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「そういえば、りょうちゃん、会社どう?」
「ん?いい感じよー。そっちは」
「俺もがんばってます」
ベッドの上、隣に寝転ぶ男の前髪に手を伸ばしながら涼太は答えた。
会社に入って早二か月が経とうとしている。あっという間だった。
「毎日指導役の先輩が一から教えてくれんの。覚えがいいってほめられた」
「りょうちゃんは頭いいから」
「そんなことないよ」
体を起こせば夜半すぎの寒さがこたえる。
知らないことだらけで日々頭にははてなマークが浮かんでばかりである。次々に与えられる新しいことを飲み込んで消化するのがこんなに大変なこととは思いもしなかった。
「でも、お父さんへのお礼だって言ってたもんね」
「そーよー。とはいってももう会社譲って退職して悠々自適の暮らしだけどね」
シャツを羽織れば自分の後ろでも起き上がる気配がした。
振り向けば口元にキスされる。
「俺もがんばらなきゃ」
「がんばってるじゃん、いつも。でも、無理は禁物」
「うん。でも結果でないとモデルは意味ないよ」
意味はないという彼は付き合い出す前からモデルとして働いていた。雑誌のメンズモデルも、テレビ番組の再現映像にも出ている。ごくまれにアーティストのミュージックビデオにも出ることがあるし、テレビドラマの端役にも出ている。
しかしそのぐらいである。背丈も体も見た目もモデルとして申し分はないが、同じぐらいのモデルならばそれほど吐き捨てられるほどにいる。
様々なオーディションに出ているが芽はそれでも出ない。
「コウくん、俺は君が好きです。顔上げて、いつもみたいに俺にお花みたいな笑顔見せて」
頬に手を添えて涼太は微笑む。
色素が他よりも薄く、同級生にいじめられていたという薄茶の瞳がわずかに揺れた。
キスを交わせば背中に腕が周りシャツをつかまれる。
「りょうちゃ…」
「コウくん、誰が信じなくても俺が信じてる。前向いて、胸張って」
涼太の言葉に鼻をすする音がした。
頭をくしゃくしゃと撫でまわして笑えば強く抱き寄せられた。
「コウくん、不安なことあったら俺に言ってね」
瞳を重ねれば、うんうんと首が振られた。
抱きしめて身体を揺らせば情事の疲れからかとろとろと瞼が落ちてくる。腕の中でゆっくりと体が上下するのを感じれば涼太は静かにベッドへと身体を横たえた。
恋人となって三年、こうして眠る日々が続いている。
生来不安になりやすいのだと涼太は思っていた。ならば自分は彼の不安を少しでも取り除く手伝いをするだけである。
「俺ね、コウくんが雑誌の表紙なってるとき誇らしいんだぞー?隣でOLさんたちが、この表紙の人かっこいいね、って言ってるのを聞くと俺はとても鼻が高い。そして家に帰るとコウくんが、お帰りって笑顔で出迎えてくれてとても幸せになる」
本人には話していないが、恋人たる彼が載る雑誌はちゃんと切り抜いておいてあるし、たまに、出るよ、と教えてくれた番組も録画している。誰よりも彼のファンでいたい気持ちがある。
「菅崎洸哉は俺の恋人なんです、って自慢したいな」
同性の恋人がいるなんてそうそう出せない。一般人ならばともかくとして、相手は曲がりなりにもモデルである。印象は崩したくない。
眠る洸哉に口づけ、涼太はキッチンにむかった。
「ん?いい感じよー。そっちは」
「俺もがんばってます」
ベッドの上、隣に寝転ぶ男の前髪に手を伸ばしながら涼太は答えた。
会社に入って早二か月が経とうとしている。あっという間だった。
「毎日指導役の先輩が一から教えてくれんの。覚えがいいってほめられた」
「りょうちゃんは頭いいから」
「そんなことないよ」
体を起こせば夜半すぎの寒さがこたえる。
知らないことだらけで日々頭にははてなマークが浮かんでばかりである。次々に与えられる新しいことを飲み込んで消化するのがこんなに大変なこととは思いもしなかった。
「でも、お父さんへのお礼だって言ってたもんね」
「そーよー。とはいってももう会社譲って退職して悠々自適の暮らしだけどね」
シャツを羽織れば自分の後ろでも起き上がる気配がした。
振り向けば口元にキスされる。
「俺もがんばらなきゃ」
「がんばってるじゃん、いつも。でも、無理は禁物」
「うん。でも結果でないとモデルは意味ないよ」
意味はないという彼は付き合い出す前からモデルとして働いていた。雑誌のメンズモデルも、テレビ番組の再現映像にも出ている。ごくまれにアーティストのミュージックビデオにも出ることがあるし、テレビドラマの端役にも出ている。
しかしそのぐらいである。背丈も体も見た目もモデルとして申し分はないが、同じぐらいのモデルならばそれほど吐き捨てられるほどにいる。
様々なオーディションに出ているが芽はそれでも出ない。
「コウくん、俺は君が好きです。顔上げて、いつもみたいに俺にお花みたいな笑顔見せて」
頬に手を添えて涼太は微笑む。
色素が他よりも薄く、同級生にいじめられていたという薄茶の瞳がわずかに揺れた。
キスを交わせば背中に腕が周りシャツをつかまれる。
「りょうちゃ…」
「コウくん、誰が信じなくても俺が信じてる。前向いて、胸張って」
涼太の言葉に鼻をすする音がした。
頭をくしゃくしゃと撫でまわして笑えば強く抱き寄せられた。
「コウくん、不安なことあったら俺に言ってね」
瞳を重ねれば、うんうんと首が振られた。
抱きしめて身体を揺らせば情事の疲れからかとろとろと瞼が落ちてくる。腕の中でゆっくりと体が上下するのを感じれば涼太は静かにベッドへと身体を横たえた。
恋人となって三年、こうして眠る日々が続いている。
生来不安になりやすいのだと涼太は思っていた。ならば自分は彼の不安を少しでも取り除く手伝いをするだけである。
「俺ね、コウくんが雑誌の表紙なってるとき誇らしいんだぞー?隣でOLさんたちが、この表紙の人かっこいいね、って言ってるのを聞くと俺はとても鼻が高い。そして家に帰るとコウくんが、お帰りって笑顔で出迎えてくれてとても幸せになる」
本人には話していないが、恋人たる彼が載る雑誌はちゃんと切り抜いておいてあるし、たまに、出るよ、と教えてくれた番組も録画している。誰よりも彼のファンでいたい気持ちがある。
「菅崎洸哉は俺の恋人なんです、って自慢したいな」
同性の恋人がいるなんてそうそう出せない。一般人ならばともかくとして、相手は曲がりなりにもモデルである。印象は崩したくない。
眠る洸哉に口づけ、涼太はキッチンにむかった。
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