態度をとっていても、必ず確認する必要がある。無理をしている可能性が捨てきれないからだ。くれぐれも、「これぐらいのことなら、友達は受け入れてくれるはずだ」と思い込み、無理をさせてはならない。
 平気かつごう慢に要求を押し通すことは、あなたと、あなたの小説の魅力を、大きく損なう。「気づいたら友達が消えていた」なんてことにならないよう、友達には最大限敬意を払おう。
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