最強パーティーを追放された貧弱無敵の自称重戦士、戦わないくせに大活躍って本当ですか?

はんぺん千代丸

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第1章 最速無敵の天才重戦士 

第29話 天才重戦士、罵られる

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 ランと一緒にギルドに戻ったら、

「グレイにーちゃぁぁぁぁぁぁん! 助けてなのよ――――!」

 これである。

「やだ」

 だから俺は丁寧にお断りした。

「どーしてなのよー! 可愛い妹分がお願いしてるのよー!」
「お礼も言えないような子はうちの子じゃありません!」
「あうう……」

 場所はギルドの二階にある部屋。
 またしてもここである。何か縁があるのか? そんな因縁いらんけど?

 周りには、俺とラン以外にメルとロクさんがいるだけだ。
 パニ達は“大地の深淵”突入のための準備を進めてるんだって。

 お土産買ってきたからあとで渡さないとなー。
 その前に、こっちをどうにかしないといけないけどさ。

「――で?」
「ひぅっ」

 俺がクゥナに目を向けると、こいつ、それだけで身を震わせてやんの。
 完全にビビっちまってんじゃねぇかよ。……ハァ。

「まず、言うべきことあるだろ」
「ううう……」
「言・う・べ・き・こ・と、あるだろ?」

 トントンと指先で新しく用意されたテーブルの上を叩きつつ、俺は言う。
 少しばかり、俺の追求はしつこいのかもしれない。
 だが、この辺りは人としてたがえちゃならん道理ってモンだろ。

「う……、――さい、なのよ」
「何て?」
「さ……」
「さ?」
「さっきは助けてくれて、ごめんなさいなのよ!」
「惜しい! 80点はあげるけど、まだ正解じゃなーい!」
「なーんーでー、なーのーよー!?」

 クゥナがさっきみたいに両腕をバタつかせて抗議してきた。
 う~~ん、仕方ねーなー。今回のところはサービスしておいてやるか。

「助けてもらったらありがとう。悪いことしたらごめんなさい。分かった?」
「うーうー! むーむー!」

 おまえはご機嫌ナナメな小動物か!
 だがこっちも退かんぞ。絶対に退かんからな。

「…………これまでごめんなさいなのよ。それと、ありがとなのよ」

 長い沈黙ののちに、クゥナはやっときちんとした謝罪と礼を口にした。
 や~~~~~~~~っとか、このバカ娘。
 俺は腕組みをしながらも、もう一度ため息をついて、

「はい、よくできました」
「何なの何なの何なのよー! どーしてそんなにクゥをいじめるのよー!」
「いじめとらんわ! このままじゃあかんから教えとんじゃい!」
「むー!」
「ええい、うるさい! 閑話休題! 話題切り替え! 話題を出せェい!」

 これ以上、こんな駄々っ子に付き合っていられるか!
 俺は自分の冒険準備に戻らせてもらう!

「う……、ヴァイスにーちゃんが……」
「マジで“大地の深淵”に行っちゃったの、あいつ?」
「多分……」

 断言はできないようで、クゥナはしょぼんとうなだれた。

「街中探したのよ。にーちゃんが行きそうなところ全部。でもいなかったのよ」
「で、それ以外だと一番可能性がありそうなのが――」
「“大地の深淵”、なのよ……」

 俺はメルとロクさんの方を見る。

「メルたん、『エインフェル』から攻略の申請ってのは?」
「メルたんではありませんし、そのようなものもありません」

 ――じゃあマジで申請なしで攻略に? ヤバくね?

「その場合って、どうなるんだ?」
「そうでございますねぇ。例えウルラシオンの若き雄たる『エインフェル』様でございましても、規約を守っていただけない、というのではギルドとしても示しがつきません。特にSランクダンジョンの攻略などは、数ある依頼、数ある冒険の中でも最も重要度が高いものでございますので、これに関する規約を無視されてしまってはギルドとしましても厳罰を課す以外にはございませんなぁ」

 さすがロクさん、セリフが長い。
 でもまぁ、語られた内容的には、そうなるよなぁ。って感じ。

「厳罰って……」

 顔を青ざめさせるクゥナに、メルが説明する。

「まず、ギルドから提供されるサービスの使用権利は全て停止されます」
「え、それって……」

 気づいて、クゥナは目を見開いた。

「そ、蘇生資格も……!」
「そうなります。ヴァイスさんが許可なしに“大地の深淵”に向かったと仮定した場合、そこで死亡しても蘇生されることはないものとお考えください」
「グレイにーちゃん!」

 説明を受けたクゥナが、飛びつくような勢いで俺にすがってくる。

「お願いなのよ! ヴァイスにーちゃんを助けてなのよ! もう他に頼れる人がいないのよ! クゥも一緒に行くから――」
「残念ですが、クゥナさんの同行は認められません」

 だが、メルが冷ややかに告げてきた。
 ビクリ。クゥナが震える。
 ただでさえ青ざめていたその顔から一層、色がなくなった。

「な、何でなのよ……」
「『エインフェル』はギルド規約に違反している疑いがありますので、その容疑はヴァイスさん個人ではなくパーティー全体にかけられます」

 つまり、今となっちゃクゥナも自由にはさせられない、ってことか。

「何でなのよ! クゥは悪いことしてないのよ! なのに……!?」
「落ち着け、クゥナ。おまえはここで待ってりゃいいだろうが。どうせウルラシオンのダンジョンにはこれから俺達も行く。だから――」
「グレイにーちゃんだけで何ができるのよ! いつまでもレベル3のクセに!」

 そしてクゥナは、顔色を蒼白にしたまま、それを叫んだのだった。
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