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第一部 魔王の『力』を受け継ぎまして

第1話 前世に切実に訴えられまして

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 何か真っ白い空間に、黒いボンヤリとした人影が見える。

『この夢を見ている『君』へ、この夢を見せている『私』より。私は死んだ』

 人影は、なかなかパンチの利いた自己紹介を始める。

『私はビスティガ・ヴェルグイユ。大陸史上にあって『至天の魔王』と称されし者』

 はぁ、そうっすか。
 いきなり魔王と来たもんだ。実感などなく、俺は驚くこともできない。

『かつて私は大陸の四割を支配し、魔族史上における最盛期を創出した。ゆえに、人類と彼らを守護する神々は、私を討つべく『勇者』なる者達を差し向けてきた』

 ほぉほぉ、実にありふれた『勇者』様の英雄譚だな。

『『君』は『勇者』についてどこまで知っている?』

 これまたいきなり飛んでくる質問。
 神様から使命と加護を授かったスゲェ強い人間、それが『勇者』じゃないっけか。

『おおむね合っているが、根本の部分が抜けているね。『勇者』とは、血統、重い過去、固い決意、あるいは他の何かにより生じる『特別に正しい人間』のことをいう』

 特別に正しい、ですかー。
 あ~、俺、そういう言葉はあんまり好きじゃないんだよなー……。

『神より使命を授かり、人々の願いを背負って勇気を示し続ける彼らは、非常に優秀であり、強烈であり、生真面目であり、そして執拗だった。人にとっての希望で、魔族にとっての絶望。それこそがまさに『勇者』という存在だった』

 魔王とやらの声には『勇者』に対する畏怖が強く表れ出ていた。
 それを聞く俺も思わず『そこまでかよ』と感嘆してしまうほどの迫真っぷりだ。

『――その『勇者』を、私は百人ほど討った』

 え。

『一騎当千にして万夫不当たる『勇者』を百人も討ったからこそ、私は『至天の魔王』などという大仰な二つ名で呼ばれ始めたのだがね。まぁ、辛勝ばかりだったが』

 いやいや、それでも『勇者』を百人も倒したとか、それはとんでもないのでは?

『私が討った『勇者』は、皆、輝かんばかりの勇気と、そして確かな『正しさ』を胸に宿して、この私に挑んできたよ。そう、彼ら全員が『正義』の体現者であった』

 はぁ……。
 そっすか。『正義』の体現者、ですか……。

『そう。ある勇者は 元騎士で高潔な志をもって世界を救うために挑んできた。ある勇者は、過去に魔王を討った勇者の子孫として、使命を果たさんと挑んできた。またある勇者は、魔族に殺された家族の仇を討つために、復讐心剥き出しで挑んできた』

 懐かしむように語る『私』の声の裏側に、感じられるものがあった。
 それは、彼が語る『勇者』達の鮮烈なまでの生き様と、そして死に様への敬意。

『いずれの勝負も紙一重。彼らはまさに『勇者』の名に恥じぬ強者ばかりだったよ。だが、それでも勝ったのは私だ。彼らとは違う『正義』を背負う、この私だった』

 違う『正義』。魔族としての『正義』、ってことだろうか。
 一瞬抱いた疑問に対し、声の主はすぐに答えてくれる。

『そうだ。魔族の未来。魔族の運命。魔族の繁栄。魔族の栄光。同胞の繁栄と安寧の守護こそが私が貫くべき『正義』だった。王とは民のためにあるもの。当時の私は、愚かしくも本気でそう思っていた。――正しくさえあればいい、と』

 ……愚かしくも。か。
 語る魔王の声音に次に浮き出てくるのは、悔いの念。底なしに深い後悔だった。

『絶対的な『正しさ』は存在しない。だから私と百人の『勇者』は互いに争うこととなり、そして私は勝ち続けた。だが、それでも落日はやってくる。敗北のときが』

 自称ではあるが、百人の『勇者』を屠った魔王の敗北。
 話を聞き続けてきた『俺』には、どうしても気になってしまうポイントである。

『実は、私は『勇者』に敗れたのではないのだよ』

 ほぉ?

『私は――、何と『冒険者』に敗れたのだ』

 ほほぉ!

『『冒険者』、そう、冒険者だよ。あの、冒険者ギルドにたむろして、依頼を請け負って日銭を稼ぐだけの私欲にまみれたならず者共のことだ』

 ひっでぇ言われようだ。あの、俺、冒険者志望なんですけど……。

『ああ、すまない。そう思っていたのは過去の私だ。そう、自分が死ぬ一時間前まで、私は冒険者をそういったチンピラ風情と認識していた。そして、それは別に何も間違っていなかった。冒険者が私を討ちに来た理由が『金』だったからだ』

 あ、もしかして、懸賞金?

『その通りだ。私の首には当時最高額の懸賞金がかかっていたそうだ。それを狙って、あの冒険者共は私のもとにやってきた。直属の部下である『五禍将フィフステンド』を倒した上で、ね』

 おお、『五禍将フィフステンド』。
 何やら、いかにもな感じのカッコいい名前が出てきたぞ。直属ってのもイイ。

『『五禍将』は魔族五大氏族それぞれの最強戦士に私の力を与えた存在でね、私さえ生きていれば、死んでも一定期間の経過で復活できるという強みがあった。強かったんだぞ『五禍将』。ま、冒険者共に全員負けてしまったんだけどね……』

 魔王陛下、ものすごく残念そう。

『金のためとはいえ『五禍将』をも倒した連中に、私は最初は『勇者』と同じく敬意を抱いたよ。そして、問うたのだ。汝らの『正義』とは何ぞや、と――』

 これもまた、いかにも英雄譚の一節に出てきそうな問いかけであった。
 それで『勇者』だったら自分の『正義』を魔王に向かって堂々と宣言するんだな。

 絵になるなぁ。
 それは、絵になる。ところが、

『……思いっきり、鼻で笑われてしまってね』

 あら。

『『え、別にないけど? 頭、大丈夫? ここは現実だよ?』とかさァ! いや、これは意訳なんだが、こんな感じのことを言われたのだよ、私ッ! ひどくね!?』

 魔王陛下、口調が壊れかけております。魔王陛下!

『そして、連中が私の前まで来た理由が懸賞金目当てと来たモンだ。いや~、キレたね。それにはキレた。当時の私、バチギレにブチギレのガチギレだったよ』

 そりゃまぁ、キレるわなぁ。温度差がひどすぎる。
 この人と『勇者』の戦いが互いの『正義』を賭けた真剣勝負だっただけにねー。

『ただね、今振り返ると、私は『正義』に浸かりすぎていたように思うのだよ』

 お、何か魔王陛下の声の調子が変わったぞ?

『私は、私の前に現れる者は皆、重大な覚悟と確かな『正義』を宿しているものと勝手に決めつけていた。心に宿した想いの強さこそが勝負を決定づける。そんな愚かしい幻想に囚われていたワケさ。お恥ずかしいことにね……』

 それは、そういう側面も確かにあるとは思うけど、それだけじゃないってコトか?

『ああ。もし私が思っていた通りなら、私は勝っていたさ。あの冒険者達に負けるはずがなかった。だが事実はどうだ。私は敗れた。冒険者達は見事に懸賞金ゲットさ』

 また、懐かしむような声。
 そして、影しか見えない魔王陛下は、改めて俺に向けて言う。

『――楽しそうだったよ、彼らは』

 楽し、そう……?

『あの冒険者達は、私との戦いを心底楽しんでいた。生きるか死ぬかしかない戦いを楽しんでいたのだ。私は信じられなかったよ。いや、それ以前に意味がわからなかった。そして当時の私は、それを私に対する侮辱であると解釈した。愚かにもね』

 また出てくる、自らに対する『愚か』というワード。
 それだけで、魔王の過去の自分に対する悔恨がありありと感じ取れる。

『己の全てを賭した戦いに享楽を持ち込むなど言語道断。そう叫んだ私に、冒険者の一人が言ったよ。『そうやって『正しい』かどうかでしか物事考えてないから、あんたは楽しそうじゃないんだよ。つまんないな!』とね。心臓を抉られた思いだった』

 ふと思った。
 俺が聞いているのは、魔王の懺悔、みたいなものなのかもしれない。
 魔王陛下はさらに語る。

『その通りだった。百人の『勇者』と戦った私は、その戦いの中で一度も『楽しさ』なんて感じたことはなかった。常に『正しく』、ただ『正しく』、己の『正義』を貫くことだけを考え、躍起になっていた。余裕なんて、かけらもなかったよ』

 言葉だけではない、この真っ白い空間全体から、魔王の嘆きが伝わってくる。
 それが、俺の中に押し寄せて、しみ込んでいくかのようだ。

『そして私は敗れた。三人の冒険者のうち、二人までも戦闘不能に追い込みながら、最後の一人にトドメを刺されたよ。そして私は――、何を感じたと思うね?』

 え、そこでいきなりクエスチョンですか!?
 え~と、その、守れなかった民への罪悪感とか、敗北感とか、そういう……?

『そんなものはかけらも感じなかったよ』

 あれ!?

『……敗れた瞬間、私が感じたのは、羨望だった』

 羨望? 何かが羨ましかったってこと、か?

『そうとも。私はね、冒険者が羨ましかったんだよ。あんなにも楽しそうに『今この瞬間』を生きている冒険者が、羨ましくて仕方がなかった。そして気づいたんだ!』

 魔王陛下の声とテンションが、次の瞬間、はっちゃける。

『いいかい『君』! 人生は『正しさ』よりも『楽しさ』だよ! わかるかい!』

 あ、はい。

『だって『勇者』との戦い、本当に辛かったからね! 辛さしかなかったからね! 互いの『正しさ』をぶつけ合ったところで、別に何の充実感もなかったよ! むしろ逆。真逆。戦いなんて作業だ。そこに喜びを感じるなど無意味。とか、クールでストイックなキャラを気取っていたワケだ、この私はッ!』

 はい。

『ああああああああ、もっと戦い楽しんでおけばよかったァァァァァァァッ! 今考えると、普通に楽しめたはずなんだよ。運命の邂逅を果たした好敵手とか『やるな貴様(ニヤッ)』とか、できたって! そういう楽しみ方、絶対あったって!』

 はい。

『おのれビスティガ・ヴェルグイユ! 何で死ぬ間際にそんなことに気づいちゃうんだよ! 辛み99.9%の人生、せめて死に際は悔いなしでいきたかったのに、一瞬で史上最も後悔にまみれた魔王になってしまったじゃないか! 上司を出せ!』

 おまえが一番上だよ。

『と、いうワケで私は転生することにした』

 はい。……はい?

『できれば『私』が『私』のまま転生するのがベストだったんだが、ちょっと残された時間が少なすぎて無理そうなので『君』に託すことにした』

 ぉ、俺? ……魔王陛下の転生先、俺ェ!?

『そうだ『君』だ。この『私』の自我以外の『力』と『記憶』を『君』に譲り渡す。
このメッセージは『君』が十五になったときに起動するよう仕掛けておいた。これから目覚めたのち、すでに『君』は『力』と『記憶』を継承しているはずだ』

 お、ぉぉ、おう……。マジですか……。

『この『力』をどう使うかは『君』の自由だ。だが、願わくば『君』には『私』にはできなかった『楽しい生き方』をしてほしいと願っているよ』

 ――『楽しい生き方』。最強の魔王にはできなかった、楽しい人生。か。

『笑って終われる人生を過ごしてくれ。それが『私』自身への弔いにもなる。だから――、楽しめよ! いいか、人生楽しめよ! 謳歌しろよ! 幸せ掴みまくれよ!』

 あ、はい。

『もう『正しさ』とかどうでもいいから! とにかく『楽しさ』だ! いいから『楽しさ』だ! 使命とかそういう楽しくなさそうなのは全部バッくれるんだぞ!』

 はい。

『たった一度の人生を無駄に費やすことは――、って、ああ! 力が尽きる。私の力が! あ、消える! 消えてしまう! でもあと三秒だけもってくれ、私~! いいかい、人生は楽しんでナンボなんだからね! 大いなる力には大いなる責任が伴うとか、知ったことかよクソッたれ! エンジョイだ、人生をエンジョイするのだ!』

 は、はい……。

『頼んだぞォ~~~~……、だぞォ~~……、ぞォ~……、ォ~…………』


  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 ――という、やたらと圧が強い前世の夢を見て、俺は十五の誕生日の朝を迎えた。
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