世界は万華鏡でできている

兎杜唯人

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蕩けるほどに甘く痺れるほどに辛く 5

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リューイはウィリディスの足の間に顔を埋め力のなくなっている熱を丁寧に舐めていた。
これに奉仕したのはウィリディスの実家での最後の夜のみだ。
力なくとも普通よりも大きなそれにリューイは夢中になっていた。
舌先で丁寧になぞり口いっぱいに頬張れば喉の奥まで飲み込む。
金のためとはいえ何度かαにこうした行為を要求もされたしやってきたが、リューイのほうからというのはウィリディスのみである。
ウィリディスは息を詰める。明け方までリューイを抱き続けたのだ。刺激は与えられるがなかなか復活はしない。

「はは、俺もだけどウィルもなかなか起きないね」

幹を手で撫でリューイが顔を放す。細い指が優しく筋をたどっていく。
少し残念そうな顔をしつつリューイは体をウィリディスに寄せた。
ウィリディスの熱を片手でしごきながらリューイはウィリディスの顔を見上げる。

「キスちょうだい」
「お前の望むままに」

肩を抱いてキスを繰り返す。時折熱をいじるリューイの手に力が入った。
リューイの目が蕩ける。ウィリディスもリューイの熱へと手を伸ばした。リューイはウィリディスの指が静かに萎えた己をしごくところを見つめている。

「Ωは体全部が小さいけどここも小さいなんて思いもしなかった……Ωじゃなくてβだったらもうちょっと大きかったかな」
「大きいほうがよかったか」
「万一にもウィルを抱くようなことがあったら大きいほうが気持ちいいところにあたるじゃん」

リューイの言葉にウィリディスは大きく噴き出した。まさかの言葉である。
リューイに自分が抱かれているところを想像してみようとは思ったができなかった。自分の下で声を上げているほうがリューイには似合っている。

「俺を抱くのか。できるか?」
「できると思ってる」
「そうか…」
「突っ込むだけじゃないしな」

リューイの言葉にきょとんとした。言っている意味が分からない。
ウィリディスを見てリューイは笑う。ウィリディスと向き合うようにして座りなおしたリューイは下肢を寄せウィリディスの熱と己の熱をくっつける。
合点がいったのか、ウィリディスはリューイの熱ごと己の熱を握りこむ。リューイは一回り大きなウィリディスの手に己の手を重ねてゆっくりとしごいた。
フィーディスとこれをやったときよりもより快楽が得られる気がした。何気なく腰を動かすとウィリディスの顔がゆがむ。
それに気づいたリューイはウィリディスの熱に己の熱をこすりつけるように腰を動かした。

「ほら…俺が、ウィルを、抱いてるみたい、じゃない?」
「確かにそうだな」

ウィリディスの手の空間に二人の熱があり、こすりあうほどに濡れてくる。
あんなに抱かれ、達して、吐き出したのにまだ体は快楽を求めてしまうらしい。
リューイはたまらないと吐息を漏らす。ウィリディスと見つめあい舌を絡めると幸せそうに笑った。

「ウィル、気持ちいい?」
「あぁ…とても」

ウィリディスはリューイの体を引き寄せて静かに腰を撫でる。
洗い立ててなめらかな肌が触り心地がいい。リューイの首元に顔を埋める。リューイは小さく声を漏らした。
腰を撫でゆっくりと臀部を滑り降りる。指を一本静かに孔へと埋めていく。すでにとろけてほぐれているそこはうねっている。ウィリディスの指を招き入れ吐息を漏らす。
きゅう、と指を締め付けて物足りないのだと伝えてくる。
リューイはもっと太いものを強請るように腰を揺する。

「ほしいのか、リューイ」
「ほしい。わかってるくせに」
「互いに一度達したら終わりだな…それ以上はお前にも負担をかけてしまうし、話を聞かせてやることもできなさそうだし」
「わかってるよ。その代わり、優しくぐずぐずになっちゃうぐらいに抱いて」
「……あぁ」

リューイをベッドに横たわらせウィリディスは指を抜く。
ウィリディスを見上げ煽るようにリューイは足を開き、自分の腿を抱えた。
リューイの腰を少し浮かせ濡れそぼる孔に己をあてがう。リューイと目があえばそれだけで体は高ぶっていく。

「ウィル…キスして」
「お前が欲しいだけくれてやる」

ウィリディスはリューイに誘われるままキスをして己を押し込んだ。
何度抱かれようともリューイのそこはウィリディスを熱く抱擁する。肉に包まれしごかれる。
何度も精液を出したからか、リューイの内部はすでに潤んでいる。リューイの腕が背中に回り体を引き寄せられた。

「いつもより小さい?」
「何度お前に出したと思っている…いくらαでも続けることは難しい」
「俺が誘っても?」
「そうだな…容量が決まっている水を使いきってしまったら補充しないといくら蛇口をひねっても出てこないだろう…そういうものだ」
「納得いかない…俺を抱いてる間に頑張って復活して」

リューイの言葉に苦笑を漏らしウィリディスは静かに腰を揺すった。
ぬぷ、ぬちょ、と音が出る。普段はきつくしごき上げてくるリューイの内部だが抱き通しで緩んだ内部もまた気持ちがいい。
互いに一気に体が達しないため長く味わっていられる。
ウィリディスはリューイの熱もしごくと同時に空いた手でリューイの胸をいじる。ぴんっ、と硬くなった突起をつねればリューイは息を止める。
痛かったのだろうかと様子を見るもつねった瞬間にウィリディスをくわえる内部がきゅうう、と切なく締め付けてきた。
リューイを見つめればほほを染めてウィリディスを無言で見返してきた。

「もっとか?」

リューイは言葉にしないが小さくうなずいた。
リューイの蜜で濡れた手を胸元で拭いてそのまま両方の突起をつねればリューイの腰が反らされる。ウィリディスに腰を押し付けるような形になり、リューイの頭の奥でちかちかと星が瞬いた。
歯を食いしばり快感を耐えようとする姿にウィリディスは欲を感じた。
突起をつまみあげるのと腰を奥へとこすりつけるのとを同時に行えばリューイはたまらなかったようで声を上げた。
とろ、とリューイの腹部に蜜が溜まる。

「気持ちよさそうだな、リューイ?」
「ふぁ…痛いけど…気持ちいい…じんじんする」
「お前が感じるとこちらも締め付けてきて気持ちいい」
「ほんと…?」
「あぁ…すぐに果てそうだ」

リューイが嬉しそうに笑う。
ゆっくりとリューイの内部を擦り、感度を高める。普段ならばリューイとウィリディスは欲に突き動かされるままに抱き合い、果てているがこれもまたいいものである。
リューイはウィリディスの肌についた小さな傷を指でたどる。少し視線を上げれば眉をさげた。

「俺が、つけた傷…」

ウィリディスはリューイのつぶやきに少し笑みを浮かべた。
ウィリディスは顔を曇らせたリューイに体を寄せると動くのを止めて静かに抱きしめた。
髪に指を絡め顔じゅうに何度もキスを落とす。リューイはむず痒そうに身をよじる。

「この程度の傷お前が気にすることはない…お前は俺に抵抗していたんだ。すぐに消える」
「でも…」
「それに……たとえ拒絶されてできた傷であっても、お前がつけた傷だ。それすら愛しい」

耳元で優しく囁かれリューイの目が丸くなる。
わかっていて言っているのだろうか。リューイはぎゅっとウィリディスの体を抱きしめた。
胸の中にウィリディスへの想いが溢れてとどまるところを知らない。

「ウィル……」
「どうした、リューイ」

ウィリディスの胸元に顔を埋めてリューイは何かをつぶやく。
ウィリディスは聞き返そうとするものの熱を治めたリューイのそこがやわやわと揉んでくる。
ぞくりと背筋を快感が走っていった。

「もっとシて…?今度は傷つけないから」
「いくらでもつけてかまわないがな…」

至近距離で視線を交わらせた二人は笑って口づける。
もっと、と望むリューイの言葉のままにウィリディスはリューイを抱いた。
指の先まで唇を這わせ形のよい爪を唇で挟む。リューイは恥ずかしくなってきたのか口を腕でふさぐ。その姿を見つめてリューイの腕を取れば彼は顔をそむけてしまう。
ウィリディスとしてはもっと声が聴きたいのだがリューイはそれを許してはくれなかった。

「リューイ…二人だけだ。声を堪える必要はない。たった一度の交わりなのに、俺に声を聞かせてはくれないのか」
「やだ……んっ、はずかし…」
「何度、お前の喘ぐ声を聴いたと思っている」
「だって…こんな、こえ…」

リューイは普段よりも敏感になった身体に気づいていた。軽く突かれるだけでも大きな声を漏らしてしまう。淫らな声を上げてウィリディスを煽ってしまう。

「二人きりだ。ほかの子供たちはいない…俺がお前の声を聴きながらやりたい」

リューイの腕を静かにとれば手の甲に唇を当ててほほ笑んだ。
その動作にリューイはたまらなくなる。口をふさぐための腕を取られてしまえばリューイはもう抵抗はできない。
ウィリディスに見下ろされながらリューイは声を上げた。自分の声が頭に響いてたまらない。
ウィリディスの息遣いも荒くなってくる。リューイの声にあおられ、ウィリディスも興奮してくる。

「ウィル…ウィル、俺、もうっ」
「あぁ、俺もだ…」

リューイの腰をつかんで揺さぶる。喉をそらすリューイの首輪に唇を寄せ、歯を立てた。嚙み切れるものではないが、それでもいつかは、と思ってしまう。
リューイの爪がふたたびウィリディスの背中を傷つける。痛みに引きずられるようにしてリューイの中に欲を吐き出した。リューイも達したのか腹部に暖かなものを感じる。
リューイを抱きかかえるようにしてベッドに沈み込んだ。しばらく二人の荒い息だけが室内に聞こえていた。

「リューイ……いつか、その首輪を外してくれるか」

ウィリディスに抱えられながらリューイは目を見開く。わずかに唇が震えて言葉が紡げない。

「本当は今すぐがいいんだ…このまま、お前と二人きりでいられるなら…だが、そうもいっていられない。やらねばならないことがある」

ウィリディスは何も言わないリューイの顔を見つめた。涙を溜めている瞳を見て目を丸くする。
リューイは息を吸い込んでからなんとか声を絞り出した。

「俺じゃ…だめだよ。俺はウィリディスの番にはなれない」
「どうしてそんな…前は」
「だめなんだ…俺、フィーディスと約束したから。フィーディスが、迎えに来るのを待つからって…今は、フィーディスが迎えに来るまではウィルと一緒にいられる。でも、俺はフィーディスと一緒になるって決めたんだ」
「……そうか。そのほうがいいだろう」

ウィリディスは苦笑を漏らして身を引いた。触れあっていた熱が離れてしまうと途端に寒さを感じる。
リューイは体を起こしてウィリディスの腕をつかんだ。

「ウィル…でも実験が終わるまではいるつもりなんだ」
「だが、フィーディスがいつ迎えに来るかはわからないだろう」
「うん。でも、ウィルは俺に言っただろう?全部の実験が終わったなら聞いてほしいことがあるって。それを聞かないままじゃいられないよ」

リューイは泣きながらもウィリディスをまっすぐに見つめる。
指先で涙を拭い取りウィリディスは微笑んだ。

「そうか。ならばお前のためにも必ず実験は成功させる…」
「俺のためじゃないよ。クロエさんのためだろ?」
「そうだな。だが、それと同時にお前のためでもある。お前がこの先Ω病になったとしても、助けられるように」
「うれしいよ、ウィル」

泣き笑いの顔になるリューイを抱きしめる。
優しく頭を撫でれば落ち着いたリューイに学生時代の話を、と強請られた。
時計を見ればまだチェックアウトの時間までは相当ある。今一度湯を浴びてからとウィリディスは告げる。
リューイもそれに賛同すれば二人そろってベッドを降りてバスルームへと再び向かって行った。
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