最強パーティーを追放された貧弱無敵の自称重戦士、戦わないくせに大活躍って本当ですか?

はんぺん千代丸

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第1章 最速無敵の天才重戦士 

第15話 天才重戦士、相棒の意外な一面を知る

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 ――マジで地下四階が最奥でやんの。

「おまえコレ本ッ気でマジかよ……」
「マジもマジ。本気と書いてマジと読むレベルでマジだぜ」

 唖然とする俺の隣で、パニがクッソムカつくドヤ顔で笑ってやがる。
 現在、小遺跡最深部。つまりは地下四階だ。

 俺達がこの遺跡に侵入して三十分。
 すでにあらかた調べ尽くして、俺達四人はここに到着していた。

 三十分。
 たった三十分だ。
 いくら小遺跡だっつったって、そのほぼ全てを三十分で調べ終える。

 いやー、アホッスわ。
 普通に考えればありえん。ありえんよね。三十分て。

 だってさ? 発見されたばっかのダンジョンの探索っすよ?

 分かるかなー。
 一般的な冒険者なら、これ、普通に半日はかかる大仕事なんスよ?
 混沌化のない地下四階程度の小遺跡でも、そのくらいの時間は必要なワケ。

 だって、遺跡にはまず確実に罠が仕掛けてある。
 それを盗賊が解除するのに手間と時間がかかるし?

 しかも大体、どこでも隠し通路とか隠し部屋ってのはつきもの。
 それを盗賊か、もしくは兼任のマッパーが見つけて記録しなきゃだし?

 モンスターだって住み着いたり、セキュリティ用に飼われてたりもする。
 当然、モンスターとの戦闘になればそれだけ時間も浪費するし?

 兎にも角にも手間がかかる。それが本来のダンジョン探索だ。
 ほら、俺達をここに運んできたギルドの職員だって、一日くれてたじゃん?

 元々、この遺跡は規模も小さいだろうと目されていた。
 それでもギルドは諸々合わせて一日はかかると判断してたワケだ。

 だがその判断は誤りだった!
 だって実際は三十分で終わっちゃったモン!

「ギャッハッハッハ! ウチのアムはすンげーだろッ!」

 そしてパニのドヤ顔である。
 別におまえの実力じゃねーだろーが。とは思うのだが、

「まぁなぁ……。なんつーかなー……」

 俺はランタンを軽く掲げて、床に広げられたそれを見た。
 四枚ばっかの重ねられた魔法紙は、この遺跡のほぼ全てが網羅された地図だった。

「探索始める前にこれ描かれちゃったらなー……」

 俺はしみじみと呟く。
 地図を描いたのは、もちろんアムだ。
 彼女はダンジョンとの逢瀬(?)を終えた後に、急激な勢いでこれを描き始めた。

 時間にすれば五分くらい。
 そんな短い時間で、この意味不明なレベルで詳細な地図が描かれたワケだ。

 そのあとで遺跡の探索始めて、地図の正確さに俺もランもビックリしたわ。
 いや、探索じゃねーな、もう。ただの確認作業でしかなかったよね、ここまで。

 罠の場所も、罠の内容も、行ける場所も行けない場所も。
 どれもこれもが全部こと細かに描かれててどこも間違ってなかったっていうね。

「何なんだろうな、これ。盗賊もマッパーもいらねーじゃん……」
「見たかい。これがアムが授かった“奥地の恋人”の加護の力ってヤツよ!」
「相変わらず名前ひっでーわ」

 外位級の“力あるもの”はイロモノしかいないんか! いないか! そうか!
 そろそろ諦めもついてきたわ……。

「で、これで分かったろ、グレイよ」
「何がよ、パニさん」
「このパーティーにゃ盗賊はいらねぇ。アムがいれば十分だってコト」

 言われて、俺はそれに同意しかけた。
 確かに、とは思ったのだ。
 アムの力があれば今後のダンジョン探索依頼はかなりはかどる。

 ああ、それは確かだ。確かなんだろうが――
 俺はチラリとアムの方を見た。

「あはァ、もう、そんなに急かさないで……。もうすぐ。もうすぐ、だ・か・ら」

 まだ素っ裸であんな感じなんですよ。
 ちなみにランにはアムの護衛を頼んである。そんなランの近況をご覧ください。

「グレイ、グレーイ! まだ行かないの!? 早く行こうよ僕もう限界だよー!」

 見てください、あのはしゃぎっぷりを。
 ウブい娘がほぼ全裸のサキュバスの隣にいるとあんなに元気になるんですね。
 いやー、ほほえましい(棒読み)。

「あんたもあんまりいじめてやんなよ、可哀想だぜ、さすがに」
「前に俺をからかい倒した罰ってヤツですよ、こいつァ」

 よし、あとでランをいじるネタはできたし先に進むとしよう。
 で、何で俺らがこの地下四階で少し動きを止めてたっかつーと、最奥の部屋がね。
 ここだけ、地図上ではまだ空白なんだよなー。

「多分この遺跡ちゃんのボスがいるお部屋ねェン。フフ、可愛いわ♪」

 アムさんが解説してくれました。
 遺跡ちゃんとは何なのか。一体何が可愛いのか。俺は何も考えない。考えない!

「よし、行くか! このポーション飲んだら!」
「ずっと休憩してたもんな、あんた」

 パニが何が言ってくるが、ここで立ち止まったのは作戦タイムだからである。
 俺が歩き疲れてちょっと休憩してたからではない。断じてない。

「永遠に上がらないレベル3ってヤツァ、大変だな」
「永遠にじゃねーし! まだ半年だし! 大体、おまえらレベル幾つだよ!」

 俺が叫ぶと、パニが答えた。
「33」

 次に、アムが答えた。
「31」

 このレベル富豪共がァァァァァァァ……!
 こいつらには分からない……、俺の気持ち……、持たざる者の苦しみなど……!

 一年間冒険……、だが半年以上据え置きのレベル……!
 あってはならない……、何故こんなことに……! 格差……、圧倒的格差……!

 あああ、ああああああああああああああ~~~~~~……!

「グレイ! ぐにゃ~ってなってないで早く行こうってばー!」

 だがここで、四人の中で最もレベルが高いランが俺を頼ってきた。
 フフ、そーかそーか。レベルが40になっても俺に頼っちゃうのかおまえはー。

 そっかー、なら仕方がないなー!
 頼られちゃったもんなー!
 仕方がないなー! 頼られてやるかー!

「あんた、人間ちっちゃすぎないかい?」
「うるせーな! 人の本質を的確に見抜くのやめろよ!」

 いたたまれなくなっちゃうだろ、俺が!

「もー! ボスモンスターなんて僕がドカーンってやっちゃうからさー!」

 っと、ランもそろそろ我慢の限界か。
 なら行くか。どうせボスモンスターなんて楽勝だろうし。
 何てったってこっちには最終鬼畜暴力装置ドラゴン女のランさんがいるしな!

「おまえ、またなんか変なこと考えてないか、グレイ」
「気のせい気のせい。そんなことより、やっちまってくださいよ、先生!」
「ンフ、頼もしいわねェン。ボスはゴーストだけど、ランちゃんなら楽勝ね」

 何だゴーストかよ。
 ボスモンスターっつーからトンデモ系モンスターかと思ったらそんなモンか。

 あ~ぁ、もう勝ったも同然だな、こりゃ。
 だってこっちにゃ最終鬼畜暴力装置ドラゴン女先生がついてるんだぜ?

「…………」
「お? どうした、ラン。行こうぜ」
「……おばけ怖い」

 ブボッ。

 ランがこぼしたつぶやきに、俺は思わず噴き出していた。
 今、何つったコイツ?
 え? この最終鬼畜暴力装置ドラゴン女、何て言った?

「ア、アムさん、本当に? 本当におばけ?」
「そうよぉ? 遺跡ちゃんが教えてくれたわ。とっても立派な悪霊ですって」
「いやいや、勘違いの可能性もあるよね? 実はオーガとか! ゴーレムとか!」
「ン、おばけが怖いランちゃんったら、可愛いわァ。でもね、ゴーストなの」
「……かーらーの?」
「あきらめろ、ラン。ボスはゴーストだ」
「いやだァァァァァァァァ! おばけイヤァァァァァァァァァ!」

 おまえ、この土壇場でそんな露骨すぎるキャラ立てしてんじゃないよ――――!?

「ギャッハハハ! 何だよ。ランのお嬢は案外乙女でいらっしゃるじゃねぇか。ったく、しゃーねーなー」

 そこで軽く笑い飛ばしながら、パニが一歩前に出る。

「つまり、ここはアタシの出番ってことだな」

 背の低い桃色髪のサキュバスは、しかし、その顔に傲岸不遜な笑みを浮かべて自信たっぷりにそう言うのだった。
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