最強パーティーを追放された貧弱無敵の自称重戦士、戦わないくせに大活躍って本当ですか?

はんぺん千代丸

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第1章 最速無敵の天才重戦士 

第12話 最強パーティー、仲間を見捨てる

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 僕はヴァイス、Aランク冒険者だ。
 ウルラシオン最強のパーティー『エインフェル』のリーダーをしている。

 僕達『エインフェル』は、間違いなく最強のパーティーだ。
 けれど、僕達は失敗した。
 Sランクダンジョン“大地の深淵”の攻略に挑み、そして全滅したのだ。

 取得していた蘇生資格のおかげでこうして生き返ることはできた。
 しかし神殿への多額の寄付と寿命一年分を対価として支払うことになった。
 神殿で蘇生されてから三日、僕達はまだ再突入をしていない。

 一体、何がいけなかったのか。
 最高の加護を授かった最高のメンバーと、最高の装備。最高のアイテム。
 そして攻略するためにとった作戦だって間違っていなかったはずだ。

 尽くせる手は全て尽くしたと断言できる。
 だがそれにも関わらず僕達は“大地の深淵”の門番に対して無力だった。
 善戦できた。なんて聞こえのいい言葉は必要ない。

 負けた。
 それが全てだ。

 相手は軍隊にして群体たる門番モンスター“魔黒兵団”。
 かつて、最初の挑戦では苦もなく勝つことができた相手である。

 一体、何がいけなかったのか。
 その日、僕達はウルラシオンの一等地にあるハウスに集まって話し合っていた。

「おまえ達は本当にあれに一度勝ったのか」

 会議用の大部屋で、まず口を開いたのは壁役のザレックだった。
 “鋼壁”の名で知られる孤高のAランク冒険者。
 数々のAランクパーティーを渡り歩き、様々な伝説を打ち立ててきた男だ。

「ええ、確かに勝ちました。そのとき苦戦した記憶はありません」

 答えたのはリオラ。
 僕やクゥナの幼馴染で、魔術師にして僧侶たる魔導のエキスパートである。
 そして彼女の言う通り。最初の挑戦で確かに“魔黒兵団”は撃破できた。

「信じがたい」

 だが、ザレックは乾いた唇から会議の言葉を紡ぎだす。
 そうだろう。無理もない。
 僕自身、そしておそらくリオラ自身も同じ思いだろうから。

「俺はここを除いてこれまでに七回、Sランクダンジョンに挑んだことがある」

 七回。尋常ではない数だ。
 普通のAランク冒険者ならば多くても生涯に三回もあるかどうかだろう。
 それを思えば、ザレックの実力の凄まじさが分かる。

 最高危険度を誇るダンジョンに七回も挑みながら、なお生き残っている。
 彼の生存能力の高さは、やはり僕が見込んだ通りだ。
 しかし、

「だがな、どのダンジョンのモンスターも、あそこまで強くはなかった」

 次に告げられたその言葉は、僕の中の確信に暗雲をもたらすものだった。

「何なのだ、あの“魔黒兵団”というのは。あんなものは見たことがない」
「門番、ですわ」
「信じがたいと言っている」

 Sランクダンジョンには必ず最初に遭遇するボスモンスターが存在する。
 門番とは、そのボスモンスターの共通の通称だ。
 ダンジョンに挑む資格があるかどうか、それを測るための試練と言われている。

 ザレックはこれまで七回、門番との戦闘を経験してきたことになる。
 そのザレックをして見たことがないとまで言わしめるのか、あの“魔黒兵団”は。

「俺の目算に狂いがなければ、あれは他のSランクダンジョンの深層、いや、最深層に出現する災害獣並の戦力を持っているぞ」

 災害獣というのがSランクダンジョンの奥深くにのみ生息するモンスターだ。
 ボスモンスターではないのに、その力はボスモンスターを凌駕することすらある。
 遭遇すれば即全滅の危険もある、文字通り災害のような存在だ。

「それは、さすがに僕の方が信じがたいな」

 確かに“魔黒兵団”には勝てなかったが、しかし災害獣並というのは言い過ぎだ。
 僕達は前に一度勝っている。その経験を活かせなかっただけだ。

「俺の言葉が信じられないか?」
「君こそ、僕やリオラを信じられないと言ってたじゃないか」

 僕とザレックは大卓を挟んでしばしにらみ合った。

「ちょっとちょっと、今はそんなことやってる場合じゃないのよー!」

 ガタッ、と椅子から立ち上がり、盗賊のクゥナが割って入ってくる。
 僕とザレックは彼女を見て、ほぼ同時に嘆息した。

「そうだな。ここでいがみ合って何の益になるのか」
「僕も同意見だ。話を前に進めよう」

 ここにいる四人は敗者だ。
 全滅という、冒険者としての最高の屈辱を味わった者同士なのだ。
 その汚名を晴らさなければならない。今回こそ、何としても。

「僕達には、何が足りなかった?」
「足りないものは何もなかったはず、ですよね」

 リオラがあごに手を当てて考えながらつぶやく。
 そう。足りないものは何もない。整えられる準備は全て整えていたはずなのだ。

「だったら、前と何が違っていた?」
「壁役がザレックおじちゃんじゃなかったことくらい、なのよー」
「おじさんではない。俺はまだ二十八だ」

 十分おじさんだと思うが、僕はそれを口にはしない。
 クゥナの指摘は確かにその通り。最初に挑んだ際、壁役は彼ではなかった。
 そのときの壁役は、名前を思い出したくもないあの寄生虫。

「そういえば確認していなかったが、俺の前の壁というのはどんな男なのだ」
「それは今しなくちゃいけない話なのかな」

 思いがけずザレックがクゥナの話に食いついてきた。
 どうして、そんなことに意識を向けようとするのだろうか、彼は。

「今せずにいつするというのだ」
「そもそも必要がないよ。前の壁役は寄生虫のクズだった。それで終わりさ」
「おまえから見ればそうだろう。だが俺から見れば違うかもしれない」

 僕が言っても、ザレックは引こうとしない。
 全く、ときとしてこういう性格は厄介だ。いつでも自分を貫こうとする。
 だが彼は誇り高き“鋼壁”。こう言えば伝わるはずだ。

「回避盾だよ。自称、天才重戦士のね」
「回避盾だと……?」
「そーなのよー。いつでも逃げ回ってばっかのヘタレチキンなのよー」

 クゥナが言葉を添えてくる。そうだ。逃げるしか能のない、軟弱な男だ。
 僕とクゥナに言われ、ザレックはその顔を苦々しく歪めた。

「悪かったな、ヴァイス。案外その前の壁役が重要な役割を果たしていたかと思ったが、そんなことはなさそうだ。よりによって回避盾か、くだらん」
「そこまで言われるのですね」
「無論だ。俺達重戦士の神髄は逃げぬこと、退かぬことよ」

 その太い腕をしっかりと組んで、ザレックは椅子に深く身を沈めた。

「回避盾など、所詮はたまたま目立つだけの臆病者。何が盾だ。逃げているだけの分際で。そんなものは誰でもできる。重戦士を名乗ることすらおこがましい」
「さすがだ。そうさ。君の言う通りだよ、ザレック」

 あれを仲間にしていた一年間は、僕達にとって何ら益のない時間だった。
 ああ、思い出したくもない。
 幼馴染というだけの繋がりで保たれていた無益に過ぎる関係など。

「さぁ、分かったら話を戻すぞ。僕達はできる限りの準備をした。それでも届かなかった。何が足りなかったんだ。他に何ができるんだ?」

 筋を戻して、僕は皆に改めて問いかけた。

「リオラ、何か気が付くことがあるなら言ってくれ」
「人数が足りないのではないでしょうか」

 リオラがそう分析する。

「敵は百体からなる群体型のモンスターです。いかに壁役としては最高峰のザレックさんでも、一人では限界が生じるのも仕方がない話では?」
「俺にケチをつけるつもりか、リオラ」
「そうは言っていません。ただ、前回の状況を分析する限り、敵の攻勢がザレックさんの処理能力を超えた結果、押し切られてしまった。そう見るのが妥当では?」

 尋ねられて、ザレックは腕組みをしたまま考え込む。
 そして彼はそれまでよりもさらに顔を苦く歪めて不承不承、うなずいた。

「――忌々しいが認めよう。その通りだ。俺は阻みきれなかった」

 彼がそう言うのならば、そうなのだろう。
 そして彼の言葉から、僕達がこれからどうするべきかも見えてくる。

「人を増やそう。壁役を、だ」

 僕が言うとザレックの顔色が露骨に変わった。
 だが君が認めたことだ。君が自分では実力不足だったと、そう認めたのだから。
 リーダーとして、僕は全体を考えた判断をさせてもらう。

「具体的には、どのような?」
「Bランクの壁役を複数人募る。『エインフェル』の名を出せば簡単だろう」
「俺とそいつらを、同等に扱うつもりか」

 ザレックが口を挟んできた。
 こいつは、この期に及んで自分のプライドをとるつもりか。
 だが、へそを曲げさせたままなのはよくない。今は彼に譲るとしよう。

「いや、壁部隊の指揮権は君に預けるよ、ザレック。それでどうかな?」
「……俺はそれでいい。だが、おまえはいいのか?」
「何がかな?」
「パーティーのランク特権を用いれば、BランクでもAランク待遇を受けられる」
「ああ」
「つまり、本来Bランクの人間が、“英雄位”の号を授かることになるのだぞ」
「…………」

 痛いところを突いてくれる。
 だが、彼はそこまで気づけているクセに重要な部分をまるで分かっていない。

「君自身が自分だけでは足りないと認めたんだ。なら、こうするしかない」
「…………チッ」
「僕だって業腹さ。でも僕にそう判断させたのは誰なのか、そこを考えてくれよ」
「無論、理解はしている。だからおまえを支持するさ。今のところはな」

 今のところは、か。僕は顔に笑みを作りながらも、内心にため息をついた。
 自分で実力不足を認めておきながら、どうにも彼はプライドが高すぎる。
 実力が伴わないプライドなど、何の価値もないだろうに。

「話は、これで終わりか?」
「ああそうだね。方向性は決まった。僕はすぐにギルドへ向かうよ」
「ならば俺も出かけるぞ。ではな」

 言うが早いか、ザレックは席を立ってさっさと部屋を出ていった。
 残ったのは三人。クゥナがドアの方を見てつぶやく。

「ザレックさん、何か怖いのよー……」
「クゥナ、やめなさい。ザレックはヴァイスが選んだ仲間なのですよ」
「むー……、リオラねーちゃんはいっつもそれなのよ」

 僕はクゥナを見る。

「何だい、クゥナ。僕の判断が何か不服なのかい?」
「そうじゃないのよー。でも、ザレックさんは何だか、仲間っていうか……」

 そこで口ごもって、しかしクゥナはそれ以上は言わなかった。
 僕が彼女に言わせなかった、ということでもある。

「今まで、僕は間違ったことなんてなかっただろ」
「そうだけど……」
「ええ。そうです。私達はヴァイスに従っていればいいのです」

 リオラはよく分かっている。
 そう。僕は正しい。僕は間違わない。だからこそ今の『エインフェル』がある。

 確かに一度は全滅した。失敗し、殺されて、寿命を縮めてしまった。
 だがそれは、神が僕に告げているのだ。
 これは試練である、と。挫折もまた必要なファクターなのだ、と。

 僕達は挫折を味わった。
 これまで本当の意味で失敗したことがなかった僕達は、あの戦いでそれを知った。
 一つ強くなれたということだ。

 僕は王。生まれ持っての王の資質を持つ男。
 リオラだって、クゥナだって、共に王となる才を持っている仲間だから。
 使えるものは何でも使おう。それがザレックだろうと、別の誰かであろうとも。

「僕はギルドに行ってくる。二人はどうする」
「私はヴァイスに同行します」
「クゥはお散歩行ってくるのよー……、気分転換したいの」

 そしてクゥナも部屋を出ていった。
 少し、参っているようだな。今夜辺り少し話をした方がいいかもしれない。

「ヴァイス」
「どうかしたかい」
「今回の全滅についてですが」
「ああ」

 苦い話題をあっさりと口にできる。これもリオラという女の強さの一面。
 いつでも理性的に行動できるのがリオラの最たる特徴だ。

「残念なことに、レベルが上がっていませんでした」
「そういえばそうだったね。……珍しいこともあるものだ」

 全滅しても、それまで得た経験値が消えるワケじゃない。
 今回も今まで同様、幾らかはレベルが上がっていたかと思ったが――

「まぁ、僕は52。君ももう49だ。上がりにくくなるのは当然だろうね」
「ええ」

 レベルが上がれば、次のレベル上昇までに必要な経験値もまた増える。
 ここまでが駆け足だったのだから、そろそろレベルの上昇も落ち着いてくるか。

「そう心配はいらないさ。次でまた上がる」
「そうですね。ええ」
「じゃあ、ギルドに行くよ、リオラ」

 僕もリオラを連れて部屋を出る。
 ギルドに赴いて、Bランクの壁役を複数引き入れて、壁部隊を作って、

「次は上手く行くさ。次こそ、僕達は“英雄位”にいたる」
「ええ、分かっています。ヴァイス」

 リオラが僕の手を握ってくる。

「あなたならばできます。あなたは『エインフェル』の王なのですから」
「――ああ」

 僕はリオラの手を強く握り返し、そしてギルドへと向かった。
 次は大丈夫だ。次こそは。次こそは――


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 次こそは――そう、思っていたのに。

「あああああああああああああああああああああ!」
「ダメだ! 全然止まんねぇじゃねぇかよ! ダメじゃねぇかよぉぉぉ!」

 Sランクダンジョン“大地の深淵”第一層。
 僕達はそこで、この前の焼き直しを演じつつあった。

 群れで攻めてくる漆黒の重鎧。
 その向こうには“大地の深淵”の入り口である“鉄鎖の大門”が見えている。
 だが届かない。押し寄せる黒き鎧の軍勢が、壁部隊を圧殺していく。

 五人――ザレックを含めて五人だぞ?
 ウルラシオンにいる冒険者の中でも僕が直々に厳選した四人の壁役。
 いずれも有望な、実力的にも期待できる冒険者を選んで連れてきたというのに。

「ザレック、ザレ――ック! どうなってるんだ! こっちに敵が来てるぞ!」
「うるさいぞ! それよりも回復はまだか! 回復をよこせ!」

 同じだ。
 この前と何も変わっていない。
 黒い鎧騎士の一部が壁を越えてこちらにまで押し寄せている。
 そして潰れかけた壁部隊からは、こっちの回復を急げと催促が飛んできて、

「ふざけるな! こっちの対応の方が先だ! そっちの誰かを回してくれ!」
「却下だ! 全員で維持せねばこちらが先に崩壊する!」

 何を言っているんだ、この男は!

「僕達を守れ! そのための壁役だろう! そのための壁部隊だろう!」
「だったらさっさと回復をよこせ! こっちが持ち直せばそっちに戦力を回す!」

 ダメだ、話にならない。

「ヴァイスにーちゃん、これ以上は無理なのよ! 十体以上がこっちに!」
「ヴァイス、どうするのです! 回復ですか、一番近い敵への攻撃ですか!」

 僕は判断を迫られた。だが迷いはしない。僕は正答を知っている。

「もちろん攻撃だ! 僕達がここで沈むわけにはいかない!」
「ヴァイス、こっちは限界だぞ? 俺達が倒れればどうなるか分かるだろうが!」

 ザレックが大声で僕に向かって意見を飛ばす。
 まだ言うか、この無能め。

「――もういい! おい、そこの君! 君はまだ無事だな?」

 僕はザレックに見切りをつけ、近くにいたBランクの壁役に声をかけた。

「あ、お、俺ッスか?」
「そうだ君だ。こっちを守ってくれ。僕達がやられたら終わりなんだ!」
「ヴァイス、どういうつもりだ! 壁部隊の指揮権は俺にあるはずだろうが!」

 うるさい。何が“鋼壁”だ。
 一度ならずに度までも、こんな無様な失態を演じやがって!

「君、早くこっちに来い! 僕達を守ってくれれば、正規メンバーにしてやる!」
「え、あの……」
「行くなグランツ、こっちだ! こっちで俺達のカバーに入れ!」

 僕が指示を飛ばすと、負けじとザレックが指示を上塗りしてきた。
 グランツと呼ばれたBランクの壁役があたふたする。ダメだ。これはいけない。

「ザレック、いいかげんにしろ!」
「それこそこっちのセリフだ、ヴァイス! おまえに俺は使えない!」

 この――!

「デ、デカイのが来たぞォォォォォォォォォォォォ!!?」

 僕がザレックを睨もうとした、そのときだった。
 最前線に立つ壁役が絶叫する。驚きながらそちらを見て、僕は絶句した。

「何だ、あいつは……」

 そこにいたのは巨人だった。
 周囲の黒騎士の優に三倍はありそうな、巨大な黒い鎧騎士。

 待ってくれ、何だあいつは。
 前も、その前も、あんなのは現れなかったじゃないか!?

 ギギギ、と、鎧巨人が身を軋ませて動き始める。
 それを見た僕の脳裏に、全滅の二文字がよぎった。

 また、か。またなのか。
 また僕達は届かずに、こんなところで――

「ヴァイス!」
「あっ」

 リオラの声に、僕は我に返った。
 そうだ、呆けているヒマなんてない。僕は判断しなければならない。

「ここまでだ!」
「何だと、ヴァイス、どういうつもりだ!」
「ここまでだと言っている! クゥナ、生還符をくれ。地上に戻るぞ!」

 ザレックが文句を言ってくるが、聞いていられるか。
 二度も全滅するわけにはいかない。僕達にはまだ機会がある。
 僕達は『エインフェル』だ。この程度の試練は乗り越えられるんだ。

 だが、全滅はダメだ。
 僕達にとっては辛酸にしかならない。パーティーの評判だって落ちる。
 とにかく生きて帰らなければならない。

「はい、ヴァイスにーちゃん、生還符なのよ!」
「行くぞ、みんな!」
「待て、ヴァイス、こっちはどうするつもりだ!」
「知るか! 君達だって生還符くらい持ってるだろ。勝手に帰ってこい!」

 僕はクゥナから生還符を受け取って、それを手の中でクシャリと握り潰した。
 そうすることで符に込められた魔力が解き放たれ、転移が行なわれる。

「俺達を切り捨てるんだな。いいだろう。この扱いは忘れんぞ、ヴァイス!」

 ザレックが何かを言っている。
 だがそれこそ知ったことか。役に立たない壁役に存在価値などない。
 Bランクの壁役四人だってここで死んでも別にいい。

 彼らだって冒険者だ。
 それにBランクならば蘇生資格くらい取っているだろう。
 死んだって生き返れるんだから、ここで僕が見捨てても何の問題がある。

 こうして、僕達の三度目の挑戦もまた失敗に終わった。
 そして――

 四人中二人。
 結局全滅したBランクの壁役四人中二人が、蘇生資格を取っていなかった。
 僕がそれを知ったのは、街に帰ってから半日後のことだった。
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