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第1章 最速無敵の天才重戦士
第14話 天才重戦士、下着姿にビビる
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――さて、遺跡である。
ウルラシオン周辺は国内でも特に遺跡が多いらしい。
全てひっくるめて古代群都市とか呼ばれていて、今も頻繁に遺跡が見つかってる。
確か、現時点で確認されてる小遺跡の数は百を超えるんだったか。
今回、パニが受けてきた依頼も、そんな新発見の小遺跡の調査なワケで。
「あそこか。結構近いんだな」
馬車に揺られること三時間ほど、お昼ちょい前に俺達は遺跡についた。
そこはちょっとした森の中、角度的に外からはまるっきり見えない位置にあった。
近いとはいっても馬車だからであって、徒歩なら半日以上はかかるだろうな。
ここらの遺跡は割と大きな発見も多いから、国やギルドも調査に力を入れている。
おかげで連絡馬車とかも使えるんで、移動は楽なんだよな。
「それでは、明日同じ時間にここに来ますので」
俺達が降りたあと、御者はそう言って馬車で街に戻っていった。
つまり、俺達に与えられた時間は一日。
その間に遺跡内部をできる限り踏破してその構造を調べなければならない。
石造りの壁が半ば地面に埋もれている。
古代文明の建物がほぼ全て森に沈んでる形っぽいな。
発見者は近くの村の子供で、遊びに来てたまたま見つけたとのこと。
壁の一角に大きな穴が開いていて、そこから中に入ることができそうだ。
さーて、冒険冒険。あー、この始まる直前のウキウキがたまんねぇ。
「気を引き締めろよ、グレイ。顔がにやけてるぞ」
「るっせ、るっせ。楽しいじゃねぇか、こういうのってよー」
「――ええ、そうですね。愉しい。フフ」
ゾクリ、とした。
聞いたことのない声が、俺に応じたからだ。
何だ今の声。今の、ぬらりと絡みついてくるような質感の、女の声は。
「オイオイ、アム。まだ入ってもいねぇんだぞ。もう濡れてんのか?」
「だってぇ……、ああ、あんなに大きな穴が。誘っているのね? すぐに行くわ」
え――
今の、アムの声? え? アムの? え、え? アムの声!?
動転して彼女のいる方を振り向けば、そこに俺の知っているアムはいなかった。
代わりに、何だあれ。誰だこれ。
知っている見た目の、知らない女がいるんだが。
「だからよー、恋人だっつったろ」
穴をくぐってダンジョンの中へ。
明かりはなく、当然真っ暗。ランタンに火をつけたときにパニが説明してきた。
「アムはな、“ダンジョンの恋人”なんだよ」
「ごめん、ちょっと言っている意味が分からないんだが……」
説明になっていない説明に、ランが戸惑う。俺も戸惑う。
ランタンの淡い明かりに照らされたパニが「ギャハハハハ!」と爆笑した。
「百聞は一見に如か何とやらってな!」
「そこまで言ったなら最後まで言えよ……」
「見てりゃいいさ。すぐ終わる。終わったら、この遺跡は丸裸さ」
そう言って、彼女がランタンを突き出した先にアムが立っていた。
遺跡の入り口は奥へと続く一本道。その始まりの地点で、アムはただ佇んでいる。
「――フフフ」
また、悪寒に近い何かが俺の背中を走った。
そうだ。あの笑いだ。いつものアムとはかけ離れた、艶しかない笑い声。
そして彼女はスルリと纏っていたローブを脱いで――え? 脱いで?
「ああ、感じるわ。……冷たい空気。固い、そして大きい。あン、逞しいのね」
「な、な? な……!?」
ローブを地面に脱ぎ捨てたアムは、何というか、その、裸だった。
全裸ではなく腰と胸に下着はつけているが、
そんな――上も下も、黒のレース地だって!!?
ランタンの明かりが淡く照らす、その真っ白い柔肌。
なめらかな女体の曲線は一目見るだけで理性が飛びそうなほどに艶めかしく。
身をわずかに隠す下着の黒が、白い素肌を一層強調している。
薄布一枚に覆われるのみの、大きくも形の良いバスト。
腰のくびれはくっきりと、そのクセ尻の丸みは肉の柔らかさを容易く想像させた。
眼鏡を外し、三つ編みを解いて、刹那に広がる銀髪はヴェールのようだ。
ずっと怯えるようだった顔に、今はどうしようもなく蠱惑的な笑みが浮かぶ。
潤む瞳に、頬はかすかに上気して紅潮している。
笑みを刻んで、熱っぽく吐息を漏らしながら、獲物を誘う濡れた唇。
それまでは人の姿だったのに。
ローブを脱いだ今、アムの頭の左右には二本のねじくれた角が生えていた。
そして背中にはゆるやかに動く、コウモリの翼。
サキュバスとしての、これが彼女の本来の姿なのだろう。
ただ立っているだけなのに、そこには異質な美があった。
見る者が圧倒されてしまうほどの女の美が。
思いがけず見てしまったそれに、俺は無意識に息を呑んでいた。
身につけているのは本当に下着だけだ。他には一切何もない。
そんな恰好でかすかに身を震わせて、一体何してんスかこの女!?
「ァん……」
かすかに開いた唇より、切なげな吐息が漏れるのが聞こえた。
ねぇ、ホントに何してんの、ねぇ!!?
「は、ァ……。フフ、ン……。ぅ、ん。は、ン、……ッ。いいわ。とっても……」
これ喘ぎ声ッスよねェ!!?
「なぁ、アムは一体何をしているんだ。何が起きてるんだ、なぁ!?」
混乱を隠し切れず、ランが縋るようにしてパニを問い質そうとする。
だがパニはそれを楽しむようにニヤニヤ笑いながら、
「逢瀬。ダンジョンとのな」
その答えで、一体俺達に何を理解しろというのか!
「――そう。全部で地下四階なのね。……ええ、あなたのこと、もっと教えて?」
「「え」」
今、なんつった。
この遺跡が、地下四階まである?
「アムはな、ダンジョンと触れ合えるんだよ。実際に、肌を重ねるようにして」
「肌を重ねる、って……」
「ダンジョンとイチャイチャチュッチュ真っ最中ってこった! ギャハハハハ!」
「笑いごとなのかそれは! なぁ、なぁ!?」
大笑いしているパニの肩を掴んで、ランが悲鳴じみた声をあげる。
あかん、完全にキャパオーバーしてらっしゃる。
「ひ、あァ……、あン。ァ……、ンッ、くゥゥ、ん……!」
声を漏らすたび、それは強く色を帯びていく。
聞いているこっちまでもが飲み込まれそうな深い深い、色欲の深淵。
パニの話が事実なら、アムは今この場でダンジョンの全てを感じ取ってるのか。
けど、この声は――
「あァ! はッ、ふぁ、ひァ……。そう、もっと、もっとあなたをさらけ出して」
ああ、耳塞ごう。
ダメ、聞いてられない。堕ちてまう。
まさか入口から入るなり始まったのがダンジョンとのイチャコラとかさぁ……。
たまげたなぁ、何だこれは。
「ン、ふ、ァ……。罠、一階と二階。そう。ありがと、フフ、好きよ……」
あーあー! 聞こえなーい!
俺の耳には何も何もなーんにも聞こえなーい!
「え、そんな。ウソ、揉むの? え、ええ!? そんな、そこまで……!!?」
おまえはおまえで手で顔覆いながら指の隙間から凝視すんのか、黒女ァ!?
「なぁ、これ裸になる意味、あるのか……?」
「さぁなぁ」
俺が尋ねても、パニは軽く肩をすくめるのみ。
「アム曰く、裸じゃないとしっかり相手を感じられないから。だってよ」
「か、か、感じ、そんな、感じるとか……!」
俺はランを見つめた。
「何だよ……!」
「おまえ実はものすっげぇ興味津々だろ」
「そ、そんなことないモンッ!」
めっちゃ声が上擦ってる。図星じゃねぇか!
「ン、フフ。よかったわ、あなた。ええ、またすぐ会えるわ。待っててね」
「お。どうやら終わったみてぇだぜ」
タイミングを見計らって、パニが軽い足取りでアムの方に向かおうとする。
その背中に、俺はこれまで怖くてきけなかったことをきいてみた。
「……なぁ、パニさん達の冒険者ランクって幾つよ」
「X」
――だ と 思 っ た よ 。
ウルラシオン周辺は国内でも特に遺跡が多いらしい。
全てひっくるめて古代群都市とか呼ばれていて、今も頻繁に遺跡が見つかってる。
確か、現時点で確認されてる小遺跡の数は百を超えるんだったか。
今回、パニが受けてきた依頼も、そんな新発見の小遺跡の調査なワケで。
「あそこか。結構近いんだな」
馬車に揺られること三時間ほど、お昼ちょい前に俺達は遺跡についた。
そこはちょっとした森の中、角度的に外からはまるっきり見えない位置にあった。
近いとはいっても馬車だからであって、徒歩なら半日以上はかかるだろうな。
ここらの遺跡は割と大きな発見も多いから、国やギルドも調査に力を入れている。
おかげで連絡馬車とかも使えるんで、移動は楽なんだよな。
「それでは、明日同じ時間にここに来ますので」
俺達が降りたあと、御者はそう言って馬車で街に戻っていった。
つまり、俺達に与えられた時間は一日。
その間に遺跡内部をできる限り踏破してその構造を調べなければならない。
石造りの壁が半ば地面に埋もれている。
古代文明の建物がほぼ全て森に沈んでる形っぽいな。
発見者は近くの村の子供で、遊びに来てたまたま見つけたとのこと。
壁の一角に大きな穴が開いていて、そこから中に入ることができそうだ。
さーて、冒険冒険。あー、この始まる直前のウキウキがたまんねぇ。
「気を引き締めろよ、グレイ。顔がにやけてるぞ」
「るっせ、るっせ。楽しいじゃねぇか、こういうのってよー」
「――ええ、そうですね。愉しい。フフ」
ゾクリ、とした。
聞いたことのない声が、俺に応じたからだ。
何だ今の声。今の、ぬらりと絡みついてくるような質感の、女の声は。
「オイオイ、アム。まだ入ってもいねぇんだぞ。もう濡れてんのか?」
「だってぇ……、ああ、あんなに大きな穴が。誘っているのね? すぐに行くわ」
え――
今の、アムの声? え? アムの? え、え? アムの声!?
動転して彼女のいる方を振り向けば、そこに俺の知っているアムはいなかった。
代わりに、何だあれ。誰だこれ。
知っている見た目の、知らない女がいるんだが。
「だからよー、恋人だっつったろ」
穴をくぐってダンジョンの中へ。
明かりはなく、当然真っ暗。ランタンに火をつけたときにパニが説明してきた。
「アムはな、“ダンジョンの恋人”なんだよ」
「ごめん、ちょっと言っている意味が分からないんだが……」
説明になっていない説明に、ランが戸惑う。俺も戸惑う。
ランタンの淡い明かりに照らされたパニが「ギャハハハハ!」と爆笑した。
「百聞は一見に如か何とやらってな!」
「そこまで言ったなら最後まで言えよ……」
「見てりゃいいさ。すぐ終わる。終わったら、この遺跡は丸裸さ」
そう言って、彼女がランタンを突き出した先にアムが立っていた。
遺跡の入り口は奥へと続く一本道。その始まりの地点で、アムはただ佇んでいる。
「――フフフ」
また、悪寒に近い何かが俺の背中を走った。
そうだ。あの笑いだ。いつものアムとはかけ離れた、艶しかない笑い声。
そして彼女はスルリと纏っていたローブを脱いで――え? 脱いで?
「ああ、感じるわ。……冷たい空気。固い、そして大きい。あン、逞しいのね」
「な、な? な……!?」
ローブを地面に脱ぎ捨てたアムは、何というか、その、裸だった。
全裸ではなく腰と胸に下着はつけているが、
そんな――上も下も、黒のレース地だって!!?
ランタンの明かりが淡く照らす、その真っ白い柔肌。
なめらかな女体の曲線は一目見るだけで理性が飛びそうなほどに艶めかしく。
身をわずかに隠す下着の黒が、白い素肌を一層強調している。
薄布一枚に覆われるのみの、大きくも形の良いバスト。
腰のくびれはくっきりと、そのクセ尻の丸みは肉の柔らかさを容易く想像させた。
眼鏡を外し、三つ編みを解いて、刹那に広がる銀髪はヴェールのようだ。
ずっと怯えるようだった顔に、今はどうしようもなく蠱惑的な笑みが浮かぶ。
潤む瞳に、頬はかすかに上気して紅潮している。
笑みを刻んで、熱っぽく吐息を漏らしながら、獲物を誘う濡れた唇。
それまでは人の姿だったのに。
ローブを脱いだ今、アムの頭の左右には二本のねじくれた角が生えていた。
そして背中にはゆるやかに動く、コウモリの翼。
サキュバスとしての、これが彼女の本来の姿なのだろう。
ただ立っているだけなのに、そこには異質な美があった。
見る者が圧倒されてしまうほどの女の美が。
思いがけず見てしまったそれに、俺は無意識に息を呑んでいた。
身につけているのは本当に下着だけだ。他には一切何もない。
そんな恰好でかすかに身を震わせて、一体何してんスかこの女!?
「ァん……」
かすかに開いた唇より、切なげな吐息が漏れるのが聞こえた。
ねぇ、ホントに何してんの、ねぇ!!?
「は、ァ……。フフ、ン……。ぅ、ん。は、ン、……ッ。いいわ。とっても……」
これ喘ぎ声ッスよねェ!!?
「なぁ、アムは一体何をしているんだ。何が起きてるんだ、なぁ!?」
混乱を隠し切れず、ランが縋るようにしてパニを問い質そうとする。
だがパニはそれを楽しむようにニヤニヤ笑いながら、
「逢瀬。ダンジョンとのな」
その答えで、一体俺達に何を理解しろというのか!
「――そう。全部で地下四階なのね。……ええ、あなたのこと、もっと教えて?」
「「え」」
今、なんつった。
この遺跡が、地下四階まである?
「アムはな、ダンジョンと触れ合えるんだよ。実際に、肌を重ねるようにして」
「肌を重ねる、って……」
「ダンジョンとイチャイチャチュッチュ真っ最中ってこった! ギャハハハハ!」
「笑いごとなのかそれは! なぁ、なぁ!?」
大笑いしているパニの肩を掴んで、ランが悲鳴じみた声をあげる。
あかん、完全にキャパオーバーしてらっしゃる。
「ひ、あァ……、あン。ァ……、ンッ、くゥゥ、ん……!」
声を漏らすたび、それは強く色を帯びていく。
聞いているこっちまでもが飲み込まれそうな深い深い、色欲の深淵。
パニの話が事実なら、アムは今この場でダンジョンの全てを感じ取ってるのか。
けど、この声は――
「あァ! はッ、ふぁ、ひァ……。そう、もっと、もっとあなたをさらけ出して」
ああ、耳塞ごう。
ダメ、聞いてられない。堕ちてまう。
まさか入口から入るなり始まったのがダンジョンとのイチャコラとかさぁ……。
たまげたなぁ、何だこれは。
「ン、ふ、ァ……。罠、一階と二階。そう。ありがと、フフ、好きよ……」
あーあー! 聞こえなーい!
俺の耳には何も何もなーんにも聞こえなーい!
「え、そんな。ウソ、揉むの? え、ええ!? そんな、そこまで……!!?」
おまえはおまえで手で顔覆いながら指の隙間から凝視すんのか、黒女ァ!?
「なぁ、これ裸になる意味、あるのか……?」
「さぁなぁ」
俺が尋ねても、パニは軽く肩をすくめるのみ。
「アム曰く、裸じゃないとしっかり相手を感じられないから。だってよ」
「か、か、感じ、そんな、感じるとか……!」
俺はランを見つめた。
「何だよ……!」
「おまえ実はものすっげぇ興味津々だろ」
「そ、そんなことないモンッ!」
めっちゃ声が上擦ってる。図星じゃねぇか!
「ン、フフ。よかったわ、あなた。ええ、またすぐ会えるわ。待っててね」
「お。どうやら終わったみてぇだぜ」
タイミングを見計らって、パニが軽い足取りでアムの方に向かおうとする。
その背中に、俺はこれまで怖くてきけなかったことをきいてみた。
「……なぁ、パニさん達の冒険者ランクって幾つよ」
「X」
――だ と 思 っ た よ 。
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