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炎のごとく燃える君 4
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「それでね、リューちゃんにケーキあげたの」
「先生とフィー兄にも。みんなで食べたから美味しかった」
先程からアクティナはにこにこしながらレックスとシルバの話を聞いている。
リューイはアクティナが淹れた紅茶にホッと一息つきながら彼らの様子を見ていた。
たくさんのお菓子と紅茶でもてなされ、目を輝かせた弟たちが可愛くてならない。リューイはそっと端末で写真を残していた。ウィリディスに見せたら笑ってくれるだろうか。
「リュー兄ね、先生にお弁当作ってるよ」
「いつもおいしかったって話してるの知ってる。そのときのリューちゃんも嬉しそうなんだよ」
「レックス、シルバ、頼むからこれ以上俺の恥をさらさないでくれ」
「あらあら。かわいいじゃない。ほかにはなぁい?」
アクティナはずいぶんと慣れた様子の二人からリューイとウィリディスのことを根掘り葉掘り聞いている。
リューイはだんだんと恥ずかしくなっていった。うつむいて耳まで赤くなったリューイを面白そうにフィーディスは見つめていた。
「リュー、真っ赤。苺みたい」
「赤裸々に俺とせんせーのことをせんせーの身内に話されてみろよ…当事者なんだから恥ずかしくて死にそうだよ」
「ふふ、かわいい。クラルス、どうしたの」
クラルスは手にワッフルをもってきょろきょろとしていた。
膝のニウエがクラルスが動くたびに一緒に揺れる。
「誰か探しているの?息子くんならまだよ」
「りゅーちゃ…」
「俺ならここだよ。どうした、クラルス」
「りゅーちゃ、あのおひげの人どこ?」
「おひげの人??」
首をかしげるリューイだったが答えに先に行き当たったのはアクティナだった。
「あなたたちを迎えにいった執事ね。彼がどうかしたの」
「あのね、ニウエが喜んでるからお礼いうの」
「どうして、喜んでるんだ?」
「ひみつー」
「かわいいわねぇ。彼なら今別の仕事しているから夜にでも会うといいわ。それで間に合う?」
こくん、とクラルスはうなずいた。膝に乗せたニウエを見てはにこっとする。
リューイとフィーディスは何だろうかと顔を見合わせた。
ニウエに何かささやきかけたクラルスはぱっと顔を明るくした。まったくもって意味がわからないリューイとフィーディスだったがクラルスが笑顔ならいいかと思い直す。
「それでね、リュー兄は先生といつも一緒に寝てるよ」
「あら、そうなの。かわいいわねぇ」
「待って、レックス。さらりと嘘つかなくていいからな?」
「あら、嘘なの?」
「いや、嘘ではないけど、いつもじゃないし…」
「三日に一度だっけ。俺たちも先生と寝たいな」
「フィーディスのそれは絶対嘘だろ」
そんなはずないよ、とフィーディスは爽やかに告げる。
うそだな、と心のなかで即返答するも声には出さず、自分とウィリディスの話で盛り上がる三人を見つめた。
アクティナは時折手を伸ばしてレックスやシルバの口元を拭う。
くすぐったそうに笑う二人を見てはいたたまれなくなる。
「お母さんは俺には無理だなぁ」
「え、リューちゃん、誰かのお母さんになるの?!なんで?!」
リューイのつぶやきに敏感に反応したシルバの言葉にレックスも目を丸くしてリューイを見つめる。
リューイは慌てて手を振った。
「今すぐってわけじゃないぞ?俺だってすぐに子供ができるわけじゃないし…でも、アクティナさん見ていたら、俺はちゃんと子供をかわいがれるかなって不安になって」
「リューなら大丈夫だと思うよ。俺たちのこと、すごく大事にしてくれてるじゃん」
「それは兄弟だからだよ。子供だとやっぱり違うじゃん」
リューイは眉を下げた。不安がくすぶってしまう。
アクティナその様子を見てリューイに手を伸ばす。優しく頭に触れ、顔を上げたリューイに笑いかけた。
「Ωだから子供ができるけれど、お母さん、っていう存在に無理にならなくてもいいのよ」
「でも俺が産んだのなら俺がお母さんでしょう?」
そうねぇ、とアクティナはつぶやく。
単に子供を産んだ存在を母親とするのか、女親であることを母親とするのかは様々に意見があるだろうが自分が納得いかないのならば世間に合わせる必要性はないと思うのである。
一般大衆からすれば子供を産んだ存在が母親とされることがほとんどだから、男Ωであれば母親、お母さんと呼ばれるべきかもしれない。
「αやΩなんて性質の問題だから、自分の性別に合わせて子供に呼んでもらえばいいし、たとえ子供ができたとしても無理に母親であろうとする必要はないと思うわ」
「アクティナさんはどうだったんですか」
「私?私はねぇ、子供たちの可愛さにメロメロになっちゃって、自分すら守れないこの子たちを守るために母親になろうって自然と思ったわ。それまではリューイくんみたいに母親になれるかしらって不安だったのに」
うふふ、と笑うアクティナを見つめてそういうものなのだろうかとリューイは思う。
自分にはまだまだ自覚はできなさそうであった。いつの日か自分と番相手の間に命が宿ったときにアクティナとアカテスのような親になれるのだろうか。
自分の腹部に触れて視線を落とすリューイをフィーディスは言葉なく見つめていた。
「さて、おやつも食べたしみんなはまた遊ぶ?会わせたい子がいるのだけど」
「遊ぶ!」
「お庭見たい!」
「リューイくんたちは?」
「俺も一緒に行きます。ね、フィーディス」
「うん」
顔を輝かせる子供たちを優しく見つめるアクティナは彼らを中庭へと案内した。
リューイとウィリディスとともに外で食事をとった場所である。季節の花が咲き乱れる中庭はレックスたちから見ると小さな公園そのものであった。
遊具はないが彼らが走り回ったところでぶつかるような狭さではないし、足元も土であるから転んだところでけがの程度などたかがしれている。
花のいい香りを吸い込みつつアクティナを見た。
「会わせたい子って誰?」
「一緒に遊べる?」
「どんな子?」
「ふふ、会ってのお楽しみよ」
アクティナは軽くウィンクすると傍らに控えていたメイドに目配せした。
うなずいたメイドがそこを離れてしばらくすると鳴き声がした。
いったいなんなのだろうかと首を傾げたリューイの目に犬の姿が映る。
隣に立つクラルスの顔が一瞬で喜びに満ちた。
「ニウエだ」
「ほかにもいるよ。ぁ、馬だ!」
目の前の芝に走ってきたのはもさもさとした毛の犬だった。
愛嬌のある顔立ちをしている。中サイズから大サイズの犬種だろうか。
馬の方はそこに乗っていた騎手が降りリューイたちの目の前まで引いてくる。
「ニウエ?」
「かわいいでしょ。クラルスちゃんのその子を見て思い出したのよ。そばの牧場に似たような子がいたなぁって」
「リュー兄、俺本物の馬なんて始めてみた!かっこいい!」
「さわれる?触りたい!」
レックスとシルバは馬に夢中になる。
馬を引いてきた騎手にねだるような視線を向ければアクティナが笑う。
騎手に目配せすれば心得たらしい騎手は二人の前に膝をついた。
「馬は臆病です。私の言うことを聞いてくださるなら触れ合えますよ」
「できる」
「俺も!」
「でははしゃいでいると馬は怖がりますのでまずは深呼吸をして落ち着いて」
レックスとシルバの姿を見つつリューイは犬と見つめあって動かないクラルスへと視線を向けた。
フィーディスは口元が緩むのを隠しながらリューイと同じくクラルスを見つめている。
クラルスはふわふわもさもさの犬をきらきらとした目で見つめていた。その腕に抱えているニウエと同じく真っ白な犬である。
「ルーナよ。優しい女の子なの。でもちょっと元気がよすぎるときもあるからね。クラルスちゃん、触る?」
「いいの?」
「挨拶してからよ。いらっしゃい、ルーナ。クラルスちゃんとご挨拶して」
ワン、と元気よく鳴いたルーナは立ち上がればクラルスに近づきその場でくるくると回ってからお座りをする。
しっぽが揺れ、まっすぐにクラルスを見つめていた。
「クラルスちゃん、こんにちはってルーナが」
「こ、こんにちは……ルーナ」
小さく名前を呼べばルーナは再度吠える。それからクラルスにさらに近づいていけばその体をくんくんと嗅ぎだした。
クラルスは自分の体の周囲を回る少し大きな体にわずかに怯えを見せるも逃げようとはしなかった。
やがて自分の目の前で止まった白い体に手を伸ばす。
ふわ、と手が毛に沈んだ。優しくルーナの頭を撫でればルーナは気持ちいいのか目を細くする。
「俺も撫でていい?」
「ふぃーちゃ、犬好き?」
「かわいいから好きだよ」
フィーディスも静かに近づけばしゃがみこんでルーナと視線を合わせた。
クラルスに撫でられながらルーナはフィーディスをまっすぐに見つめる。
ゆっくりとフィーディスは手を差し出す。ルーナはフィーディスの手の匂いを嗅ぐように鼻を近づければ少し嗅いでから濡れた鼻先を押し付けた。
「ふふ、かわいい」
「ふぃーちゃ、かわいいねぇ」
「うん。ふさふさだしね」
リューイは二人の様子を見ながら端末のシャッターを切る。
笑顔のフィーディスの写真など珍しい。レックスとシルバは馬と仲良くなりかけているのか鼻先を丁寧に撫でていた。
リューイはにこにこしながら何度もシャッターを切っている。幸せな気持ちだった。
「リューイくんは触らないの?」
「俺こうやって写真撮りたい派です。かわいいし」
「ふふ、わかるわ。でもほら、ルーナが見てる」
そばにきたアクティナに言われてみればクラルスとフィーディスに撫でられて毛が乱れたルーナがリューイをじっと見つめている。
俺?と首を傾げつつ端末をポケットに入れてしゃがみこむ。
あまり犬と触れ合うことはないのだが見つめられては仕方がない。
「ルーナ…?」
小さく名前を呼べば耳が動く。立ち上がったルーナはゆっくりとリューイに近づいてくる。
ドキドキしながらどうしたいいのかとアクティナを見た瞬間ルーナは勢いよくリューイに飛びついてきた。
受け身をとっていなかったためリューイは盛大に背中から転んでルーナにのしかかられる。
ルーナは大きくしっぽを振りながらリューイの顔を舐めまわしていた。
「ぶっ、ま…ルーナ?!」
「ルーナはりゅーちゃが好き?」
「みたいだね。リュー、大丈夫」
「大丈夫、に見えるか。ルーナ、ストップ、ストップ。撫でてやるから待って…ぁ」
ルーナはリューイの制止も聞かずにぺろぺろとリューイの顔を舐める。
抵抗をあきらめたリューイはされるままになる。
「りゅーちゃ、ルーナに好きって言われてる」
「言われてるね」
近くから声がすればクラルスとフィーディスが見下ろしている。
助けてくれと視線で訴えれば、クラルスはしゃがみこんでルーナを撫でている。そうじゃない、と突っ込みながらも好かれて嫌な気持ちはしないためルーナの気が済むまで好きにさせていた。
やがてルーナが満足したのかリューイの上からどけばアクティナが濡れたタオルを持ってきた。リューイはそのタオルで顔を拭いた。
「ルーナが全身で愛情を示すなんて珍しいわね。それともクラルスちゃんが何か言ったのかしら?」
「クラルスが何か言ったのかもしれないですね。動物と気持ちが通じるし…走り回ってる、楽しそう」
クラルスはフィーディスを交えてルーナと走っていた。
ボールを投げてそれを取りに行くルーナを追いかける。クラルスの走る姿なんて初めて見たかもしれない。
レックスたちはどうしたろうかと振り向けば騎手に支えられてシルバが馬上にいた。
顔はこわばっているものの周囲を見回す余裕はあるようで馬からの眺めを楽しんでいるように見えた。
「さて、彼らのことは執事やメイドたちが見ているから私と少しお話ししない?」
「喜んで」
リューイはアクティナとともに庭が見渡せる場所に設置された椅子に腰を下ろした。
パラソルの下で直射日光は当たらない。
冷たい紅茶を持ってきてもらいそれを片手にリューイは庭を眺めた。
「アクティナさん、まずはプレゼントありがとうございました」
「届いた?よかったわ」
「すごくうれしかったです」
「あなたが読んでいたらしい話を聞いてね、さすがに新品は手に入れられなかったのだけど私がかつて読んでいたものであれば、と思ったのよ」
「完結巻を読めてなくて、この前読んだんですが全部また読み返したいなって思っていたところなので」
「よかったわぁ。あなたが何を喜んでくれるだろうかってアカテスと頭を悩ませた甲斐があったというものね」
アクティナは嬉しそうだった。
リューイも笑う。
「それで、息子君との進展も教えて」
そのまま流してしまおうと思ったのだができなかった。
紅茶を一口飲んだがすぐに口の中が乾く。
どこから話そうか。先ほど進展らしい進展の話はした。もっと詳細でなければだめだろうか。
「…首輪を外してくれって嫉妬したらしいせんせーに言われて…そこでせんせーの気持ちを知って…別のときに俺にとってのαはせんせーだけだって言ったらせんせーも、自分にとってのΩは俺だけだって…」
グラスを握る手がわずかに震えた。
はっきりと思い出すことができる。自分を見つめるウィリディスの熱を帯びた瞳とその唇からこぼれる声のトーンまで。
顔を赤くしたリューイは慌ててかぶりを振って考えを追い払った。
「誕生パーティをみんなが開いてくれた日、せんせーから万華鏡もらったんだ…せんせーにとっての俺は万華鏡みたいだってことで…それから」
脳裏にウィリディスが浮かぶ。そこには欲情などうかがえずただリューイへの思慕だけが浮かぶ瞳があった。
いつになく優しく微笑まれてリューイの心臓は止まってしまわないかと不安だった。
ウィリディスの口からこぼれる言葉の一つ一つを覚えておきたくて、耳に全神経を集中させていた。
「愛してるって…言ってくれたんだ。年齢が上だとかそういうのは関係なしに、俺もせんせーを愛してるからすごくうれしかった…うれしいのに、俺はせんせーの番にはなれないんだ」
「息子くんは望んだと思うけれど?」
「…守らなきゃいけない約束があったから。その約束が果たされるまでの間なら俺はせんせーと一緒にいるつもり」
「そう…番の契約は外から無理やりされるべきものではないわ。あなたと息子くんの問題だもの」
アクティナの言葉にリューイはのどからこみあげてくるものを押しとどめた。
アクティナにばれないようにと紅茶を一気に飲み干す。
「いつか離れ離れになるにしても、今という時間を大切にしてね。私もアカテスもこの屋敷の者たちもみんなあなたが好きよ。もちろん息子くんもね?だからあなたたちが傷つくのは悲しいわ。もしも、別れる時がきたとしても…後悔しないでね」
アクティナは優しくリューイのほほを撫でた。
うなずいたリューイのために新しい紅茶を用意させる。
しばらくリューイが紅茶を飲む様子を見つめていたがやがてメイドが一人アクティナに耳打ちをした。
あらそう、と答えたアクティナは車の用意をするように告げた。
「リューイくん、息子くんから連絡があって今研究がひと段落したからこちらに向かうそうよ」
「本当?」
先ほどまでの少し湿っぽい空気はいったいどこに消えたのだろうか。リューイはぱっと顔を明るくした。
都市部からここまでは一番早い乗り継ぎでも時間がかかる。到着は夕方ごろになるだろう。
「迎えに行く?」
「行きたいです」
「わかったわ。そうしたらまた駅に着く前に連絡入れるように伝えておかないとね。あなたのほうにも何か連絡きてるんじゃない?」
はっとすればリューイは自分の端末を開いた。
確かにウィリディスからメッセージが入っている。楽しそうだな、と返信があった。
リューイの嬉しそうな様子にアクティナは微笑んだ。
リューイが迎えに出るのなら子供たちが少しの間でも寂しがらないようにしなければなるまい。
次は何をして喜ばそうかと、いくつか立てている予定の中からピックアップを始めた。
「先生とフィー兄にも。みんなで食べたから美味しかった」
先程からアクティナはにこにこしながらレックスとシルバの話を聞いている。
リューイはアクティナが淹れた紅茶にホッと一息つきながら彼らの様子を見ていた。
たくさんのお菓子と紅茶でもてなされ、目を輝かせた弟たちが可愛くてならない。リューイはそっと端末で写真を残していた。ウィリディスに見せたら笑ってくれるだろうか。
「リュー兄ね、先生にお弁当作ってるよ」
「いつもおいしかったって話してるの知ってる。そのときのリューちゃんも嬉しそうなんだよ」
「レックス、シルバ、頼むからこれ以上俺の恥をさらさないでくれ」
「あらあら。かわいいじゃない。ほかにはなぁい?」
アクティナはずいぶんと慣れた様子の二人からリューイとウィリディスのことを根掘り葉掘り聞いている。
リューイはだんだんと恥ずかしくなっていった。うつむいて耳まで赤くなったリューイを面白そうにフィーディスは見つめていた。
「リュー、真っ赤。苺みたい」
「赤裸々に俺とせんせーのことをせんせーの身内に話されてみろよ…当事者なんだから恥ずかしくて死にそうだよ」
「ふふ、かわいい。クラルス、どうしたの」
クラルスは手にワッフルをもってきょろきょろとしていた。
膝のニウエがクラルスが動くたびに一緒に揺れる。
「誰か探しているの?息子くんならまだよ」
「りゅーちゃ…」
「俺ならここだよ。どうした、クラルス」
「りゅーちゃ、あのおひげの人どこ?」
「おひげの人??」
首をかしげるリューイだったが答えに先に行き当たったのはアクティナだった。
「あなたたちを迎えにいった執事ね。彼がどうかしたの」
「あのね、ニウエが喜んでるからお礼いうの」
「どうして、喜んでるんだ?」
「ひみつー」
「かわいいわねぇ。彼なら今別の仕事しているから夜にでも会うといいわ。それで間に合う?」
こくん、とクラルスはうなずいた。膝に乗せたニウエを見てはにこっとする。
リューイとフィーディスは何だろうかと顔を見合わせた。
ニウエに何かささやきかけたクラルスはぱっと顔を明るくした。まったくもって意味がわからないリューイとフィーディスだったがクラルスが笑顔ならいいかと思い直す。
「それでね、リュー兄は先生といつも一緒に寝てるよ」
「あら、そうなの。かわいいわねぇ」
「待って、レックス。さらりと嘘つかなくていいからな?」
「あら、嘘なの?」
「いや、嘘ではないけど、いつもじゃないし…」
「三日に一度だっけ。俺たちも先生と寝たいな」
「フィーディスのそれは絶対嘘だろ」
そんなはずないよ、とフィーディスは爽やかに告げる。
うそだな、と心のなかで即返答するも声には出さず、自分とウィリディスの話で盛り上がる三人を見つめた。
アクティナは時折手を伸ばしてレックスやシルバの口元を拭う。
くすぐったそうに笑う二人を見てはいたたまれなくなる。
「お母さんは俺には無理だなぁ」
「え、リューちゃん、誰かのお母さんになるの?!なんで?!」
リューイのつぶやきに敏感に反応したシルバの言葉にレックスも目を丸くしてリューイを見つめる。
リューイは慌てて手を振った。
「今すぐってわけじゃないぞ?俺だってすぐに子供ができるわけじゃないし…でも、アクティナさん見ていたら、俺はちゃんと子供をかわいがれるかなって不安になって」
「リューなら大丈夫だと思うよ。俺たちのこと、すごく大事にしてくれてるじゃん」
「それは兄弟だからだよ。子供だとやっぱり違うじゃん」
リューイは眉を下げた。不安がくすぶってしまう。
アクティナその様子を見てリューイに手を伸ばす。優しく頭に触れ、顔を上げたリューイに笑いかけた。
「Ωだから子供ができるけれど、お母さん、っていう存在に無理にならなくてもいいのよ」
「でも俺が産んだのなら俺がお母さんでしょう?」
そうねぇ、とアクティナはつぶやく。
単に子供を産んだ存在を母親とするのか、女親であることを母親とするのかは様々に意見があるだろうが自分が納得いかないのならば世間に合わせる必要性はないと思うのである。
一般大衆からすれば子供を産んだ存在が母親とされることがほとんどだから、男Ωであれば母親、お母さんと呼ばれるべきかもしれない。
「αやΩなんて性質の問題だから、自分の性別に合わせて子供に呼んでもらえばいいし、たとえ子供ができたとしても無理に母親であろうとする必要はないと思うわ」
「アクティナさんはどうだったんですか」
「私?私はねぇ、子供たちの可愛さにメロメロになっちゃって、自分すら守れないこの子たちを守るために母親になろうって自然と思ったわ。それまではリューイくんみたいに母親になれるかしらって不安だったのに」
うふふ、と笑うアクティナを見つめてそういうものなのだろうかとリューイは思う。
自分にはまだまだ自覚はできなさそうであった。いつの日か自分と番相手の間に命が宿ったときにアクティナとアカテスのような親になれるのだろうか。
自分の腹部に触れて視線を落とすリューイをフィーディスは言葉なく見つめていた。
「さて、おやつも食べたしみんなはまた遊ぶ?会わせたい子がいるのだけど」
「遊ぶ!」
「お庭見たい!」
「リューイくんたちは?」
「俺も一緒に行きます。ね、フィーディス」
「うん」
顔を輝かせる子供たちを優しく見つめるアクティナは彼らを中庭へと案内した。
リューイとウィリディスとともに外で食事をとった場所である。季節の花が咲き乱れる中庭はレックスたちから見ると小さな公園そのものであった。
遊具はないが彼らが走り回ったところでぶつかるような狭さではないし、足元も土であるから転んだところでけがの程度などたかがしれている。
花のいい香りを吸い込みつつアクティナを見た。
「会わせたい子って誰?」
「一緒に遊べる?」
「どんな子?」
「ふふ、会ってのお楽しみよ」
アクティナは軽くウィンクすると傍らに控えていたメイドに目配せした。
うなずいたメイドがそこを離れてしばらくすると鳴き声がした。
いったいなんなのだろうかと首を傾げたリューイの目に犬の姿が映る。
隣に立つクラルスの顔が一瞬で喜びに満ちた。
「ニウエだ」
「ほかにもいるよ。ぁ、馬だ!」
目の前の芝に走ってきたのはもさもさとした毛の犬だった。
愛嬌のある顔立ちをしている。中サイズから大サイズの犬種だろうか。
馬の方はそこに乗っていた騎手が降りリューイたちの目の前まで引いてくる。
「ニウエ?」
「かわいいでしょ。クラルスちゃんのその子を見て思い出したのよ。そばの牧場に似たような子がいたなぁって」
「リュー兄、俺本物の馬なんて始めてみた!かっこいい!」
「さわれる?触りたい!」
レックスとシルバは馬に夢中になる。
馬を引いてきた騎手にねだるような視線を向ければアクティナが笑う。
騎手に目配せすれば心得たらしい騎手は二人の前に膝をついた。
「馬は臆病です。私の言うことを聞いてくださるなら触れ合えますよ」
「できる」
「俺も!」
「でははしゃいでいると馬は怖がりますのでまずは深呼吸をして落ち着いて」
レックスとシルバの姿を見つつリューイは犬と見つめあって動かないクラルスへと視線を向けた。
フィーディスは口元が緩むのを隠しながらリューイと同じくクラルスを見つめている。
クラルスはふわふわもさもさの犬をきらきらとした目で見つめていた。その腕に抱えているニウエと同じく真っ白な犬である。
「ルーナよ。優しい女の子なの。でもちょっと元気がよすぎるときもあるからね。クラルスちゃん、触る?」
「いいの?」
「挨拶してからよ。いらっしゃい、ルーナ。クラルスちゃんとご挨拶して」
ワン、と元気よく鳴いたルーナは立ち上がればクラルスに近づきその場でくるくると回ってからお座りをする。
しっぽが揺れ、まっすぐにクラルスを見つめていた。
「クラルスちゃん、こんにちはってルーナが」
「こ、こんにちは……ルーナ」
小さく名前を呼べばルーナは再度吠える。それからクラルスにさらに近づいていけばその体をくんくんと嗅ぎだした。
クラルスは自分の体の周囲を回る少し大きな体にわずかに怯えを見せるも逃げようとはしなかった。
やがて自分の目の前で止まった白い体に手を伸ばす。
ふわ、と手が毛に沈んだ。優しくルーナの頭を撫でればルーナは気持ちいいのか目を細くする。
「俺も撫でていい?」
「ふぃーちゃ、犬好き?」
「かわいいから好きだよ」
フィーディスも静かに近づけばしゃがみこんでルーナと視線を合わせた。
クラルスに撫でられながらルーナはフィーディスをまっすぐに見つめる。
ゆっくりとフィーディスは手を差し出す。ルーナはフィーディスの手の匂いを嗅ぐように鼻を近づければ少し嗅いでから濡れた鼻先を押し付けた。
「ふふ、かわいい」
「ふぃーちゃ、かわいいねぇ」
「うん。ふさふさだしね」
リューイは二人の様子を見ながら端末のシャッターを切る。
笑顔のフィーディスの写真など珍しい。レックスとシルバは馬と仲良くなりかけているのか鼻先を丁寧に撫でていた。
リューイはにこにこしながら何度もシャッターを切っている。幸せな気持ちだった。
「リューイくんは触らないの?」
「俺こうやって写真撮りたい派です。かわいいし」
「ふふ、わかるわ。でもほら、ルーナが見てる」
そばにきたアクティナに言われてみればクラルスとフィーディスに撫でられて毛が乱れたルーナがリューイをじっと見つめている。
俺?と首を傾げつつ端末をポケットに入れてしゃがみこむ。
あまり犬と触れ合うことはないのだが見つめられては仕方がない。
「ルーナ…?」
小さく名前を呼べば耳が動く。立ち上がったルーナはゆっくりとリューイに近づいてくる。
ドキドキしながらどうしたいいのかとアクティナを見た瞬間ルーナは勢いよくリューイに飛びついてきた。
受け身をとっていなかったためリューイは盛大に背中から転んでルーナにのしかかられる。
ルーナは大きくしっぽを振りながらリューイの顔を舐めまわしていた。
「ぶっ、ま…ルーナ?!」
「ルーナはりゅーちゃが好き?」
「みたいだね。リュー、大丈夫」
「大丈夫、に見えるか。ルーナ、ストップ、ストップ。撫でてやるから待って…ぁ」
ルーナはリューイの制止も聞かずにぺろぺろとリューイの顔を舐める。
抵抗をあきらめたリューイはされるままになる。
「りゅーちゃ、ルーナに好きって言われてる」
「言われてるね」
近くから声がすればクラルスとフィーディスが見下ろしている。
助けてくれと視線で訴えれば、クラルスはしゃがみこんでルーナを撫でている。そうじゃない、と突っ込みながらも好かれて嫌な気持ちはしないためルーナの気が済むまで好きにさせていた。
やがてルーナが満足したのかリューイの上からどけばアクティナが濡れたタオルを持ってきた。リューイはそのタオルで顔を拭いた。
「ルーナが全身で愛情を示すなんて珍しいわね。それともクラルスちゃんが何か言ったのかしら?」
「クラルスが何か言ったのかもしれないですね。動物と気持ちが通じるし…走り回ってる、楽しそう」
クラルスはフィーディスを交えてルーナと走っていた。
ボールを投げてそれを取りに行くルーナを追いかける。クラルスの走る姿なんて初めて見たかもしれない。
レックスたちはどうしたろうかと振り向けば騎手に支えられてシルバが馬上にいた。
顔はこわばっているものの周囲を見回す余裕はあるようで馬からの眺めを楽しんでいるように見えた。
「さて、彼らのことは執事やメイドたちが見ているから私と少しお話ししない?」
「喜んで」
リューイはアクティナとともに庭が見渡せる場所に設置された椅子に腰を下ろした。
パラソルの下で直射日光は当たらない。
冷たい紅茶を持ってきてもらいそれを片手にリューイは庭を眺めた。
「アクティナさん、まずはプレゼントありがとうございました」
「届いた?よかったわ」
「すごくうれしかったです」
「あなたが読んでいたらしい話を聞いてね、さすがに新品は手に入れられなかったのだけど私がかつて読んでいたものであれば、と思ったのよ」
「完結巻を読めてなくて、この前読んだんですが全部また読み返したいなって思っていたところなので」
「よかったわぁ。あなたが何を喜んでくれるだろうかってアカテスと頭を悩ませた甲斐があったというものね」
アクティナは嬉しそうだった。
リューイも笑う。
「それで、息子君との進展も教えて」
そのまま流してしまおうと思ったのだができなかった。
紅茶を一口飲んだがすぐに口の中が乾く。
どこから話そうか。先ほど進展らしい進展の話はした。もっと詳細でなければだめだろうか。
「…首輪を外してくれって嫉妬したらしいせんせーに言われて…そこでせんせーの気持ちを知って…別のときに俺にとってのαはせんせーだけだって言ったらせんせーも、自分にとってのΩは俺だけだって…」
グラスを握る手がわずかに震えた。
はっきりと思い出すことができる。自分を見つめるウィリディスの熱を帯びた瞳とその唇からこぼれる声のトーンまで。
顔を赤くしたリューイは慌ててかぶりを振って考えを追い払った。
「誕生パーティをみんなが開いてくれた日、せんせーから万華鏡もらったんだ…せんせーにとっての俺は万華鏡みたいだってことで…それから」
脳裏にウィリディスが浮かぶ。そこには欲情などうかがえずただリューイへの思慕だけが浮かぶ瞳があった。
いつになく優しく微笑まれてリューイの心臓は止まってしまわないかと不安だった。
ウィリディスの口からこぼれる言葉の一つ一つを覚えておきたくて、耳に全神経を集中させていた。
「愛してるって…言ってくれたんだ。年齢が上だとかそういうのは関係なしに、俺もせんせーを愛してるからすごくうれしかった…うれしいのに、俺はせんせーの番にはなれないんだ」
「息子くんは望んだと思うけれど?」
「…守らなきゃいけない約束があったから。その約束が果たされるまでの間なら俺はせんせーと一緒にいるつもり」
「そう…番の契約は外から無理やりされるべきものではないわ。あなたと息子くんの問題だもの」
アクティナの言葉にリューイはのどからこみあげてくるものを押しとどめた。
アクティナにばれないようにと紅茶を一気に飲み干す。
「いつか離れ離れになるにしても、今という時間を大切にしてね。私もアカテスもこの屋敷の者たちもみんなあなたが好きよ。もちろん息子くんもね?だからあなたたちが傷つくのは悲しいわ。もしも、別れる時がきたとしても…後悔しないでね」
アクティナは優しくリューイのほほを撫でた。
うなずいたリューイのために新しい紅茶を用意させる。
しばらくリューイが紅茶を飲む様子を見つめていたがやがてメイドが一人アクティナに耳打ちをした。
あらそう、と答えたアクティナは車の用意をするように告げた。
「リューイくん、息子くんから連絡があって今研究がひと段落したからこちらに向かうそうよ」
「本当?」
先ほどまでの少し湿っぽい空気はいったいどこに消えたのだろうか。リューイはぱっと顔を明るくした。
都市部からここまでは一番早い乗り継ぎでも時間がかかる。到着は夕方ごろになるだろう。
「迎えに行く?」
「行きたいです」
「わかったわ。そうしたらまた駅に着く前に連絡入れるように伝えておかないとね。あなたのほうにも何か連絡きてるんじゃない?」
はっとすればリューイは自分の端末を開いた。
確かにウィリディスからメッセージが入っている。楽しそうだな、と返信があった。
リューイの嬉しそうな様子にアクティナは微笑んだ。
リューイが迎えに出るのなら子供たちが少しの間でも寂しがらないようにしなければなるまい。
次は何をして喜ばそうかと、いくつか立てている予定の中からピックアップを始めた。
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※お仕事の描写など、厳密には正しくない箇所もございます。フィクションとしてお楽しみいただける方のみ読まれることをお勧めします。
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日頃の努力の甲斐あって、隼人には心を開きかけている様子の長尾。
ある日の飲み会帰り、隼人を部屋まで送った長尾は、いきなり隼人に「好きです」と告白してくる。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
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「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
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