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幕間 『出戻り』達のサマーデイズ
第94話 水曜日/どッも、片桐商事でございまッす!:後
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提案されたのは、業務提携だった。
「実はッよ、業務拡大してぇなッて考えてッだ、俺」
「ほぉ、業務拡大……」
それは、業績が好調なら考えてもいいことだと思う。
が、マンパワー足りてるんか、という部分で心配になっちまうな。
「多分、父ちゃんが考えてッこととは別方向だと思ッわ」
「……別方向?」
俺が首をかしげると、タクマは軽く説明してくれた。
「裏社会によ、手ェ伸ばしてみッかなッてよ」
「オイオイ……」
裏社会。その言葉が意味するところは、タクマも理解しているだろうが――、
「おまえ、荒事とかはからっきしじゃねぇか……」
そう、タクマはそっちの才能がとことんない。
見た目、いかにも屈強に見えるが、人を殴るのが嫌いというか苦手な性格だ。
だから喧嘩も弱いし、異面体だって戦闘能力を有していない。
「ん~、ッだよな、俺ッちもわかッちゃいるッしょ」
タクマは苦笑するが、しかし、その瞳に宿る光は強く鋭い。
「俺ッちさ、こんな性分ッしょ? だッから知り合いは無駄に多いんッすわ」
「そりゃわかるよ。片桐商事なんて、俺だって噂で名前知ってるくらいだしな」
表向きはただの小学生でしかない俺までもが知ってる名前。
それは、市内でそれだけ片桐商事の名前が売れている。知名度が高いってことだ。
「だッからよ、時々来ッちまうんだわ……、荒事ッ関連の依頼がッよ」
「あ~……」
タクマの見た目もあって、そういう分野にも精通してそうと思われちゃうワケか。
「これまではッさ、断ッてたワケよ、俺ッてばそゆのやんねッし」
「だけど、昨日、俺と繋がりを得たから、と……?」
「そゆこッと。最近あッた北村ンットコの壊滅と芦井の大量検挙。やッたのッて」
「まぁ、おまえ相手に隠して意味ないから言うけど、俺だな」
認めると、タクマは「ッしゃア、ビンゴッ!」とガッツポーズ。
そしてニヤリと笑みを深めてこっちを見る。
「傭兵、こッちでもやッてッしょ?」
「やってる」
「だッから、父ちゃんに業務提携のお誘いッつ~ワケよ」
ソファに深く身を沈め、まるでそこが我が家かのように振る舞うタクマ。
なるほどなるほど、言いたいことはわかった。
つまりタクマは客と俺とを結ぶ仲介役になることを提案してきてるワケだな。
と、なると――、
「何かあるんだな。こっちに任せたい案件が」
「御名ッ答、んじゃッ、当社より今ッ回のプレゼンはじめまッす~!」
妖精さんがあくせく働いているさなか、タクマは俺に資料を見せてくるのだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
夜の、天月市。
郊外の片隅に、煌々と明かりがついている家がある。
ガレージと門前に、派手な色の車が二台。どちらもこの家の車ではない。
そして、今、あの家で騒いでいるのも、この家の住人ではない。
あの家は里内という人の家で、タクマの高校からの友人の家だという。
昨夜、その友人からタクマにメールが来た。
数日前から、半グレのグループ数人が家を占拠している。助けてくれ、とのこと。
そして、そのメールには『ガンナーヘッズ』という名前が記されていた。
タクマには、その名前に覚えがあった。
それは高校時代にタクマを『出戻り』させた連中だった。
「OK、契約成立。そいつら、今夜ブチ殺してくるわ! 結果報告お楽しみに!」
「お、おぉッ、頼むッぜ……!」
俺、ニッコニコでタクマを握手して、今に至る。っつーワケですよ。
そっかー、タクマを『出戻り』させた連中かぁ~。
しかも、何、タクマの親友の家を占拠してドンチャン騒ぎ。うわ~、極悪非道!
「……グチャグチャにしてやるよ」
俺は『出戻り』をする前のタクマの性格を知らない。
でも、俺が知っているタクマは、喧嘩できないクセに正義感が強いヤツだった。
だからきっと、タクマはその正義感が災いして喧嘩に巻き込まれたのだろう。
そして、抗えないまま無念の死を遂げたのだろう。
きっとそうだ。そうに違いない。
と、俺は自分勝手にストーリーを組み立てて、自分勝手に怒りを燃やす。
だが別にそれでいい。
一度タクマを殺したというだけで、連中は俺の恨みを買っている。
これから訪れる連中の死に、道理も正当性も必要ない。俺に恨まれた以上、死ね。
「じゃ、早速行ってみようか~♪」
ドアに金属符を張りつけて、家と庭とを『異階化』。
そこからインターホン連打連打! ドア、ドンドンガンガン、ドンドンガンガン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ドンドンガンガン! ドンドンガンガン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ドンドンガンガン! ドンドンガンガン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ドンドンガンガン! ドンドンガンガン!
「ッだ! うるっせぇな!」
ドア越しに、荒っぽい声が聞こえる。
そしてバタバタと大股の足音がしたのち、ドアが無造作に開かれた。
「誰だッ、夜にうるせぇんだよ!」
「や、こんばんは」
姿を見せたガタイのいいニイちゃんに、俺は朗らかに挨拶をする。
「あ、ガキ……?」
「こちら、里内さんのお宅ですね。そしておまえらは『ガンナーヘッズ』ですよね」
「はぁ? だったら何だよ?」
「今日まで強者だったおまえらは、今この瞬間から弱者になったぞ」
「……あぁ?」
理解できていない様子のニイちゃんに、俺は取り出したダガーを振り上げる。
「え、刃物……?」
アホ面見せるニイちゃんの太ももに、ダガーを根元までザックリと突き立てる。
一瞬、ニイちゃんはダガーが刺さった自分の太ももを見下ろし、ポカンとして、
「ぃギッ!」
「おぉ~っと、ここでの悲鳴はご近所迷惑だぜェ!」
俺の頭上に出現したマガツラの腕が、ニイちゃんを家の中へと突き飛ばす。
そして倒れたニイちゃんにそのまま馬乗りになり、両手に新たにダガーを掴む。
「君、名前は?」
「あ、ぁ、お、ぉぉ、はら……」
馬乗りになった俺に怯えたのか、ニイちゃんは素直に自分の名前を吐いた。
「OK、大原。おまえはこれから『大原』という楽器だ! 精々高らかに鳴いて、この家にいる他の連中を呼び寄せてくれやァァァァ! ァァッハハハハハハァッ!」
大原の胸に、両手に掴んだダガーを、突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す、突き刺していく――――ッ!
「ギャバッ、ガァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアァ――――ッ!?」
玄関口に響き渡る、世界に一つだけの楽器『大原』の音色。
ん~、汚ェ。聞くに堪えない音色とはまさにコレ。ドブ川を音にしたかのようだ。
「何だァ、今の悲鳴は!」
「襲撃かよ、どこのモンだ!」
バタバタと大原と似たような足音を立て、二人のチンピラが二階から降りてくる。
片や、スキンヘッドにサングラス。片や、金髪ロン毛に口ピアス。
どっちも、その手に金属バットと木刀を手にしている。おお、武装済みかぁ。
「やぁ」
大原の両胸にダガーを突き立てて、俺は降りてきた二人に挨拶をする。
さて、彼らには息絶えた大原の上に乗ってその血に染まった俺はどう見えるかな。
「……ひっ!」
「な、何だこのガキッ!?」
ああ、そういう反応ね。うん、そっか。
「俺? 俺は強者だよ。こんばんは、クソ弱者風情の『ガンナーヘッズ』の皆さん」
「なっ、てめッ、ナメやがって……!」
俺の挑発に乗って、スキンヘッドの方が金属バットを振り上げようとする。
しかし、直後にガキンッ、と激しい金属音がその場に鳴り響いた。
「……あ?」
間の抜けた声を出し、スキンヘッドが自分のバットを見る。
金属バットは、根元部分からなくなっていた。
そして次に、それを見て硬直するスキンヘッドの、バットを握る手がなくなった。
バツンッ、と音がして、バットの根元部分ごとこそげて消えたのだ。
そこに至り、ようやくスキンヘッドも隣の金髪ロン毛も、硬直から脱する。
「ヒギャアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ――――ッ!?」
「な、な、何だよ、これェェェェェェ~~~~!?」
ンフフ、驚いてる驚いてる。
「ビックリした? ビックリしたよねェ~! それ俺が契約してる魔獣の一つで、次元の狭間に隠れて対象を空間ごと食い散らかす、ハザマダイルっていうんだぜ!」
わかりやすく言えば、一定範囲を防御無視攻撃で消滅させる見えないワニである。
頭もいいから、俺の命令にも素直に従ってくれる可愛いヤツさ!
ハザマアギトの大きなアギトが、スキンヘッドの手首から肘までを喰らう。
断面から血が噴いて、隣の金髪ロン毛をビシャアと赤く汚した。
「うわぁぁぁぁ、あああああああああああああああああああああ!?」
「ヒィ、ヒギィィ、痛ェェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」
恐怖に騒ぎ出す金髪ロン毛と、激痛に泣き叫ぶスキンヘッド。
「うわ、可哀相だなぁ。痛そうだなぁ。でも全部、おまえらが弱いのが悪いんだぜ」
ニコニコ笑いながら、俺はハザマダイルに命令を下す。
それに従って見えないアギトがスキンヘッドをドンドンと喰らっていく。
腕、肩、胸。そして、そこから続いて頭、と。
「あぁ、あぁ、あああ、あああああああああああ――」
ゾリッ、と削れる音がして、スキンヘッドのスキンヘッドがこの世から消えた。
首周りごと頭を失った惨殺死体が、グラリと傾いで隣の金髪ロン毛に寄っかかる。
「あぁ、うあああああああぁぁぁぁぁああああぁぁぁ! ああああぁぁぁぁぁ――」
「喰らえ」
俺が命じ、騒ぐ金髪ロン毛の頭も次の瞬間には不可視のアギトに喰われて消えた。
そして俺は、玄関口に三つの死体を残して、二階へと上がっていく。
やはり、この家の人間は二階に監禁されていた。
散々殴られたらしく、血まみれで、顔もすっかり変形して、縛り上げられている。
家人は三人。父と母と、タクマの友人らしき二十歳程の青年。それと――、
「な、何だこのガキ……ッ!」
玄関に出た大原と同じような反応を示す、四人のチンピラ共。
全員がすでに臨戦態勢で、手にそれぞれ武器を持って、二階の通路に出ている。
俺は偵察用のゴーグルにより、二階全体を見通していた。
「……本当におまえらは」
俺はゴーグルを外してため息をつく。
「おまえらみたいな連中は、自分より弱いモノにしか強く出れないんだなぁ。腕っぷしだけを頼りにしたところで行き着く先なんて決まってるって、そんなこともわからない連中だモンなぁ。まぁ、だから、死ね。惨殺されて死ね。喰われて死ね」
ハザマアギトを、さらに何体も召喚。食い散らかせとだけ命じる。
「ひぃ、ぎゃあ!?」
「な、お、俺の腕、腕がァァァァァァァッ、あぎッ!」
「ギャアアアアアア! た、たす、助け……、あああああああああああああ!」
十重二十重に悲鳴が響く中、俺は二階の奥の部屋へ。
そして、そこに転がっている三人に、まずは治癒魔法で負傷を治してやる。
「あんた、里内芳樹?」
「……ぅ」
青年は小さく呻いたのち、ゆっくりとうなずいた。
「片桐逞から頼まれて、あんたを助けに来た。ここにいる連中はすぐいなくなる」
「た、たくま……ッ」
タクマの名前を聞くと、里内の目に涙が浮かぶ。
「このあと警察が来るかもしれないが、俺のことは黙っておいてくれよ?」
「ぅ、はい、はい……!」
里内が応じるのを見届けて、俺はこの家の人間三人を睡霧の魔法で眠らせた。
そして、気がつけば悲鳴は聞こえなくなっていた。
通路に出ると、そこにかすかに残された『さっきまで人間だった肉片』が幾つか。
ハザマダイルの欠点がこれだな。一口がデカイ分、食い残しが出てしまう。
「やれやれ、殺傷力と速攻能力は満点なんだがな……」
俺はそうボヤいて、ゴウモンバエを召喚する。
全部食い尽くすという点では、やっぱこっちなんだよな~。
「さて……」
ゴウモンバエが死体を食い尽くすのを待って、俺は玄関で金属符を回収する。
それによって『異階化』は解けて、血に汚れた玄関も元に戻る。
さっさと退散しようと外に出て――、うわぁ、そういえば車が残ってやがったー。
これも片付けないとな。
アフターケアまでしっかりやってこそのお仕事ですよ。
ってことで、俺は車二台を巻き込んで、飛翔の魔法で空へと上がる。
ここが人の少ない郊外でよかったぜ。おかげで人に見られずに済むわ~。
そして俺は、遥か遠くの山中でハザマダイルを召喚し、二台の車を喰らわせた。
あばよ『ガンナーヘッズ』。
おまえらの痕跡は、これで何もかもこの世から消え去った。
「ふぅ、弱い者いじめするヤツいじめをしたあとは最高に気持ちがいいぜ~!」
俺は、爽快な気分で宙色市へと戻っていった。
「実はッよ、業務拡大してぇなッて考えてッだ、俺」
「ほぉ、業務拡大……」
それは、業績が好調なら考えてもいいことだと思う。
が、マンパワー足りてるんか、という部分で心配になっちまうな。
「多分、父ちゃんが考えてッこととは別方向だと思ッわ」
「……別方向?」
俺が首をかしげると、タクマは軽く説明してくれた。
「裏社会によ、手ェ伸ばしてみッかなッてよ」
「オイオイ……」
裏社会。その言葉が意味するところは、タクマも理解しているだろうが――、
「おまえ、荒事とかはからっきしじゃねぇか……」
そう、タクマはそっちの才能がとことんない。
見た目、いかにも屈強に見えるが、人を殴るのが嫌いというか苦手な性格だ。
だから喧嘩も弱いし、異面体だって戦闘能力を有していない。
「ん~、ッだよな、俺ッちもわかッちゃいるッしょ」
タクマは苦笑するが、しかし、その瞳に宿る光は強く鋭い。
「俺ッちさ、こんな性分ッしょ? だッから知り合いは無駄に多いんッすわ」
「そりゃわかるよ。片桐商事なんて、俺だって噂で名前知ってるくらいだしな」
表向きはただの小学生でしかない俺までもが知ってる名前。
それは、市内でそれだけ片桐商事の名前が売れている。知名度が高いってことだ。
「だッからよ、時々来ッちまうんだわ……、荒事ッ関連の依頼がッよ」
「あ~……」
タクマの見た目もあって、そういう分野にも精通してそうと思われちゃうワケか。
「これまではッさ、断ッてたワケよ、俺ッてばそゆのやんねッし」
「だけど、昨日、俺と繋がりを得たから、と……?」
「そゆこッと。最近あッた北村ンットコの壊滅と芦井の大量検挙。やッたのッて」
「まぁ、おまえ相手に隠して意味ないから言うけど、俺だな」
認めると、タクマは「ッしゃア、ビンゴッ!」とガッツポーズ。
そしてニヤリと笑みを深めてこっちを見る。
「傭兵、こッちでもやッてッしょ?」
「やってる」
「だッから、父ちゃんに業務提携のお誘いッつ~ワケよ」
ソファに深く身を沈め、まるでそこが我が家かのように振る舞うタクマ。
なるほどなるほど、言いたいことはわかった。
つまりタクマは客と俺とを結ぶ仲介役になることを提案してきてるワケだな。
と、なると――、
「何かあるんだな。こっちに任せたい案件が」
「御名ッ答、んじゃッ、当社より今ッ回のプレゼンはじめまッす~!」
妖精さんがあくせく働いているさなか、タクマは俺に資料を見せてくるのだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
夜の、天月市。
郊外の片隅に、煌々と明かりがついている家がある。
ガレージと門前に、派手な色の車が二台。どちらもこの家の車ではない。
そして、今、あの家で騒いでいるのも、この家の住人ではない。
あの家は里内という人の家で、タクマの高校からの友人の家だという。
昨夜、その友人からタクマにメールが来た。
数日前から、半グレのグループ数人が家を占拠している。助けてくれ、とのこと。
そして、そのメールには『ガンナーヘッズ』という名前が記されていた。
タクマには、その名前に覚えがあった。
それは高校時代にタクマを『出戻り』させた連中だった。
「OK、契約成立。そいつら、今夜ブチ殺してくるわ! 結果報告お楽しみに!」
「お、おぉッ、頼むッぜ……!」
俺、ニッコニコでタクマを握手して、今に至る。っつーワケですよ。
そっかー、タクマを『出戻り』させた連中かぁ~。
しかも、何、タクマの親友の家を占拠してドンチャン騒ぎ。うわ~、極悪非道!
「……グチャグチャにしてやるよ」
俺は『出戻り』をする前のタクマの性格を知らない。
でも、俺が知っているタクマは、喧嘩できないクセに正義感が強いヤツだった。
だからきっと、タクマはその正義感が災いして喧嘩に巻き込まれたのだろう。
そして、抗えないまま無念の死を遂げたのだろう。
きっとそうだ。そうに違いない。
と、俺は自分勝手にストーリーを組み立てて、自分勝手に怒りを燃やす。
だが別にそれでいい。
一度タクマを殺したというだけで、連中は俺の恨みを買っている。
これから訪れる連中の死に、道理も正当性も必要ない。俺に恨まれた以上、死ね。
「じゃ、早速行ってみようか~♪」
ドアに金属符を張りつけて、家と庭とを『異階化』。
そこからインターホン連打連打! ドア、ドンドンガンガン、ドンドンガンガン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ドンドンガンガン! ドンドンガンガン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ドンドンガンガン! ドンドンガンガン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ピンポ~ン! ピンポ~ン!
ドンドンガンガン! ドンドンガンガン!
「ッだ! うるっせぇな!」
ドア越しに、荒っぽい声が聞こえる。
そしてバタバタと大股の足音がしたのち、ドアが無造作に開かれた。
「誰だッ、夜にうるせぇんだよ!」
「や、こんばんは」
姿を見せたガタイのいいニイちゃんに、俺は朗らかに挨拶をする。
「あ、ガキ……?」
「こちら、里内さんのお宅ですね。そしておまえらは『ガンナーヘッズ』ですよね」
「はぁ? だったら何だよ?」
「今日まで強者だったおまえらは、今この瞬間から弱者になったぞ」
「……あぁ?」
理解できていない様子のニイちゃんに、俺は取り出したダガーを振り上げる。
「え、刃物……?」
アホ面見せるニイちゃんの太ももに、ダガーを根元までザックリと突き立てる。
一瞬、ニイちゃんはダガーが刺さった自分の太ももを見下ろし、ポカンとして、
「ぃギッ!」
「おぉ~っと、ここでの悲鳴はご近所迷惑だぜェ!」
俺の頭上に出現したマガツラの腕が、ニイちゃんを家の中へと突き飛ばす。
そして倒れたニイちゃんにそのまま馬乗りになり、両手に新たにダガーを掴む。
「君、名前は?」
「あ、ぁ、お、ぉぉ、はら……」
馬乗りになった俺に怯えたのか、ニイちゃんは素直に自分の名前を吐いた。
「OK、大原。おまえはこれから『大原』という楽器だ! 精々高らかに鳴いて、この家にいる他の連中を呼び寄せてくれやァァァァ! ァァッハハハハハハァッ!」
大原の胸に、両手に掴んだダガーを、突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す、突き刺していく――――ッ!
「ギャバッ、ガァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアァ――――ッ!?」
玄関口に響き渡る、世界に一つだけの楽器『大原』の音色。
ん~、汚ェ。聞くに堪えない音色とはまさにコレ。ドブ川を音にしたかのようだ。
「何だァ、今の悲鳴は!」
「襲撃かよ、どこのモンだ!」
バタバタと大原と似たような足音を立て、二人のチンピラが二階から降りてくる。
片や、スキンヘッドにサングラス。片や、金髪ロン毛に口ピアス。
どっちも、その手に金属バットと木刀を手にしている。おお、武装済みかぁ。
「やぁ」
大原の両胸にダガーを突き立てて、俺は降りてきた二人に挨拶をする。
さて、彼らには息絶えた大原の上に乗ってその血に染まった俺はどう見えるかな。
「……ひっ!」
「な、何だこのガキッ!?」
ああ、そういう反応ね。うん、そっか。
「俺? 俺は強者だよ。こんばんは、クソ弱者風情の『ガンナーヘッズ』の皆さん」
「なっ、てめッ、ナメやがって……!」
俺の挑発に乗って、スキンヘッドの方が金属バットを振り上げようとする。
しかし、直後にガキンッ、と激しい金属音がその場に鳴り響いた。
「……あ?」
間の抜けた声を出し、スキンヘッドが自分のバットを見る。
金属バットは、根元部分からなくなっていた。
そして次に、それを見て硬直するスキンヘッドの、バットを握る手がなくなった。
バツンッ、と音がして、バットの根元部分ごとこそげて消えたのだ。
そこに至り、ようやくスキンヘッドも隣の金髪ロン毛も、硬直から脱する。
「ヒギャアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ――――ッ!?」
「な、な、何だよ、これェェェェェェ~~~~!?」
ンフフ、驚いてる驚いてる。
「ビックリした? ビックリしたよねェ~! それ俺が契約してる魔獣の一つで、次元の狭間に隠れて対象を空間ごと食い散らかす、ハザマダイルっていうんだぜ!」
わかりやすく言えば、一定範囲を防御無視攻撃で消滅させる見えないワニである。
頭もいいから、俺の命令にも素直に従ってくれる可愛いヤツさ!
ハザマアギトの大きなアギトが、スキンヘッドの手首から肘までを喰らう。
断面から血が噴いて、隣の金髪ロン毛をビシャアと赤く汚した。
「うわぁぁぁぁ、あああああああああああああああああああああ!?」
「ヒィ、ヒギィィ、痛ェェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」
恐怖に騒ぎ出す金髪ロン毛と、激痛に泣き叫ぶスキンヘッド。
「うわ、可哀相だなぁ。痛そうだなぁ。でも全部、おまえらが弱いのが悪いんだぜ」
ニコニコ笑いながら、俺はハザマダイルに命令を下す。
それに従って見えないアギトがスキンヘッドをドンドンと喰らっていく。
腕、肩、胸。そして、そこから続いて頭、と。
「あぁ、あぁ、あああ、あああああああああああ――」
ゾリッ、と削れる音がして、スキンヘッドのスキンヘッドがこの世から消えた。
首周りごと頭を失った惨殺死体が、グラリと傾いで隣の金髪ロン毛に寄っかかる。
「あぁ、うあああああああぁぁぁぁぁああああぁぁぁ! ああああぁぁぁぁぁ――」
「喰らえ」
俺が命じ、騒ぐ金髪ロン毛の頭も次の瞬間には不可視のアギトに喰われて消えた。
そして俺は、玄関口に三つの死体を残して、二階へと上がっていく。
やはり、この家の人間は二階に監禁されていた。
散々殴られたらしく、血まみれで、顔もすっかり変形して、縛り上げられている。
家人は三人。父と母と、タクマの友人らしき二十歳程の青年。それと――、
「な、何だこのガキ……ッ!」
玄関に出た大原と同じような反応を示す、四人のチンピラ共。
全員がすでに臨戦態勢で、手にそれぞれ武器を持って、二階の通路に出ている。
俺は偵察用のゴーグルにより、二階全体を見通していた。
「……本当におまえらは」
俺はゴーグルを外してため息をつく。
「おまえらみたいな連中は、自分より弱いモノにしか強く出れないんだなぁ。腕っぷしだけを頼りにしたところで行き着く先なんて決まってるって、そんなこともわからない連中だモンなぁ。まぁ、だから、死ね。惨殺されて死ね。喰われて死ね」
ハザマアギトを、さらに何体も召喚。食い散らかせとだけ命じる。
「ひぃ、ぎゃあ!?」
「な、お、俺の腕、腕がァァァァァァァッ、あぎッ!」
「ギャアアアアアア! た、たす、助け……、あああああああああああああ!」
十重二十重に悲鳴が響く中、俺は二階の奥の部屋へ。
そして、そこに転がっている三人に、まずは治癒魔法で負傷を治してやる。
「あんた、里内芳樹?」
「……ぅ」
青年は小さく呻いたのち、ゆっくりとうなずいた。
「片桐逞から頼まれて、あんたを助けに来た。ここにいる連中はすぐいなくなる」
「た、たくま……ッ」
タクマの名前を聞くと、里内の目に涙が浮かぶ。
「このあと警察が来るかもしれないが、俺のことは黙っておいてくれよ?」
「ぅ、はい、はい……!」
里内が応じるのを見届けて、俺はこの家の人間三人を睡霧の魔法で眠らせた。
そして、気がつけば悲鳴は聞こえなくなっていた。
通路に出ると、そこにかすかに残された『さっきまで人間だった肉片』が幾つか。
ハザマダイルの欠点がこれだな。一口がデカイ分、食い残しが出てしまう。
「やれやれ、殺傷力と速攻能力は満点なんだがな……」
俺はそうボヤいて、ゴウモンバエを召喚する。
全部食い尽くすという点では、やっぱこっちなんだよな~。
「さて……」
ゴウモンバエが死体を食い尽くすのを待って、俺は玄関で金属符を回収する。
それによって『異階化』は解けて、血に汚れた玄関も元に戻る。
さっさと退散しようと外に出て――、うわぁ、そういえば車が残ってやがったー。
これも片付けないとな。
アフターケアまでしっかりやってこそのお仕事ですよ。
ってことで、俺は車二台を巻き込んで、飛翔の魔法で空へと上がる。
ここが人の少ない郊外でよかったぜ。おかげで人に見られずに済むわ~。
そして俺は、遥か遠くの山中でハザマダイルを召喚し、二台の車を喰らわせた。
あばよ『ガンナーヘッズ』。
おまえらの痕跡は、これで何もかもこの世から消え去った。
「ふぅ、弱い者いじめするヤツいじめをしたあとは最高に気持ちがいいぜ~!」
俺は、爽快な気分で宙色市へと戻っていった。
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だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。
『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。
貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。
『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。
『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。
どん底だった主人公が一発逆転する物語です。
※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

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掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
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