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第2章 決死必殺の天才暗殺者
第58話 天才暗殺者、謝りたいけど謝れない
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あれだけうるさかった車輪の音がようやくやんだ。
それは、馬車が目的地に到着したことを示す何よりの証だった。
つまり、ついに私たちはオルルタに着いたのだ。
「ここが、オルルタ……!」
かつて隆盛を誇りながらも、今はその名も聞かぬ温泉地。
いや、隠れた秘湯だからこそ、そこだけにしかない価値があるに違いない。
道中、私達を襲ってきた“協会”とかいう連中のこともある。
あの連中は揃って馬で鹿だったが、だがその戦力は侮ることはできない。
ゴーレム、なんてものを操ろうとしていたのだ。
冒険者ではない私でも、魔道によって操られる石巨人のことは知っている。
そんなものを扱う相手がただ者であるはずがない。
そして、そんな連中が関わっているオルルタが、普通であるはずがない。
私は不安半分、期待半分で目の前に広がる光景を改めて見渡した。
田畑。
あぜ道。
まばらな家々。
遠くから、モォ~という牛の鳴き声が聞こえてくる。
そんな、晴れた空ののどかな風景。
…………。
「ただの農村だこれェェェェェェェェェェェェェ!!?」
私が感想を述べる前に、グレイ・メルタが叫んでいた。
いや、あっしも同じこと言おうとしてたけどさ! けどさ!
「こ……」
気が付けば、私はグレイ・メルタの胸ぐらを掴んでいた。
「これはどーゆーことでやんすか、グレイ・メルタァァァァァァ!」
「何がッ!!?」
「なして! なしてここ農村!? ビレッジ!!? Village!!!?」
「やたらイイ発音!?」
「温泉はどこ! あっしのこれまでの人生を癒してくれるカポ~ン、ホカホカ~、ユラ~リ、はふぅ~んの夢気分な湯煙旅情ホッコリ空間は一体どこに!? それだけじゃねぇでやんす! 美味しい料理はどこ! あっしが夢にまで見た、一口食べれば口の中で舌鼓に加えて舌リュートと舌ハーブと舌ドラムと舌弦楽器と舌管楽器が舌マエストロの舌指揮に合わせて一寸の狂いもなく奏でる圧倒的大迫力の舌オーケストラによるめくるめく舌ハーモニーな感じのマジうめぇクソやべぇ山の幸と海の幸は一体どこに!!?」
「スゲェなおまえの舌!? 特に舌マエストロ!」
「温泉どこォォォォォォォォォォォォ!」
「俺だって知りてーわ! 温泉どこォォォォォォォォォォォォ!」
私とグレイが騒いでいるところに、背後に人の気配。
馬車から出てきた大妖怪が、ランとパニとアムを侍らせてそこにいた。
……久しぶりに見た気がするな、この三人。
「オイ、御師匠。こりゃ一体どういうこった?」
「ふ~む」
パニに問われ、フワフワしてる大妖怪がさらにフワフワし始めた。
あ、つまり高く浮いたってことでやんす。
「ちょいと近く見てくるぞぇ」
「い、いってらっしゃ~い……」
見送るアムが軽く手を振る。
そして、場には三人娘と私とグレイが残されて、
「あ~……、ラン?」
「…………」
グレイがランに話しかけるが、彼女は気まずそうな顔のまま目をそらした。
軽く伸ばしかけたグレイの右手が、所在をなくして小さくにぎにぎ。
「おうおう、こりゃあ重傷だねぇ、グレイの旦那」
「で、でも仕方ないと、お、思うかな……」
ニヤニヤしつつパニが言い、アムも控えめに自分の意見を述べた。
二人には当然、私のことは見えていない。
今この場には仲間だけしかいないと、彼女達は認識しているはずだ。
「いやいや、旦那もおとこのこだったってことだよなー、なー?」
「……そ、そうだよね。グ、グレイさんも男性、だ、だもんね」
「いや、あの……」
「分かるぜー、いや分かる分かる。ランのお嬢も可愛いもんなー」
「だからさパニさん、だから違くて……」
「お~いおい、旦那。この期に及んでしらばっくれるのはなしだぜ!」
瞬く間にグレイ・メルタが追い詰められていく。
しかし、パニ・メディはどういうつもりでこの話題を彼に投げたのか。
口ぶりからして、グレイを諫めているわけではないようだが。
そう思っていると、パニがおもむろにグレイに近づいてきた。
自然、彼の隣にいる私にもパニの声が聞こえてくる。
「溜まっちまってんだろぉ、旦那よぉ~?」
「待って」
「奇麗どころのオンパレードだもんな、ウチ。しゃーないしゃーない」
「待って、違うの。お願い俺の弁解を聞いて」
「ああ、いいっていいって」
しかし、グレイが釈明しようとしても彼女は手を振ってそれを無視した。
どころかパニはグレイ・メルタに身を寄せて小声で、
「――アタシとアムなら、いつでもイイぜ?」
「ごはっ!」
あ、グレイが血を吐きそうな勢いでダメージ受けてる。
まぁ、そーろーどーてーじゃ今のはさすがに処理能力超えるでやんすか。
しかしこのちっこいの、また大胆な発言を。
サキュバスか! ……あ、サキュバスだったでやんす。
「パ、パ、パ、パニさん……、な、な、な、何を……?」
「ただしもらうモンはもらうぜェ? アタシもアムも安い女じゃねーんだよ」
安い女じゃないとしてもやり方がガチクズな件。
あっし知ってる。そうしてせしめたお金もぜーんぶ賭場に消えちゃうって。
すごいなー、サキュバスすごいなー。
チラリとアム・カーヴァンの方を見ると、
「……次は、か、勝つもん。か、か、勝てるもん」
もうすでにギャンブルシミュレートが始まっていた。
この凸凹コンビ、本格的にグレイのパーティーのガンではなかろうか?
「――あれ?」
アムのさらに向こう側にいたラン・ドラグが馬車に入っていくのが見えた。
そういえば、この話題の中、彼女はずっと無言のままだった。
「……行ってみますか」
何故だか彼女のことが気になって、パニにガンガンに攻められているグレイをその場に残し、私はランを追って馬車の中に入った。
初めて入った馬車内部は、なんじゃこれというレベルの豪華さだった。
二階建て!
キッチンに複数の部屋、しかも各室に家具とベッドあり!
家よ! こんなの馬車じゃなくて普通の家でやんすよ! ぴー!
ひとしきり馬車に驚いてから、私はランの姿を探す。
彼女は馬車の二階にある一室のベッドに力なく寝転がっていた。
長くクセのない黒髪が広がって、彼女を包むヴェールのように見えた。
私が部屋に入ったことに、ランは気づいていない。
ここでの彼女は一人きり。
少なくとも、ラン自身はそう思っているはずだ。だからだろうか、
「……バカ」
消え入りそうな声での、彼女の呟きが聞こえた。
ランは両腕に抱えた白い枕に顔をうずめ、長い長いため息をつく。
「ホント、グレイのバカ。僕にどんな顔しろっていうんだ」
それは、心底困り果てている女性の声だった。
自分自身でもどう接すればいいのか分からない。そんな感じの困惑。
ため息が連発される。
枕を抱く腕に、少し強めに力が込められていた。
「――それと、僕のバカ」
次いで出たのが自虐の言葉。
「別に、いいじゃないか。そんな、下着くらい……。そんな……」
何か無茶なこと言ってるでやんすねー、この黒女ちゃん。
いやいや、下着くらいてあーた。同じ家に住んでて下着ドロはあかんしょ。
だが、私の意見など届くはずもなく、部屋にはまたため息が流れた。
「グレイだって男なんだからそういうこと興味あるって分かってるじゃないか。でもでも今までそういう話が出なかったのだって、あいつがヘタレでチキンで情けなくて虚弱で軟弱でお調子者で頭悪くてバカでムッツリでバカでムッツリでバカでムッツリだからじゃないか。バカ、バカバカバカバカ、バカ」
ひでぇ言われよう。
確かにグレイ・メルタはバカバカバカのバーカバーカだが、そこまでバカバカ言われる筋合いはあるのだろうか。……あるか。あるな。バカだもん。
「……むー。むー! あー! あー!」
おわ、びっくりした!
うつ伏せになったランが、いきなりベッドで足をバタバタさせたのだ。
「何で下着が欲しいって言ってくれなかったんだ、あいつ!」
言えるワケないと思う。
だってあいつ、ヘタレチキンなそーろーのどーてーよ?
それはちょっと要求難易度が霊峰レベルでやんしょ。
「言ってくれたら。言ってくれたら……」
言ってくれたら、まさかおぱんてー譲渡したとでもいうのだろうか。
おおう、ラン・ドラグ、ウブに見えて案外大胆ちゃん?
「言われても、困る……」
顔を真っ赤にして、ランはまた枕に顔をうずめた。そりゃそーだ。
「はぁ~~…………」
そして漏れる、これまでで最も大きなため息。
ま、男なんて所詮そんなもんってコトでやんすね。
みんなスケベ。みんなムッツリ。
どいつもこいつも脳みその代わりに下半身でモノ考える生き物でやんす。
――そう、ジンバの兄貴以外はね!
「……信頼されてないのかなぁ、僕」
ん? 何でそんな話になるでげす?
グレイがムッツリスケベ野郎ってのが結論でやんしょ?
「信頼されてないから、グレイは僕に黙って下着を……」
絞り出されたその声は、にわかに震えていた。
「相棒だって思ってたのは、僕だけだったのかな」
声は次第に小さくなり、しかし、声の震えは反比例して大きくなっていく。
何故だろうか。
彼女の独り言を聞きながら、私は胸に妙なものを感じていた。
この、詰まるような感覚は何だ。
胸の奥が急に重苦しくなってきた。何かが、ギュッと収縮するような……。
「僕はやっぱり、一人なのかな……」
あ――、そう、か……。
私は理解した。
これは、罪悪感だ。
私がしでかしたことでラン・ドラグを追い詰めてしまっている。
それに対する罪悪感を、私は感じているのだ。
「…………ハハ」
――何を馬鹿な。思わず笑いが漏れ出た。
相手は、私の暗殺対象であるグレイ・メルタの相棒だぞ。
彼女がグレイから離れてくれるなら、それは私にとって望むべき展開だ。
ラン・ドラグはとてつもなく強い。
私は彼女の戦っているところを見たことはない。
しかしその異常極まる身体能力については何度も目にしている。
こんなの、まともに相手にしていられるものか。
いなくなってくれるなら、それこそ願ったりかなったりじゃないか。
「はぁ……」
また、ランのため息が私の耳に届く。
それは今の彼女の気持ちを表しているかのような、重々しい吐息だった。
「グレイ・メルタを、信じたいのですね」
「そりゃそうだよ!」
ガバっと、ラン・ドラグがベッドから跳ね起きた。
「あいつは僕を受け入れてくれたんだ。だから、僕だってそうありたいよ!」
叫んだその言葉は、彼女の心底からの本音なのだろう。
言ってから、私を見ることができないランは部屋の中をキョロキョロする。
「あれ、今、誰かいたような……?」
意思疎通が行なえたのは一瞬だけ。
彼女はやはり、私を認識できていない。まぁ、知ってたさ。
「――追い詰めるつもりは、なかったんです」
聞こえるはずのない謝罪をして、私は部屋を出る。
ラン・ドラグ。彼女がグレイの前から消えることは、私にとって望ましい。
そう、望ましいのだ。望ましいはずだ。
……本当に?
どうして、そんな疑問が意識の片隅にチラつくのか。
私は決死必殺の天才暗殺者ムールゥ・オーレ。
グレイ・メルタに同行しているのだって、彼を殺すという任務のため。
彼を殺すのが私の役目。
彼を殺すのが私の使命。
私はそれに疑問を持っていない。必ずそれを果たしてみせる。
胸に秘めた決意には、一点の曇りもない。
「でも……」
でも、だからって余計に誰かを苦しめたいワケじゃないんだ。
ラン・ドラグの呟きを耳にこびりつかせたまま、私は馬車の外に出た。
「おンや~、こりゃまたデッケェ~家だべ~」
すると、聞いたことのない声が私のことを出迎えた。
右手に鍬を持った麦わら帽子の老人が、馬車を見上げていたのだ。
片に手ぬぐいをかけて、服にはそこかしこに土のよごれ。
背は私と同じくらいだから、そんなに大きくはない。
でも、腕は案外太くて、しかも露出している肌は健康的な色に焼けていた。
足はがに股だけど、腰はしっかりと伸びている。
一目見れば分かるお爺さんだけど、でも全然元気そうというイメージ。
カクシャクとしてるっていうのはこういう人をいうのだろう。
でも顔が、何だか温和で優しそう。
いかにも田舎の農民って感じがして素朴な人柄が見て取れる。
「あんたらぁ、わざわざこんな馬車でウチに来たのかね?」
「あ、ああ。まぁ、そうッスね」
応対に出たのはグレイだった。
どう見てもパニとアムから逃げるためだな、これ。ヘタレめ。
「ここが温泉地だって聞いて来たんスけど」
「カッカッカ、またかね。や~、遠路はるばるご苦労なことだべさ」
わぁい、何かものすごい望み薄な反応が来ちゃったぞコレ。
「時々いるんだなや、あんたらみてぇな勘違いして来ちまうヤツがな~」
「って、じ、じゃあここは温泉地じゃねーってことで?」
朗らかに笑うお爺さんに、グレイはおそるおそる尋ねる。
「プッハ! カッカッカッカッカッカッカッカ!」
そしたらこの呵々大笑よ。
「いやいや、温泉地だったべさ。百年前まではな」
「ひゃ、ひゃくねんまえ……?」
「そういうこった。オルルタの湯なんか、百年前に枯れちまったよぉ」
そ、そんな……。
世界がぐらりと傾ぐのを感じる。
絶望。私の意識を、真っ黒な絶望が覆っていった。
温泉が……、夢にまで見たホッコリ空間と幸福の舌オーケストラが……。
「カッカッカ、残念だったべな、あんたらも」
「マジかー。これ、チビロリに騙されたんかな、俺ら……」
「カ? チビロリってなぁ、何だべさ?」
「あー、何て言えばいいんスかね……」
「クッヒッヒ、素直にすぺしゃるぷりちーな大賢者と言えばよかろ」
いつの間にか、グレイの隣に大妖怪がいた。
小さい体を相変わらずフワフワ浮かせ、自分より長い杖を右手に持って。
「オイコラ、チビロリ。温泉ないとか言われたんだが」
「じゃろなぁ。うむ、そうじゃろなぁ」
「その訳知り顔もっそいムカつくグレイさんなワケだけどさ? さ?」
「クッヒッヒ、なぁに、心配には及ばんぞぇ。なぁ?」
大妖怪が、農民のお爺さんを見た。
「久しいのう」
あれ、この大妖怪、お爺さんと知り合いなのだろうか。
私は不思議に思いながら遠巻きに眺めていると、
ザッ!
いきなり、農民のお爺さんがダイナミックに跳躍!
空中でクルクル回ってアイキャンフライハイダイナミック土下座をキメた!
何事!!?
「お、お久しぶりでございますゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
「おうおう、おんしも元気そうで何よりじゃよ、コーコ」
打って変わって叫びをあげるお爺さんへ、大妖怪は鷹揚にうなずいた。
「来ていただけたのですね、御師様!」
「「おしさまぁ~?」」
グレイと私が同時に言うと、大妖怪がいたずらめいた笑みを浮かべる。
「うむ。こやつはコーコ・コルクス・グレゴリオ」
地面に降りた大妖怪が、畏まったままのお爺さんの隣に立った。
「今回の一件の依頼人で、わしの三十三番弟子じゃよ」
な、何だって――――ッッ!!?
「で、温泉あるの? ないの?」
「あるよ」
やったァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!
それは、馬車が目的地に到着したことを示す何よりの証だった。
つまり、ついに私たちはオルルタに着いたのだ。
「ここが、オルルタ……!」
かつて隆盛を誇りながらも、今はその名も聞かぬ温泉地。
いや、隠れた秘湯だからこそ、そこだけにしかない価値があるに違いない。
道中、私達を襲ってきた“協会”とかいう連中のこともある。
あの連中は揃って馬で鹿だったが、だがその戦力は侮ることはできない。
ゴーレム、なんてものを操ろうとしていたのだ。
冒険者ではない私でも、魔道によって操られる石巨人のことは知っている。
そんなものを扱う相手がただ者であるはずがない。
そして、そんな連中が関わっているオルルタが、普通であるはずがない。
私は不安半分、期待半分で目の前に広がる光景を改めて見渡した。
田畑。
あぜ道。
まばらな家々。
遠くから、モォ~という牛の鳴き声が聞こえてくる。
そんな、晴れた空ののどかな風景。
…………。
「ただの農村だこれェェェェェェェェェェェェェ!!?」
私が感想を述べる前に、グレイ・メルタが叫んでいた。
いや、あっしも同じこと言おうとしてたけどさ! けどさ!
「こ……」
気が付けば、私はグレイ・メルタの胸ぐらを掴んでいた。
「これはどーゆーことでやんすか、グレイ・メルタァァァァァァ!」
「何がッ!!?」
「なして! なしてここ農村!? ビレッジ!!? Village!!!?」
「やたらイイ発音!?」
「温泉はどこ! あっしのこれまでの人生を癒してくれるカポ~ン、ホカホカ~、ユラ~リ、はふぅ~んの夢気分な湯煙旅情ホッコリ空間は一体どこに!? それだけじゃねぇでやんす! 美味しい料理はどこ! あっしが夢にまで見た、一口食べれば口の中で舌鼓に加えて舌リュートと舌ハーブと舌ドラムと舌弦楽器と舌管楽器が舌マエストロの舌指揮に合わせて一寸の狂いもなく奏でる圧倒的大迫力の舌オーケストラによるめくるめく舌ハーモニーな感じのマジうめぇクソやべぇ山の幸と海の幸は一体どこに!!?」
「スゲェなおまえの舌!? 特に舌マエストロ!」
「温泉どこォォォォォォォォォォォォ!」
「俺だって知りてーわ! 温泉どこォォォォォォォォォォォォ!」
私とグレイが騒いでいるところに、背後に人の気配。
馬車から出てきた大妖怪が、ランとパニとアムを侍らせてそこにいた。
……久しぶりに見た気がするな、この三人。
「オイ、御師匠。こりゃ一体どういうこった?」
「ふ~む」
パニに問われ、フワフワしてる大妖怪がさらにフワフワし始めた。
あ、つまり高く浮いたってことでやんす。
「ちょいと近く見てくるぞぇ」
「い、いってらっしゃ~い……」
見送るアムが軽く手を振る。
そして、場には三人娘と私とグレイが残されて、
「あ~……、ラン?」
「…………」
グレイがランに話しかけるが、彼女は気まずそうな顔のまま目をそらした。
軽く伸ばしかけたグレイの右手が、所在をなくして小さくにぎにぎ。
「おうおう、こりゃあ重傷だねぇ、グレイの旦那」
「で、でも仕方ないと、お、思うかな……」
ニヤニヤしつつパニが言い、アムも控えめに自分の意見を述べた。
二人には当然、私のことは見えていない。
今この場には仲間だけしかいないと、彼女達は認識しているはずだ。
「いやいや、旦那もおとこのこだったってことだよなー、なー?」
「……そ、そうだよね。グ、グレイさんも男性、だ、だもんね」
「いや、あの……」
「分かるぜー、いや分かる分かる。ランのお嬢も可愛いもんなー」
「だからさパニさん、だから違くて……」
「お~いおい、旦那。この期に及んでしらばっくれるのはなしだぜ!」
瞬く間にグレイ・メルタが追い詰められていく。
しかし、パニ・メディはどういうつもりでこの話題を彼に投げたのか。
口ぶりからして、グレイを諫めているわけではないようだが。
そう思っていると、パニがおもむろにグレイに近づいてきた。
自然、彼の隣にいる私にもパニの声が聞こえてくる。
「溜まっちまってんだろぉ、旦那よぉ~?」
「待って」
「奇麗どころのオンパレードだもんな、ウチ。しゃーないしゃーない」
「待って、違うの。お願い俺の弁解を聞いて」
「ああ、いいっていいって」
しかし、グレイが釈明しようとしても彼女は手を振ってそれを無視した。
どころかパニはグレイ・メルタに身を寄せて小声で、
「――アタシとアムなら、いつでもイイぜ?」
「ごはっ!」
あ、グレイが血を吐きそうな勢いでダメージ受けてる。
まぁ、そーろーどーてーじゃ今のはさすがに処理能力超えるでやんすか。
しかしこのちっこいの、また大胆な発言を。
サキュバスか! ……あ、サキュバスだったでやんす。
「パ、パ、パ、パニさん……、な、な、な、何を……?」
「ただしもらうモンはもらうぜェ? アタシもアムも安い女じゃねーんだよ」
安い女じゃないとしてもやり方がガチクズな件。
あっし知ってる。そうしてせしめたお金もぜーんぶ賭場に消えちゃうって。
すごいなー、サキュバスすごいなー。
チラリとアム・カーヴァンの方を見ると、
「……次は、か、勝つもん。か、か、勝てるもん」
もうすでにギャンブルシミュレートが始まっていた。
この凸凹コンビ、本格的にグレイのパーティーのガンではなかろうか?
「――あれ?」
アムのさらに向こう側にいたラン・ドラグが馬車に入っていくのが見えた。
そういえば、この話題の中、彼女はずっと無言のままだった。
「……行ってみますか」
何故だか彼女のことが気になって、パニにガンガンに攻められているグレイをその場に残し、私はランを追って馬車の中に入った。
初めて入った馬車内部は、なんじゃこれというレベルの豪華さだった。
二階建て!
キッチンに複数の部屋、しかも各室に家具とベッドあり!
家よ! こんなの馬車じゃなくて普通の家でやんすよ! ぴー!
ひとしきり馬車に驚いてから、私はランの姿を探す。
彼女は馬車の二階にある一室のベッドに力なく寝転がっていた。
長くクセのない黒髪が広がって、彼女を包むヴェールのように見えた。
私が部屋に入ったことに、ランは気づいていない。
ここでの彼女は一人きり。
少なくとも、ラン自身はそう思っているはずだ。だからだろうか、
「……バカ」
消え入りそうな声での、彼女の呟きが聞こえた。
ランは両腕に抱えた白い枕に顔をうずめ、長い長いため息をつく。
「ホント、グレイのバカ。僕にどんな顔しろっていうんだ」
それは、心底困り果てている女性の声だった。
自分自身でもどう接すればいいのか分からない。そんな感じの困惑。
ため息が連発される。
枕を抱く腕に、少し強めに力が込められていた。
「――それと、僕のバカ」
次いで出たのが自虐の言葉。
「別に、いいじゃないか。そんな、下着くらい……。そんな……」
何か無茶なこと言ってるでやんすねー、この黒女ちゃん。
いやいや、下着くらいてあーた。同じ家に住んでて下着ドロはあかんしょ。
だが、私の意見など届くはずもなく、部屋にはまたため息が流れた。
「グレイだって男なんだからそういうこと興味あるって分かってるじゃないか。でもでも今までそういう話が出なかったのだって、あいつがヘタレでチキンで情けなくて虚弱で軟弱でお調子者で頭悪くてバカでムッツリでバカでムッツリでバカでムッツリだからじゃないか。バカ、バカバカバカバカ、バカ」
ひでぇ言われよう。
確かにグレイ・メルタはバカバカバカのバーカバーカだが、そこまでバカバカ言われる筋合いはあるのだろうか。……あるか。あるな。バカだもん。
「……むー。むー! あー! あー!」
おわ、びっくりした!
うつ伏せになったランが、いきなりベッドで足をバタバタさせたのだ。
「何で下着が欲しいって言ってくれなかったんだ、あいつ!」
言えるワケないと思う。
だってあいつ、ヘタレチキンなそーろーのどーてーよ?
それはちょっと要求難易度が霊峰レベルでやんしょ。
「言ってくれたら。言ってくれたら……」
言ってくれたら、まさかおぱんてー譲渡したとでもいうのだろうか。
おおう、ラン・ドラグ、ウブに見えて案外大胆ちゃん?
「言われても、困る……」
顔を真っ赤にして、ランはまた枕に顔をうずめた。そりゃそーだ。
「はぁ~~…………」
そして漏れる、これまでで最も大きなため息。
ま、男なんて所詮そんなもんってコトでやんすね。
みんなスケベ。みんなムッツリ。
どいつもこいつも脳みその代わりに下半身でモノ考える生き物でやんす。
――そう、ジンバの兄貴以外はね!
「……信頼されてないのかなぁ、僕」
ん? 何でそんな話になるでげす?
グレイがムッツリスケベ野郎ってのが結論でやんしょ?
「信頼されてないから、グレイは僕に黙って下着を……」
絞り出されたその声は、にわかに震えていた。
「相棒だって思ってたのは、僕だけだったのかな」
声は次第に小さくなり、しかし、声の震えは反比例して大きくなっていく。
何故だろうか。
彼女の独り言を聞きながら、私は胸に妙なものを感じていた。
この、詰まるような感覚は何だ。
胸の奥が急に重苦しくなってきた。何かが、ギュッと収縮するような……。
「僕はやっぱり、一人なのかな……」
あ――、そう、か……。
私は理解した。
これは、罪悪感だ。
私がしでかしたことでラン・ドラグを追い詰めてしまっている。
それに対する罪悪感を、私は感じているのだ。
「…………ハハ」
――何を馬鹿な。思わず笑いが漏れ出た。
相手は、私の暗殺対象であるグレイ・メルタの相棒だぞ。
彼女がグレイから離れてくれるなら、それは私にとって望むべき展開だ。
ラン・ドラグはとてつもなく強い。
私は彼女の戦っているところを見たことはない。
しかしその異常極まる身体能力については何度も目にしている。
こんなの、まともに相手にしていられるものか。
いなくなってくれるなら、それこそ願ったりかなったりじゃないか。
「はぁ……」
また、ランのため息が私の耳に届く。
それは今の彼女の気持ちを表しているかのような、重々しい吐息だった。
「グレイ・メルタを、信じたいのですね」
「そりゃそうだよ!」
ガバっと、ラン・ドラグがベッドから跳ね起きた。
「あいつは僕を受け入れてくれたんだ。だから、僕だってそうありたいよ!」
叫んだその言葉は、彼女の心底からの本音なのだろう。
言ってから、私を見ることができないランは部屋の中をキョロキョロする。
「あれ、今、誰かいたような……?」
意思疎通が行なえたのは一瞬だけ。
彼女はやはり、私を認識できていない。まぁ、知ってたさ。
「――追い詰めるつもりは、なかったんです」
聞こえるはずのない謝罪をして、私は部屋を出る。
ラン・ドラグ。彼女がグレイの前から消えることは、私にとって望ましい。
そう、望ましいのだ。望ましいはずだ。
……本当に?
どうして、そんな疑問が意識の片隅にチラつくのか。
私は決死必殺の天才暗殺者ムールゥ・オーレ。
グレイ・メルタに同行しているのだって、彼を殺すという任務のため。
彼を殺すのが私の役目。
彼を殺すのが私の使命。
私はそれに疑問を持っていない。必ずそれを果たしてみせる。
胸に秘めた決意には、一点の曇りもない。
「でも……」
でも、だからって余計に誰かを苦しめたいワケじゃないんだ。
ラン・ドラグの呟きを耳にこびりつかせたまま、私は馬車の外に出た。
「おンや~、こりゃまたデッケェ~家だべ~」
すると、聞いたことのない声が私のことを出迎えた。
右手に鍬を持った麦わら帽子の老人が、馬車を見上げていたのだ。
片に手ぬぐいをかけて、服にはそこかしこに土のよごれ。
背は私と同じくらいだから、そんなに大きくはない。
でも、腕は案外太くて、しかも露出している肌は健康的な色に焼けていた。
足はがに股だけど、腰はしっかりと伸びている。
一目見れば分かるお爺さんだけど、でも全然元気そうというイメージ。
カクシャクとしてるっていうのはこういう人をいうのだろう。
でも顔が、何だか温和で優しそう。
いかにも田舎の農民って感じがして素朴な人柄が見て取れる。
「あんたらぁ、わざわざこんな馬車でウチに来たのかね?」
「あ、ああ。まぁ、そうッスね」
応対に出たのはグレイだった。
どう見てもパニとアムから逃げるためだな、これ。ヘタレめ。
「ここが温泉地だって聞いて来たんスけど」
「カッカッカ、またかね。や~、遠路はるばるご苦労なことだべさ」
わぁい、何かものすごい望み薄な反応が来ちゃったぞコレ。
「時々いるんだなや、あんたらみてぇな勘違いして来ちまうヤツがな~」
「って、じ、じゃあここは温泉地じゃねーってことで?」
朗らかに笑うお爺さんに、グレイはおそるおそる尋ねる。
「プッハ! カッカッカッカッカッカッカッカ!」
そしたらこの呵々大笑よ。
「いやいや、温泉地だったべさ。百年前まではな」
「ひゃ、ひゃくねんまえ……?」
「そういうこった。オルルタの湯なんか、百年前に枯れちまったよぉ」
そ、そんな……。
世界がぐらりと傾ぐのを感じる。
絶望。私の意識を、真っ黒な絶望が覆っていった。
温泉が……、夢にまで見たホッコリ空間と幸福の舌オーケストラが……。
「カッカッカ、残念だったべな、あんたらも」
「マジかー。これ、チビロリに騙されたんかな、俺ら……」
「カ? チビロリってなぁ、何だべさ?」
「あー、何て言えばいいんスかね……」
「クッヒッヒ、素直にすぺしゃるぷりちーな大賢者と言えばよかろ」
いつの間にか、グレイの隣に大妖怪がいた。
小さい体を相変わらずフワフワ浮かせ、自分より長い杖を右手に持って。
「オイコラ、チビロリ。温泉ないとか言われたんだが」
「じゃろなぁ。うむ、そうじゃろなぁ」
「その訳知り顔もっそいムカつくグレイさんなワケだけどさ? さ?」
「クッヒッヒ、なぁに、心配には及ばんぞぇ。なぁ?」
大妖怪が、農民のお爺さんを見た。
「久しいのう」
あれ、この大妖怪、お爺さんと知り合いなのだろうか。
私は不思議に思いながら遠巻きに眺めていると、
ザッ!
いきなり、農民のお爺さんがダイナミックに跳躍!
空中でクルクル回ってアイキャンフライハイダイナミック土下座をキメた!
何事!!?
「お、お久しぶりでございますゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
「おうおう、おんしも元気そうで何よりじゃよ、コーコ」
打って変わって叫びをあげるお爺さんへ、大妖怪は鷹揚にうなずいた。
「来ていただけたのですね、御師様!」
「「おしさまぁ~?」」
グレイと私が同時に言うと、大妖怪がいたずらめいた笑みを浮かべる。
「うむ。こやつはコーコ・コルクス・グレゴリオ」
地面に降りた大妖怪が、畏まったままのお爺さんの隣に立った。
「今回の一件の依頼人で、わしの三十三番弟子じゃよ」
な、何だって――――ッッ!!?
「で、温泉あるの? ないの?」
「あるよ」
やったァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!
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